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48 第4章:候補3・トレーナー陸斗の社会的抹殺(SNS拡散)

第3節:大手動画配信サイト/SNSでの拡散


港区の高級タワーマンション、その最上階ペントハウスのリビングルーム。

壁際に設置されたペットカメラのレンズが突如として血のような「赤い光」を点滅させ、パーソナルトレーナー・陸斗が妻・愛華の髪を掴み、暴力を振るいながら隠し金を要求して脅迫しているその醜態のすべてが、インターネットのオープンな配信プラットフォームへとライブ中継され始めた瞬間――


そのデジタルな「毒の波」は、静かな夜のネットの海を瞬く間に駆け抜け、日本中の数百万人のデバイスへと爆発的な勢いで拡散していった。


最初にその異変に気づいたのは、夜遅くまでスマートフォンを眺めていた「夜型のネットウォッチャー」や、インフルエンサーの監視アカウントたちだった。

ある大手暴露系のアカウントが、自動巡回システムによって引っかかった「港区タワマン・リアルタイム生配信」のリンクを偶然クリックしたこと。それが、すべての歯車を音速で回転させる発火点となった。


――「おい、待て……これ、ガチの生配信じゃねえか……!」

――「え、待って、これって数日前に大炎上したIT企業の不祥事タワマンじゃん!? なんで今度はトレーナーが女殴ってんの!?」


数秒前まで静かだったチャット欄やコメントフィードが、一瞬にして数千、数万という桁違いのユーザーの流入によって爆発的な流速を見せた。

「視聴者数:12万人……30万人……50万人……!」

AI音声合成のカウントアップが追いつかないほどのスピードで、アクセス数がうなぎの上に跳ね上がっていく。


そして、その映像と音声のデータは、現代のインターネット社会において最も強力で残酷な増幅装置である「動画配信」と「SNS」のアルゴリズムに捕捉された。


SNSのトレンドワードの上位には、わずか数分のうちに日本全国を巻き込む勢いで生々しいハッシュタグが次々とランクインしていった。


タワマン修羅場生配信

悪質パーソナルトレーナー陸斗

妻への暴力と脅迫

令和のリアル人狼ゲーム


SNSのタイムライン上には、ペットカメラのライブ映像から切り抜かれた高画質なスクリーンショットや、陸斗が「隠し財産を出せ」「その綺麗な顔をグチャグチャにしてやる」と叫んでいる決定的瞬間の動画クリップが、数万件単位のリポストと引用で瞬く間に拡散されていく。

動画の中で陸斗が放つ暴言の数々は、そのままリアルタイムの文字起こしとなって、全国のユーザーの画面へと容赦なく流し込まれ続けた。


――「顧客に対して暴力を振るい、金銭を要求して脅迫するパーソナルトレーナーとか、人間のクズすぎて草も生えない」

――「この男、有名ジムのインストラクターの陸斗じゃねえか!? 即座に特定班仕事早すぎワロタwww」

――「弁護士が逮捕されて、IT役員が失踪して、今度はトレーナーが生配信でDV暴露って……このタワマン、地獄のテーマパークかよ」


大手動画配信サイトのショート動画アルゴリズムは、この「人間のドロドロとした狂気と暴力がリアルタイムで晒される修羅場」という最高にして最悪のコンテンツを逃さず、何百万もの人々のレコメンドフィードの最上段へと強制的に表示させた。

画面をスクロールするたびに、陸斗の歪んだ顔と、怯える愛華の泣き叫ぶ声が日本中のスマホの画面から大音量で再生される。


「あ……あぁ……っ……! なんだこれ……! なんで……!」


リビングの中央で、自分の名前や顔写真、そして勤務先のジムのロゴマークが、拡散されたSNSの画面上で次々と晒され、数万人のユーザーから一斉に「特定」され叩かれている現実を目の当たりにした陸斗は、その場に文字通り膝から崩れ落ちた。


彼のスマートフォンもまた、もはや鳴り止むことのない通知の嵐によって激しい振動を続け、画面は殺害予告や誹謗中傷、そして勤務先ジムの経営者からの「即時解雇および損害賠償請求」を告げるメッセージで埋め尽くされていた。


「嘘だろ……俺の人生は……こんなところで……終わるはずじゃ……!」


陸斗は頭を抱え、床のカーペットに額を擦り付けるようにしてうめき声を上げた。

彼がこれまで誇りにしてきた鍛え上げられた若い肉体も、甘いマスクも、客を言いくるめて金を巻き上げる狡猾さも、現代のSNSが持つ圧倒的な拡散力と大衆の悪意の前にあっては、ただの「燃え盛る薪」にすぎなかった。


ソファの端で、血を流しながらその光景を見上げていた妻・愛華は、もはや恐怖すら超えた虚無のなかで、震える唇をかみしめることしかできなかった。彼女のプライドも、秘密も、計画も、すべてはこのデジタルな大公開処刑のなかに飲み込まれ、灰と化していた。


――そして、そのすべての阿鼻叫喚の地獄絵図を、ベビーベッドの特等席から冷徹なまでの冷静さで見下ろしていた俺(佐藤一真)は、小さな赤ん坊の胸の内で、静かに、そして圧倒的な勝利の笑みを浮かべていた。


(……見事だ。陸斗。お前が愛華に対して振るったその暴力の代償は、数百万人のネットユーザーの目に焼き付けられ、お前の社会的生命を永遠に根絶やしにした)


弁護士の神条が法的偽造で逮捕され、上司の陣内が横領と社内チャットの誤爆で失踪し、そしてトレーナーの陸斗がSNSのライブ配信で社会的抹殺を遂げた。

前世の俺を食い物にし、死後もその遺産と妻を貪ろうとした三人のハイエナたちは、全員が生きたまま地獄の底へと突き落とされたのだ。


泥沼の人狼ゲームの終幕は、もはや誰にも止めることができない――。


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