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13.匂い

魔法で家に帰るとオルスは卵の様子を見に行った。


「おそらく、あと2日といったところだろう。」


「そっか。それまでに天人族が南に帰ればいいけどね。」


「いざというときは我の部屋に連れてこい。」


「ありがとう、その時はよろしく。それじゃ俺は夕食の準備をするね。」


「ああ。」


俺はずっと準備してきたシュークルートを煮始めた。

明日リアンが帰ってくるため多めに用意している。

今日は白ワインと出すため、干しタラを使ったコロッケも準備する。

あとは野菜のコンフィ、ラペ、マリネの常備菜組だ。




「この酸味は意外とワインと合うな。肉の味も美味だ。」


「今朝買ったソーセージと俺が狩ったボアの肉だよ。」


「セージが狩ったのか、そういえば戦ってるところ見たことないな。」


「魔物が全然いないしね。俺も武器は使えないから魔法主体なんだ。」


「そうか、我とセージは似ているな。」


「そうだね、魔法関連は特に親近感を感じるよ。」


「親愛の情ではないのか?」


「親近感。」


「それは寂しいな。今夜変わるだろうか。」


「明日俺は早起きして魚買いに行くからね、お手柔らかによろしく…。」




食器の片付けをしているとオルスが後ろから抱きついてきた。


「もう日は沈んだからな。いいだろう?」


「俺の言ったことを気にしてくれてたんだね…。」


「夜は灯りをつければいいだけだからな。」


俺は極力見られたくないんだからそれでは意味がない。


「せめて灯りも消してほしい。」


「我は魔法があるから暗くても関係ないが、セージは我の美しい肢体を見たくないのか?」


何だその暗視機能は…。

それって明るい中で俺だけ目隠しされてるのと変わらないじゃないか。


「それならつけてていい…。」


「やはり見たかったのだな。好きに見て触っていいぞ。ほら早くベッドに行くぞ。」


そう言ったオルスに俺は抱えられ部屋に連れてこられた。


「ああ、まだ途中なのに…。」


「セージが朝早いからって言うから前倒しにしているのだ。」


意外と細かいところを気にはしてくれているようだ。


「本当に好きに見て触っていいの?」


「ああ、存分に堪能しろ。」


実はオルスのぴっちりした謎服がずっと気になっていたのだ。

隅々まで見て触らせてもらおう。

体のラインが丸わかりになるほど肌に吸い付いており、硬そうで柔らかい。

触ってみるとひんやりするが温かみも感じる。

タイトに見えてよく伸びる。

アレの状態変化にも適応している。

いわゆるテントを張るというよりはゴムを着けているようにフィットしている。


「はぁっ、セージ…お前そんなっ!」


俺はオルスのそれを服の上から口に咥えた。

パツパツに詰まったそれは俺が舌を動かすたびに口の中で跳ねる。

大きさのせいか、服越しのせいか、自分からしているせいか…全く抵抗感はない。

むしろオルスの反応をもっと見てみたい。

俺は口に咥えたままで足の付け根や胸など両手を使い刺激した。


「くっ…うぐ、くそっ、手慣れすぎだろ!」


だんだんと迫り上がってきている気配を感じた俺は、手は止めず舌の動きを早めながら強く吸い上げた。

すると服をすり抜け、果てた証が俺の口を満たした。

牛の搾乳を口で受けるとこんな感じなんだろうか…。

オルスのミルクは臭さはなく塩気のあるジュレのような味だった。


「セージ…お前とんだ変態だったんだな…まさかいきなり口で抜いただけでなく飲み干すとは……。さっきまで灯りひとつで狼狽えていた男と同一人物とは思えん。」


「身悶えるオルスは可愛かったよ。」


「くそっ俺の前でどうしていいかわからず狼狽える様を見て、我があれこれしてやるつもりだったのに。」


「それじゃ俺は片付けに戻るかな…。」


「…逃さんぞ。」


…俺はそのままオルスに捕まった。

見えない力でベッドに縛り付けられると、さっきまで俺がオルスにしていたことを丸々やり返され泣かされたのだった……。



「お前が我に何をしたのか分かったか。」


「好きに触って堪能しろって言うから…。そもそも、するとされるとでは大違いだ。」


「正直我はセージを侮っていたな。つついたり撫でたりする程度だと思っていたのだ。

…やはりセージは純朴を装った好色家だった。」


「いやいや、俺だってあんなことしたの初めてだし。」


「初めてであんなことできるのは天性の好色家ってことだろう。」


「そんな人を節操なしみたいに…いや完全には否定できないが、特定の相手だけだし…。」


「貶してないぞ。セージは魔族より魔族らしいかもしれない。ツノがないのが不思議でしょうがない。実は魅了の淫魔の血が流れているか?」


「一応純粋な人間だよ。」


…多分。

実は俺に自覚がないだけでオルスと同じ人種なのか?

今度久々に精霊さんに聞いて確かめなければ。




翌朝、俺はリヴィエールの朝市に来ていた。

魚だけでなくエビやイカ、貝類も豊富だった。

サーモンやタイ等癖がなく食べやすい魚は多めに買い捌いてもらった。その他の魚介も手当たり次第に買って収納した。

トロペジェンヌもお土産用にたくさん買った。

俺はその足でマスターの家に移動した。

家の冷蔵庫に勝手にトロペジェンヌや先ほど買った魚のお裾分けを入れた。

振り返るとシーナが立っていた。


「私より冷蔵庫が先とはどういうことだ?」


「実は魚を買ったからお裾分けしようと…。」


「ほう、海に行ったのか?この短時間で。」


「オルスがリヴィエールに連れて行ってくれたんです。」


「そうか、2人ともすごい魔法が使えるんだな。」


「リヴィエール名物の甘味も一緒入れておいたので匂いが移らないうちに早く食べてくださいね。」


「ああ、ありがとう。ところでここに来たのは配達のためだけなのか?」


「もちろんシーナさんに会うためですよ。」


「…そうは見えなかったが。そのまま帰ろうとしてなかったか?」


「そんなことはないですよ。」


俺はシーナを抱きしめるとキスをした。


「ははっ、セージはいつのまにそんなことができるようになったんだ。」


「今ですよ。シーナさんのおかげです。」


「それなら次泊まる時覚悟しておけよ。」


…調子に乗りすぎたか?

無駄に墓穴を掘ったかもしれない。


「今日はそろそろ帰りますよ。またすぐ来ますから。」


「ああ、またな。」


俺はマスターの家を出るといつものバゲット達を買って家に戻った。


「おかえり。市場はどうだった。」


「すごかった。ありとあらゆる魚介が揃ってたからたくさん買ったよ。マスターにも魚を分けてきた。」


「そうか。これでますます食の多様性が増すな。」


「とりあえずサーモンはすぐにでも食べたいから半身を全部マリネにするよ。本当はブイヤベースとかも作りたいけど天人族に魚介を食べてるのがバレると面倒だから匂いがするのはまだ封印だね。」


「そうだな、それは仕方がない。リアンはいいのか?色々話さないといけなくなるだろう。」


「ああ、今日帰ってきたら話すよ、魔法のこと。オルスのことは言ってもいいの?」


「以前セージとのことを伝えに行った時2人にはすでに知られている。」


「そっか、そうだったね。…さて、そろそろ朝食にしよう。バゲットサンドも買ってある。オルスにはベーコンや野菜、卵が入ったサンドだよ。俺はいつものハムだけど。」


「セージは本当にそれが好きだな。」



朝食後、俺は買った魚を並べて仕分けをした。

魔道具の収納は時間が経過するが俺の魔法だと入れた状態のまま維持できるため、生鮮品は魔法で収納している。

ひとまずサーモンの半身を切り分け使いやすい切り身にしていく。

マリネ、タルタル、ムニエル、ポワレにフライやシチュー…サーモンだけでもしばらく生きていけそうだ。

ずっと封印していた醤油や味噌で和食にも手を出すか。

鰹節や昆布が見つからなかったというのもあるが、意外とこっちの世界に染まっていたのかそこまで和食を欲していなかったのだ。

サーモンや鯛はそのまま醤油だけで食べるのもアリだ。

ワサビもないがレフォールという代替品ならある。

マリネ用のサーモンとタイを確保して残りは刺身で食べることにしよう。



しばらくして、昼食の準備を始めると天人族のジルがやってきた。

玄関でオルスがまた相手してくれてるが、今日もなかなかしぶとそうだ。

俺は気にせず準備を続ける。


「セージさん!明日には帰らないといけないんです!少しだけ2人で話せませんか!」


オルスを見るとやれやれといった感じで首を振っていた。

ジルは縋るような目でこちらを見ている。


「少しだけなら…。外でもいいですか?」


部屋で2人きりにはならない方がいい気がする。


「もちろんですよ。」


オルスは部屋に残したまま俺はジルと外に出た。


「…少し歩きますか。」


少し気まずさもあり、俺はとりあえず歩きながら話そうと考えていた。

畑に向かって歩き出すとジルがついてくる気配を感じた。


「…ごめんなさい、セージさん。」


耳元で突然ジルの声がしたと思ったらすぐ視界が真っ暗になった。

何か袋を被せられたような感じだ。


「え!?ジルさん!どういうことですか!!」


俺はそのまま担がれどこかに連れて行かれていた。

まさか誘拐か?


「テレポート」


…。


…帰ろうとしたが魔法が発動しない。


「精霊さん!」


…。


何も聞こえない。

俺が入れられたのはただの袋じゃないのかもしれない。

飛んで移動しているのか浮遊する感覚に酔い、だんだん具合が悪くなってきた。

昼食後だったらきっと今頃は大惨事になっていただろう。



結構な時間が経ち俺はようやく外に出ることができた。

そこは木の上にある小屋のようだった。

俺は立っていられず座り込んでいた。

どこかに連れ去られた恐怖感より解放された安堵感が強かった。


「突然連れ去るような真似をしてしまい申し訳ありません。ですが仕方がなかったのです。」


「…。」


俺は魔法も使えず具合の悪さも治せないためそれどころではない。


「あのままではセージさんと話すことすらままなりませんでしたから。ここは気配遮断の結界が張られています。これは魔封じの魔道具です。」


ジルに触られた足を見るといつの間にか足枷が嵌められていた。

足枷は小屋の真ん中の木に繋がっている。

つまり俺はここから逃げられず、誰も助けも来ないということか。


「…なんでこんなことを。」


「一目惚れなんです。」


「…え?」


「最初は既に相手がいようが何番目でもいいと思っていたのですが…邪魔ばかりするので排除することにしました。」


「…。」


せめて回復だけでもさせてほしかったが、話すことすら辛くなってきた。


「安心してください、私が面倒見ますから。」


…俺の意思は関係ないのか。

リアンも帰ってくるし、卵ももうすぐ孵化するっていうのに…。

いっそのこと気を失ってしまいたい。


「…。」


俺はそのまま床に横になった。


「セージさん?どうしたんですか!?」


「…。」


「セージさん!セージさん!」


ジルは俺を揺さぶってくる。

…助けてくれなくていいからせめて放っておいてほしい。


「…移動で酔って具合が悪い…。」


「なんてことでしょう!薬を探してきます!」


そう言うとジルは外に飛んで行った。

しばらく俺は横になったまま呼吸を整えていると、だんだん落ち着いてきて気付くとそのまま眠っていた。




「…!…セージ!おい!」


誰かに揺さぶられて目が覚めると目の前にオルスがいた。


「オルス!?どうしてここに…。ジルは?」


「あいつはいないようだ。セージの気配が急に無くなって探したんだ。」


「ここは気配遮断の結界の中だって言ってたけどどうやって見つけたの?」


「セージが俺のを飲んだだろう?気配は感じなかったが俺の匂いを辿って来たんだ。…そんなことより早くここを出よう。」


「ああ。この足枷外せる?」


「今ここでは難しそうだ。ひとまず鎖が繋がっている木ごと破壊しよう。」


オルスは柱の木に手をかざすと小屋の半分が吹き飛んだ。

足枷は付いたままだがこれで動けるようになった。


「家に戻ってもあいつがすぐにくるだろう。一旦我の部屋に向かうぞ。そこで足枷を外そう。」


「わかった。」



オルスは俺を抱えるとすぐに小屋を離れた。

…同じ移動でもオルスの腕の中だと安心する。


「…助けに来てくれてありがとう。」


「非は我にある。わずかな時間でも2人きりにすべきではなかった。」


「いや、俺も油断してた。噂に聞くような天人族には見えなかったから…。」


「…ああ、そうだな。あれが戦略なのかはわからないが、出し抜かれてしまったのは事実だ。」



それからしばらくするとオルスの部屋に着き、大きなペンチを使い足枷を壊した。


「本来この魔道具は罪人を収監する際に使うものなのだ。魔法が一切効かないため物理的に破壊するしかないのだ。」


「そうなんだ…。リアンももう帰って来てるよね?心配してるかもしれないな。」


「書き置きはしておいたが…。戻ってみるか?今ならセージは何かあってもここに来れるだろう。」


「そうだね。卵の様子も気になるし一緒に戻ろう。」


「テレポート」


自室に戻ると卵はまだなんの変化も無さそうだった。

1階に行くとリアンはまだ帰って来ていなかった。


「我はここに残ろう。セージは卵を持って我の部屋にいろ。リアンが帰ってきたら状況を伝えてからそちらに向かう。」


「…わかった。ありがとう。部屋を使わせてもらうね。」


「気にするな。早く行け。」


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