第65話 そーちゃんと中庭だよ!
中庭。
秋の風。
落ち葉が、舞う。
さら、さら。
紙をなぞる音だけが、残る。
「……」
描く。
止まらない。
「…………」
まだ、
描く。
「………………」
「小春」
「……そーちゃん!!」
ぱっと、
顔を上げる。
ふっと、笑う。
隣に、
座る。
何も言わない。
でも、
確かに隣にいる。
⸻
静か。
「……」
さら、さら。
「……そーちゃん!フルート聴きたいなー」
「うん」
待っていたみたいに、
音が流れる。
やわらかく、
包む。
風と、
混ざる。
描く。
止めない。
言葉も、
いらない。
ただ、
続く。
音と、
線。
⸻
「……」
「……そーちゃんの音!」
視線が合う。
「……水色じゃ、なくなったんだね」
「うん、変わったかも」
「ふふ、そっか!今の音は群青色だねー」
「うん、俺の色」
「そーちゃんの色、うん。そーちゃんらしいかも」
にこっ。
笑う。
同じように、
返す。
⸻
「あっ、そーちゃん。みてみてー」
「完成した?」
こくり。
頷く。
「綺麗、中庭だ」
「うん」
それだけ。
それで、
足りる。
⸻
肩が、
触れる。
近い。
でも、
離れない。
何も言わない。
拒まない。
求めない。
ただ、
そこにいる。
⸻
(このままでいい)
(変わらなくていいから)
(俺を必要として)
(君を、静かに溺れさせたい)
目を閉じる。
そっと、
預ける。
小春は、
何も言わない。
⸻
風が、通る。
時間が、
ゆっくりになる。
音も、
言葉も、
溶けていく。
(時が止まればいいのに)
(ずっと側にいたい)
(必要としてよ)
(俺の事)
(もっと、もっと深く)
(――愛して)
⸻
色が、
重なる。
群青が、
静かに、
広がっていく。
貴重なお時間ありがとうございました!




