第64話 透ちゃんと美術室だよ!
「おはよう!!玲奈ちゃん!!」
「こはちゃん、おはよう!」
朝の教室。
少しだけ、賑やか。
「あーあー、夏休み終わっちゃったねー」
「そうね、でもほら文化祭があるわよ」
「そうだった!楽しみだなーー!!」
「何話してんのー?」
「ひーくん!もうすぐ文化祭だねーって話だよ!」
「あーそういやそうだな!楽しみだな!こはたん!」
「うん!楽しみーー!!」
「みなさんでなんの話ですか?」
「透ちゃん!!文化祭の話!!」
「そういえば10月でしたね。うちのクラスの出し物何になるんでしょうか?」
「何がいいかしらね?なるべく手間のかからないものがいいわねー」
「あはは!玲奈ちゃんったら!みんなで協力してやるのが楽しいんだよ!!」
「そうだぜ、れいれい!劇とかやりたいなー!楽しそうじゃん!なぁ?とーやん!」
「ふふ、そうですね。水瀬さんは主役に向いてそうです」
「私がーー??もう、そんな事ないよー!裏方でいい!むしろ背景の絵とか描きたいかも!!」
「クオリティ高い背景になっちゃいそうですね」
「劇じゃなくて芸術鑑賞会になりそう」
「あはは!」
視線。
止まる。
(……何でも似合う)
「どうしたのー?透ちゃん!何かついてる??」
「いえ、もし劇するならなんの役になるかなと思ってました」
「とーやんも劇したくてうずうずしてんだな!」
「ふふ、そうかもしれないですね」
「なんだ?文化祭の話か」
「石田君!!」
「劇はやるのが難しいだろうな」
「ええ??なんでだよー」
「競争率が高いからだ」
「まじでー!?んー、じゃああと何があるっけ??」
「なんで劇のことしか思いつかないのよ」
「屋台とかですかね?」
「おお!!たこ焼きとかいいじゃん!楽だぜ!」
「急に食べ物になるのね。まあ、でも悪くないわ」
「うんうん!!いいと思う!!たこ焼き美味しいし!」
「そうね!」
「お前らだけで決めるなよ、一応クラス全体で賛成ならいいけどな」
⸻
「ふんふーん、絵を描きましょう!」
美術室。
静か。
さら、さら。
音だけが、響く。
風が、入る。
ふわり。
前髪が揺れる。
手は、止まらない。
一心に。
「水瀬さん」
「透ちゃん!どうしたの??」
「これよかったらどうぞ」
差し出される。
一枚。
「花火!!綺麗だねー!!すごーい!!」
「ふふ、気に入ってくれて嬉しいです。」
「あはは!透ちゃんありがとう!!よーし!早速この花火を描いちゃうぞー!!」
「はい、是非」
座る。
隣に。
何も言わない。
ただ、
いる。
(今は、そのままで)
(少しずつでいい)
(――変えてみせる)
さら、さら。
色が、重なる。
形が、生まれる。
⸻
「よーし!できたーー!!みてみてー!」
ぱっと、差し出す。
「わあ!素敵です、水瀬さんの絵。やっぱり好きです」
「……うん!嬉しいな!!ありがとねー!!」
少しだけ、
照れる。
「いえ、僕の方こそありがとうございます」
「透ちゃんにプレゼントー!!」
差し出す。
そのまま。
「え?いいんですか?」
「うんうん!私の絵見て喜んでくれるから!プレゼント!あと、写真見せてくれたお礼!」
「わあ、ありがとうございます」
大事そうに、
受け取る。
「あはは!透ちゃんお礼ばっかりだねー!」
「ふふ、そうですね」
指先で、
なぞる。
そのまま、
離さない。
⸻
窓の外。
夕方の光。
静かな空気。
隣にいる。
それだけで、
完成しているみたいだった。
でも、
それだけじゃ、
足りない。
(……少しずつでいい)
(この距離を)
(――僕のものに)
貴重なお時間ありがとうございました!




