第7話 桃花ちゃんと仲良くなったよ!
廊下の向こうに、見覚えのある金色の髪が見えた。
やわらかく揺れるウェーブ。
光に透けるような淡い色合いは、遠くからでも目立つ。
少しだけ近寄りがたい雰囲気の女の子。
姿勢もまっすぐで、どこか上品。
「桃花ちゃーーん!!」
思わず声が出た。
ぴくり、と肩が跳ねる。
「ひゃ!?え、何?」
振り向いた桃花は、少しだけ驚いた顔をしていた。
整った顔立ちに、少しだけ警戒したような表情。
でも目元は、どこかやさしい。
「あっ、えっと」
「えへへ、お話ししたくて声かけちゃった!」
小春はにこにこと笑う。
「あっ、ごめんね、いきなり。」
「桃花ちゃんさえよければ、仲良くなりたいなーって思って。えへへ」
「……っ」
桃花の頬が、ほんのり赤くなる。
視線が少し泳ぐ。
「う、うん。わ、私も」
小さな声。
でも、はっきり聞こえた。
「ほんとー!?嬉しいなー!!」
ぱっと表情が明るくなる。
「あっ!気軽に呼んで呼んで!!」
「じゃ、じゃあ、こ、小春ちゃん」
「ひゃー!!嬉しい!うんうん!!」
嬉しそうに何度も頷く。
その反応が少し面白かったのか、
桃花が、くすっと小さく笑った。
「ふっ、お日様みたい」
「んー?桃花ちゃんはお花さんだねー」
「え?そ、それってどういう意味?」
「可愛い!!」
「なっ!」
桃花の顔が一気に赤くなる。
白い肌がほんのり色づく。
「べ、別に!!嬉しくないから!!」
「え!?ご、ごめんね!!綺麗の方が嬉しかったかなー?」
「え?あ、ち、違くて。その、あの」
言葉がまとまらない。
視線が忙しく揺れる。
「ごめんね。私、グイグイ行き過ぎだよね」
少しだけしゅんとする。
「そ、そんなことない!!」
思わず声が強くなる。
小春がぱっと顔を上げた。
「!!」
「う、嬉しいから。その、あ、」
言葉が続かない。
でも、ちゃんと伝えようとしているのが分かった。
その時。
「こはたーん!!おっはー」
聞き慣れた声が割り込んできた。
「ひーくん!おはよう!!」
桃花の表情が一瞬固まる。
「うぅ」
陽向が軽い足取りで近づいてくる。
明るい茶色の髪が揺れて、人懐っこい笑顔がいつも通り眩しい。
「おやー?誰かと思えばももちーじゃん!」
「は?何その呼び方!?」
「白石桃花だろ?ももちーじゃん?」
「い、意味わかんないんだけど!気安く呼ばないで!!」
「ももちー可愛い!」
「むー。私もセンスがあればあだ名つけれるのにー」
「俺はひーくん気に入ってるぜ?」
「ほんと!?嬉しい!!ひーくん大好き!!」
「お、おう!」
「ふ、2人はずいぶんと仲良しよね」
桃花が少しだけ視線を逸らす。
でも、完全には離れない。
「え?桃花ちゃんとも仲良しだよー!!」
「そ、その。う、嬉しくないから!!」
「うぐっ!?」
「こはたん、照れ隠しだって!!」
「平気平気ー!!」
「そ、そうなの?ほんと??嫌ってない??」
「違うよなー?」
桃花がちらりと小春を見る。
少し迷ってから、
こくり、と小さく頷いた。
「よかったーー!!嫌われたらどうしようかと!!」
「いや、こはたん嫌われる要素ないからまじで」
「うん」
桃花も小さく頷く。
ほんの少しだけ、表情が柔らいだ。
「2人とも!!ありがとー!!」
そこへ。
「何騒いでるの?」
玲奈が呆れたように近づいてきた。
ラベンダー色のヘアゴムが揺れる。
落ち着いた雰囲気なのに、どこか親しみやすい。
「玲奈ちゃん!!聞いて聞いて!!桃花ちゃんと仲良くなれたんだよー」
「白石さんと?」
桃花が少しだけ目を逸らす。
「あ、えと。」
「とてもそうには見えないけど」
「照れ屋さんなんだよー!可愛いよね!!」
「そうね、可愛いわ」
玲奈がさらっと言う。
桃花の顔がまた赤くなる。
「さすが玲奈ちゃん!!」
「あっ、そーだ!!桃花ちゃんもご飯一緒に食べよー?」
「え?わ、私も?」
少し驚いたように目を見開く。
「いいじゃん!みんなで食べた方が美味しいしなー!」
「俺、とーやん誘ってくるー!!」
「ひよりちゃんも誘いなさいよ」
「担いだら良くね?ひよりん寝てんだろ」
「いや、扱い悪!?女の子なのよ!!」
陽向と玲奈は言い合いながら歩いていった。
騒がしいのに、不思議と安心する空気。
「あはは、2人とも仲良しでいい感じ!!ねっ?」
「う、うん。そうね」
少しだけ静かになる。
桃花が、そっと口を開いた。
「あの、こ、小春ちゃん」
「なーに?桃花ちゃん!」
「……あの」
ほんの少しだけ視線を泳がせて。
小さく息を吸う。
「あ、ありがとう」
勇気を出したみたいな声だった。
その瞬間。
「ひゃー!!桃花ちゃんが笑ったー!!嬉しい!!」
ぎゅー。
「へ?ちょ!!」
突然抱きしめられて、桃花の思考が止まる。
「べ、別に嬉しくなんてないから!!」
「うんうん!わかってるわかってるー」
「あっ、うぅ。」
抵抗しようとして、やめる。
ほんの少しだけ、力が抜けた。
「お顔真っ赤っかー!」
「……勘弁してー!」
少しだけ距離が近くなった気がした。
桃花ちゃんは、
思っていたより優しい子かもしれない。
そう思った、
こはちゃんだった。
貴重なお時間ありがとうございました!




