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魔将誕生

心象結界。


 紫色の雷雲が空を覆っている。


 魔猴、水蜥蜴、牛頭の三柱は今日も地面に正座していた。


 もはや地獄にも慣れていた。


 慣れたくはなかったが。


 ラックは玉座に腰掛けている。


 腕を組みながら三柱を見下ろした。


「第三段階を始めて何年経った?」


 魔猴が答える。


「三千七百二十六年です。」


 水蜥蜴が続く。


「国家運営演習は四万八千三百十二回目です。」


 牛頭も答えた。


「胃が痛くなってから三千年です。」


 ラックは頷いた。


「よし。」


 三柱は震えた。


 ラックが「よし」と言う時は大体ロクなことがない。


「卒業試験だ。」


 三柱は目を見開いた。


「卒業!?」


「終わるんですか!?」


「週休二日制が来る!?」


 ラックは首を横に振った。


「来ない。」


 牛頭は泣いた。



 世界が変わった。


 今度は巨大な大陸。


 東西南北に四つの国家。


 中央には大帝国。


 総人口一億。


 軍勢二千万。


 複数種族。


 複数宗教。


 複数言語。


 三柱は顔面蒼白になった。


「無理です。」


「絶対無理です。」


「前の方が簡単でした。」


 ラックは笑顔だった。


「安心しろ。」


 三柱は少し安心した。


「お前ら三人でやる。」


 三柱は絶望した。



 こうして最後の試験が始まった。


 魔猴は軍務担当。


 水蜥蜴は内政担当。


 牛頭は外交担当。


「なんで俺が外交!?」


「一番人当たり良さそうだから。」


「そんな理由!?」


 ラックは真顔だった。


「重要だぞ。」


「外交は相手に好かれなきゃ始まらん。」


 牛頭は少し嬉しかった。


「(地元では愛されキャラで通ってたんだよなぁ。)」



 最初の百年。


 帝国は崩壊した。


 内乱。


 反乱。


 飢饉。


 戦争。


 全部起きた。


 ラックは言った。


「やり直し。」


 三柱は叫んだ。


「またですか!?」



 二回目。


 三回目。


 十回目。


 百回目。


 千回目。


 何度も失敗した。


 しかし今までと違った。


 三柱は学んでいた。


 何千年もの経験。


 何万回もの敗北。


 それらが蓄積されていた。



 一万回目の挑戦。


 魔猴は敵国を武力だけで制圧しなかった。


 敵将を説得した。


 水蜥蜴は税率を調整した。


 反乱が減った。


 牛頭は各国との同盟締結に成功した。


 しかもモテた。


「やった!」


 牛頭は泣いた。


「ついにモテた!」


 しかし。


 ラックは言った。


「浮かれるな。」


 牛頭は真顔になった。



 さらに数千回。


 さらに数万回。


 やがて。


 世界は安定した。


 百年。


 二百年。


 三百年。


 国家は繁栄した。


 民は幸福だった。


 反乱は起きない。


 戦争も起きない。


 外交も安定。


 経済も安定。


 全てが理想的だった。


 三柱は玉座の前に跪いた。


「終わりました。」


「やれることは全部やりました。」


「もう頭が働きません。」


 ラックは立ち上がった。


 ゆっくりと三柱の前へ歩く。


 そして。


 それぞれの頭に手を置いた。


「合格だ。」


 その瞬間。


 天地が震えた。


 紫色の雷が世界を埋め尽くす。


 膨大な魔力が三柱へ流れ込んだ。


 魔猴の身体が巨大化する。


 筋肉が膨れ上がる。


 瞳に王者の威厳が宿る。


 【魔猴将軍ガルザ】


 水蜥蜴の肉体は蒼い光に包まれた。


 巨大な水竜へと進化する。


 【水竜将軍フォリエラ】


 牛頭の身体は黄金の光を放った。


 巨体はさらに大きくなる。


 圧倒的な怪力と覇気。


 【牛魔将軍ゴルド】


 三柱は別格の存在へ進化した。



 三柱は涙を流した。


「ありがとうございます。」


「ここまで育てて頂き。」


「本当に。」


 ラックは少し照れ臭そうに頭を掻いた。


「別に。」


「お前らが頑張っただけだ。フン。」


 三柱は首を横に振った。


 違う。


 自分たちは知っている。


 何万年。


 何十万年。


 見捨てずに導いた者が誰なのか。


 紫帝ラック。


 その背中を。


 三柱は深く頭を下げた。


「我ら三柱。」


「今後いかなる時も。」


「紫帝陛下の覇道に従います。」


 ラックは満足そうに笑った。


「よし。って、人間界の将軍様になるおまえらの外見が


人外すぎるじゃん。


外見だけでも人化してくれ。できるよな。」


三柱は自分が強そうな容姿で自分の強さを


実感してしばらくは味わいたかった。


しかし、陛下の命令は絶対。


三柱は試行錯誤して人化をした。


ガルザは健康的な美女に。


フォリエラは知的な美少女に。


ゴルドは普通のおっさんに。


 ラックは不敵に笑う。


「じゃあ次は実戦だ。」


 三柱は固まった。


「……え?」


「実戦?」


「まさか今まで全部前座?」


 ラックは頷いた。


「当たり前だろ。」


 三柱は天を仰いだ。


 心象結界の空に。


 三柱の悲鳴が響き渡った。

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