第5話 神殿の「番判定の儀」
第5話 神殿の「番判定の儀」
王立孤児院の支援市から四日後、ローデンベルク伯爵家へ王宮の使者がやって来た。朝食の最中だったため、食堂の卓には半分に切った茹で卵、焼いた腸詰め肉、林檎のジャムを塗った黒パンが並んでいる。エレナの父は寝間着の上へ慌てて上着を羽織り、首元の釦を一つ掛け違えたまま使者を迎えた。母は夫の釦に気づいたものの、国王の紋章が押された書状を前にして口を挟むことができず、銀のナイフを握ったまま椅子から立ち上がった。
「国王陛下のご命令により、リュカ・ヴァルフェン殿、ミレイユ・ラングレー嬢、ならびにエレナ・ローデンベルク嬢は、明後日の正午、大神殿へ出頭すること。最高司祭立ち会いのもと、正式な番判定の儀を執り行う」
使者が書状を読み上げると、食堂の置時計が一度だけ大きく鳴った。台所から顔をのぞかせていた料理人は、驚いて持っていた牛乳瓶を傾け、床へ白い筋をこぼした。侍女のクララが雑巾を取りに走り、廊下で飼い猫を踏みそうになって声を上げる。いつもなら家族三人で静かに食べる朝だったが、この日ばかりは、誰も茹で卵の黄身が固すぎることを話題にしなかった。
「エレナは、何をさせられるのでしょうか」
父が尋ねると、使者は、エレナは当事者ではなく証人として召喚されていると答えた。ただし、最高司祭が必要と判断した場合は、彼女も神具へ触れることになる。判定には国王の名代、高位貴族、騎士団幹部、両家の当主が立ち会い、結果は王国の公的記録へ残されるという。これ以上、番をめぐる噂によって貴族社会が混乱することを、国王が許さなかったのである。
「承知いたしました。娘とともに、必ず参ります」
父は返事をしたが、書状を受け取る手には力が入り、厚い紙の端がわずかに曲がった。エレナは使者へ礼を述べ、椅子へ戻った。黒パンへ塗った林檎のジャムは端から皿へ垂れ、袖口へ赤い染みをつけている。母が濡らした布を差し出すまで、エレナはそれに気づかなかった。
「地味な服で参りましょう。証人が花嫁のような装いをしては、余計なことを言われますもの」
母は食事を終えると、エレナの衣装を選ぶため、二階の衣装部屋へ向かった。部屋には樟脳と乾燥させたラベンダーの匂いが満ち、古いドレスを包む布が棚から少しはみ出している。冬物の外套を出した際に積み直すつもりだったが、忙しさに追われ、三週間もそのままになっていた。母は濃い青色のドレスを取り出し、襟元の刺繍がほつれていないか窓辺で確かめた。
「これは、去年の収穫祭で着たものですね」
エレナはドレスの裾を広げ、右側に小さな染みを見つけた。祭りで子供に葡萄の果汁をかけられ、侍女が何度洗っても完全には落ちなかった跡である。母は新しいドレスを仕立てる時間もないと眉を寄せたが、エレナはそのままでよいと答えた。自分が主役として神殿へ行くわけではなく、リュカの身体を蝕んできた偽りを終わらせるために行くのだと考えていた。
「お母様、神具が私を番ではないと示したら、皆はどうするでしょう」
エレナが尋ねると、母はドレスを畳む手を止めた。神具の結果が何であっても家へ連れて帰り、温かいスープを食べさせると答える。父は判定の翌日も帳簿へ犬の絵を描き、クララは相変わらず洗濯物を一枚なくし、料理人は固すぎる茹で卵を作るだろうという。エレナは衣装部屋の扉から食堂のほうを見て、今朝なくなった片方の靴下をクララが廊下で捜していたことを思い出した。
「番であることが、エレナの全部ではないのよ。それだけは忘れないでちょうだい」
母は濃い青色のドレスを布で包み、娘の腕へ渡した。エレナはその重さを確かめながら頷いた。金色の共鳴が起きた瞬間から、リュカのそばにいたいという気持ちは強くなっている。それでも神具の答えだけを頼りに彼の隣へ立つのではなく、自分の言葉で彼を選びたいと思った。
同じ朝、ヴァルフェン侯爵邸にも王命が届いていた。リュカは執務室で包帯を交換しており、白いシャツの左袖だけを脱いだ姿で使者を迎えることになった。卓上には食べかけのチーズ入りオムレツと、冷めた薬草茶が置かれている。老執事のベルトランは、王宮の使者に片袖の主人を見られたことが気に入らず、使者が帰ったあとも「せめて上着を肩へ掛ける時間くらい待てないものですか」と文句を言い続けた。
「国王陛下の使者へ、廊下で待てとは言えないだろう」
「言い方というものがございます。わたくしなら、陛下ご本人でも三分はお待たせします」
ベルトランは包帯の端をきっちり留め、汚れた布を籠へ入れた。リュカが本当に三分待たせるつもりかと尋ねると、老執事は陛下が相手なら二分にすると言い直した。部屋の隅で報告書を読んでいたアルフレッドは、笑いをこらえるように一度咳払いする。窓の外では訓練中の騎士が号令を間違え、全員が右を向く中で一人だけ左を向いていた。
「番判定の儀には、ミレイユ嬢も応じるでしょうか」
アルフレッドは王命の写しを机へ置き、リュカの顔を見た。拒否すれば自らの主張に疑いがあると認めることになるため、彼女は必ず来るだろう。しかし、月惑いの香油が神殿の浄化魔術で消されることを、ミレイユ本人が知っているかどうかは分からなかった。押収した帳簿には、香油の効能や使用上の注意までは記録されていなかった。
「香油の購入に関わった侍女は、昨夜ラングレー侯爵邸から姿を消しました。家族の住む村にも戻っていません」
アルフレッドが告げると、リュカはオムレツを切っていたフォークを止めた。侍女が自分から逃げたのか、逃がされたのか、それとも口を封じられたのかは分からない。騎士団は王都の門と街道を捜索しているが、まだ手がかりはなかった。リュカは神殿の警備を増やし、エレナの家にも護衛を置くよう命じた。
「エレナ様には、護衛をつけることをお伝えになりましたか」
「これから手紙を書く」
「また、ご自分だけで決めるおつもりですか」
アルフレッドの指摘に、リュカはペンを取ろうとした手を止めた。エレナを守るためとはいえ、本人へ説明せず護衛を送り込めば、先日の反省が何も生かされていない。リュカは新しい便箋を広げ、命令としてではなく、事情を説明したうえで護衛を受け入れてほしいと書き始めた。途中で同じ単語を二度書き、紙を丸めてやり直したため、机の横には三つの紙玉が転がった。
「隊長、恋文ではなく警備の相談ですよね」
アルフレッドが尋ねると、リュカは返事をせず、四枚目の便箋へペンを走らせた。傷のせいで左腕を机へ置けず、文字はいつもより右へ傾いている。ベルトランは拾った紙玉を開こうとしてリュカに止められ、不満そうに暖炉へ投げ入れた。焦げた紙から一瞬だけインクの臭いが立ち上り、冷めた薬草茶の苦い香りと混ざった。
その頃、ラングレー侯爵邸では、ミレイユが自室の鏡の前に立っていた。寝台には純白のドレスが広げられ、侍女三人が真珠と水晶を一粒ずつ縫いつけている。胸元には銀狼の刺繍が大きく施され、長い裾は花嫁衣装のように床へ流れていた。仕立屋は神殿の儀式へ着るには華美すぎると何度も伝えたが、ミレイユは飾りを減らすことを許さなかった。
「ベールも必要だわ。儀式が終われば、そのまま婚約の祝福を受けることになるでしょう?」
ミレイユは鏡の中の自分へ微笑み、髪に合わせる真珠の冠を選んだ。父であるラングレー侯爵は部屋の入口に立ち、花嫁のような装いは控えるべきだと低い声で告げる。支援市での騒ぎ以来、侯爵家へ向けられる視線は厳しくなり、取引を見合わせる商人も現れていた。だがミレイユは、儀式で自分が番だと証明されれば、すべての者が謝罪に来ると信じていた。
「お父様まで、わたくしを疑っていらっしゃるの?」
「そうではない。だが、もし神具が望まぬ結果を示した場合は、騒ぎを起こさず受け入れろ」
「望まぬ結果などありませんわ。間違っているのは、リュカ様を惑わせたエレナのほうですもの」
ミレイユは真珠の冠を卓へ置き、鏡台の引き出しを開けた。中には化粧瓶、櫛、使いかけの口紅、乾燥して茶色くなった菓子が雑然と押し込まれている。以前なら侍女が毎朝整えていたが、彼女たちは近頃、必要以上に主人の持ち物へ触れようとしなかった。奥に隠していた小さな青い瓶を確かめると、ミレイユは誰にも見られないよう引き出しを閉めた。
「神殿では香油の使用を禁じられると聞いている。余計なものは身につけるな」
侯爵が告げると、ミレイユは薔薇水しか使っていないと答えた。嘘をついた声には何の揺らぎもなく、父の目をまっすぐ見返している。侯爵は娘の鏡台へ視線を向けたものの、引き出しを確かめることはしなかった。これまで何度も、家の体面を守るために娘の言葉を信じたふりをしてきたからである。
判定の儀の当日、王都は朝から低い雲に覆われていた。石畳には夜の雨が残り、馬車の車輪が通るたびに泥水が建物の壁へ跳ねる。大神殿へ続く通りには見物人が集まり、露店では温かい栗のスープや焼いた林檎が売られていた。神聖な儀式の日にも商人たちは商売を忘れず、誰が本物の番かを賭ける者までいたため、神殿の衛兵が何度も解散させていた。
ローデンベルク家の馬車の中で、エレナは濃い青色のドレスの裾を膝へ整えていた。母は襟元の小さな銀の留め具を直し、父は窓の外を見ながら右の手袋を左手にはめようとしている。エレナが指摘すると、父は何でもない顔で手袋を交換した。車内には母が持たせた薄荷飴の匂いと、雨に濡れた外套の湿った臭いがこもっていた。
「朝食を、もう少し食べてくればよかったですね」
エレナが言うと、母はすぐに布包みを開いた。中には小さなチーズパンが三つと、砂糖をまぶした干し林檎が入っている。父は自分はいらないと言ったが、母から半分に割ったパンを渡されると黙って食べ始めた。エレナも一口かじったものの、口の中が乾き、いつも好きなはずのチーズの味がほとんど分からなかった。
「神具の答えが何であっても、帰りに栗のスープを買いましょう。あの露店は、刻んだ燻製肉を入れてくれるそうですよ」
父の言葉に、エレナは頷いた。儀式の先にも昼食や夕食があり、濡れた外套を干し、明日の服を選ぶ時間が来る。そう考えると、胸の内側で速く打っていた鼓動が少しだけ落ち着いた。馬車が大神殿の前へ着くと、扉の外にはアルフレッドが待っていた。
「お迎えに参りました。リュカ様は、先に控えの間へ入っておられます」
アルフレッドは黒い騎士団の礼装を着て、肩には銀色の飾り紐を掛けていた。いつも乱れのない彼の髪には、雨粒が一つだけ残っている。エレナが挨拶すると、彼は小声で、リュカが朝から何度も入口を見ていると教えた。本人へ話したことは秘密にしてほしいと言い添えたが、神殿の扉をくぐる前にリュカと目が合い、すぐに見抜かれてしまった。
「無事に来られたのだな」
リュカは銀狼の紋章が入った濃紺の礼装をまとい、左腕には目立たないよう黒い布を吊っていた。エレナへ歩み寄ったものの、人々の前で勝手に触れないよう半歩手前で止まる。彼女が頷くと、彼はようやく肩の力を抜いた。二人の間に淡い金色の魔力が揺れ、近くにいた獣人の司祭が気づいたように目を細めた。
「護衛を受け入れてくれて、ありがとう。窮屈ではなかったか」
「父が朝、寝間着のまま廊下へ出るところまで見張られていました」
エレナが答えると、父は咳払いをし、護衛の配置が少し細かすぎたと付け加えた。リュカはアルフレッドへ顔を向けたが、彼は安全のために必要な措置だったと真顔で答える。エレナの母は口元を押さえ、リュカも一瞬だけ笑った。大神殿の冷たい空気の中で、その短い会話が四人の身体から余分な力を抜いた。
やがて神殿前に、白塗りの豪華な馬車が到着した。扉が開き、純白のドレスをまとったミレイユが父の手を借りて降りてくる。長い裾には真珠と水晶が縫いつけられ、胸元の銀狼は遠くからでも分かるほど大きかった。髪には真珠の冠を載せ、薄いベールまで背中へ流している。
「まあ、皆様、お待たせしてしまいましたか?」
ミレイユは参列者たちへ微笑み、祝福を受ける花嫁のように一人ずつ挨拶した。高位貴族の中には顔をしかめる者もいたが、彼女は気づかず、儀式のあとで開く祝宴について話し始める。ラングレー侯爵は娘の後ろで口を固く結び、誰とも目を合わせなかった。ミレイユの肌からは薔薇水の匂いがしたが、エレナの鼻には、その奥から百合と焦げた薬草の臭気が微かに感じられた。
「リュカ様、そのお衣装、とてもお似合いですわ。わたくしたち、今日のために誂えたように見えませんこと?」
ミレイユはリュカへ近づこうとしたが、衛兵が二人の間へ杖を出して止めた。儀式が終わるまで当事者同士の接触は禁止されていると告げられ、彼女は不満そうに眉を寄せる。それでも周囲の視線を意識し、すぐに優雅な笑みへ戻った。エレナを見つけると、濃い青色のドレスを上から下まで眺め、わずかに鼻を鳴らした。
「証人らしい控えめなお姿で安心しましたわ。まさか、ご自分も判定を受けるつもりではありませんでしょうね」
「最高司祭様のご判断に従います。今日は、リュカ様の体調を損なってきた原因が明らかになることを願っております」
エレナが答えると、ミレイユの笑みが一瞬だけ止まった。しかし、すぐにリュカの不調はエレナの魔術が原因だと周囲へ聞こえる声で言い返す。リュカは反論しようとしたが、神殿の鐘が正午を告げ、重い扉が内側から開かれた。白い法衣を着た司祭たちが二列に並び、参列者を大聖堂へ案内した。
大聖堂の床には青と白の石で円形の紋様が描かれ、中央の祭壇には透明な水晶球が置かれていた。天井近くの窓から入る光が水晶へ差し込み、内部には細かな銀色の粒が舞っている。壁際の香炉では浄化草が焚かれ、乾いた松と薄荷を混ぜたような香りが漂っていた。参列者たちは家格に従って席へ案内され、椅子を引く音と衣擦れが広い堂内へ響いた。
エレナは両親の後ろに座り、膝の上で手袋の指を一本ずつ整えた。目の前には国王の名代を務める王弟、ヴァルフェン侯爵夫妻、ラングレー侯爵、騎士団長らが並んでいる。リュカとミレイユは祭壇の左右に立たされ、互いに触れられない距離を保っていた。ミレイユは純白の裾を何度も広げ、真珠が最も美しく見える位置を確かめている。
「儀式が終わりましたら、祝福の鐘を鳴らしていただけるのでしょうか」
ミレイユが近くの司祭へ尋ねると、若い司祭は困った顔で最高司祭のほうを見た。まだ結果も出ていないため、祝福の予定はないと答える。ミレイユは、結果は最初から決まっているのだから準備しておくべきだと言い、白い手袋の皺を伸ばした。その声を聞いた参列者たちは、小さく眉を動かしたものの、誰も口を挟まなかった。
やがて祭壇の奥から、最高司祭オルランドが姿を現した。八十歳を超える獅子獣人で、白くなった鬣を背中まで伸ばし、金の縁取りがある簡素な法衣をまとっている。杖をつく歩みは遅かったが、壇上へ立つと、大聖堂の隅まで届く声で全員に着席を命じた。司祭たちが扉を閉じると、外の見物人の声は聞こえなくなり、香炉で草がはぜる音だけが残った。
「本日行う番判定の儀について、初めに確認しておくべきことがある」
最高司祭は水晶球へ手を置き、リュカ、ミレイユ、エレナを順番に見た。番は獣人の魂が持つ性質の一つにすぎず、身分でも褒美でも、他者を所有する権利でもないと説明する。神具が共鳴を示しても、どちらかが望まなければ婚姻は成立しない。反対に番ではない二人でも、互いの意思によって夫婦になることができる。
「神具が示すのは魂の共鳴のみ。誰を愛し、誰と生きるかを決めるのは、神でも運命でもなく、本人たちです」
その言葉を聞いたリュカは、迷うことなく参列席のエレナへ顔を向けた。彼の銀灰色の瞳と目が合い、エレナは胸元へ手を添えて小さく頷く。まだ正式な判定は始まっていないが、リュカがどのような結果でも自分の意思を変えないことが、その視線から伝わってきた。エレナも神具に選ばれることではなく、彼へ自分の答えを伝えるためにここへ来たのだと思い直した。
「もちろん存じておりますわ。でも、わたくしたちは運命の番ですもの。リュカ様が一時的に惑わされていても、神具が正しい心へ戻してくださいます」
ミレイユは最高司祭の説明を聞き終える前から、花嫁のような笑みを浮かべていた。本人の意思が最も大切だという言葉を、自分が選ばれるという意味に置き換えている。最高司祭はしばらく彼女を見つめたあと、これ以上同じ説明を繰り返さなかった。杖の先で床を一度打ち、浄化の儀を始めるよう司祭たちへ命じた。
四人の司祭が香炉を持ち、ミレイユとリュカの周囲を歩いた。白い煙が純白のドレスを包み、薔薇水の香りを消していく。エレナの鼻には、百合と焦げた薬草の臭気が先ほどよりはっきり届いた。ミレイユも異変に気づいたらしく、胸元を押さえ、何度も自分の手首へ鼻を近づけた。
「お待ちください。少し気分が優れませんの。香を弱くしていただけないかしら」
ミレイユが訴えても、最高司祭は浄化を止めなかった。神具へ触れる者は、魔導薬、護符、香油、そのほか魔力へ作用するものをすべて取り除かなければならない。司祭の一人がミレイユの手袋へ浄化水を振りかけると、白い布の表面に青黒い染みが浮かび上がった。参列者の間から低いどよめきが起こり、アルフレッドは証拠を確認するように目を細めた。
「では、判定を始める。最初に、ミレイユ・ラングレー。祭壇へ進み、右手を神具へ置きなさい」
最高司祭の声が大聖堂へ響いた。ミレイユは青黒く染まった手袋を見つめ、すぐには動かなかった。やがて参列者の視線に気づくと、手袋を乱暴に外して侍女へ投げ、純白の裾を持ち上げて祭壇へ向かった。リュカは反対側に立ったまま彼女へ手を差し出さず、エレナだけを一度見てから、水晶球へ視線を戻した。




