第63話 ひーくんと夏祭りに行ったよ!
「ひーくん!!」
「こはたん!」
人混みの中、見つける。
「えへへ、お待たせー。浴衣着るの時間かかったよー。」
ふわり。
揺れる。
「めっちゃ似合ってる!こはたん最高!!」
ぐっと、親指。
「わーーい!ひーくんも甚平似合ってるよ!!」
「ははっ、ありがとな!こはたん」
にっと、笑う。
「んじゃ行きますか!ほれ」
差し出される手。
ぎゅっ。
「こはたん、それは握手」
「あっ、本当だー!!えへへ、こうだね」
そっと、
握り直す。
「うん、離れないで……」
「もちろん!!側に張り付くよー」
ぎゅー
「……うん」
そっと、
腕を組む。
「この方が近いし、離れないな」
「確かに!!歩きやすいしねー」
「……」
頷く。
そのまま、
歩き出す。
⸻
屋台の灯り。
甘い匂い。
香ばしい匂い。
混ざる。
「ひーくん!みてみてー」
ぺろ。
緑色。
「あはは!こはたんの舌の色やばっ!!」
「あははー!」
笑い声。
溶ける。
⸻
「ここっ!」
カタン。
箱が倒れる。
「ひーくんすごーい!!射的できるんだ!!」
「弟にせがまれてよくやらされてたからな」
すっ。
手渡す。
「こはたん、これあげる」
「え!!いいのー?」
「こはたんが要らなくなければ」
「えへへ!嬉しいよ!!ひーくん!ありがと!!」
「……うん」
少しだけ、
目を細める。
⸻
歩く。
止まる。
笑う。
また歩く。
何気ない時間が、
積もっていく。
⸻
「もうすぐ花火だねー!楽しみだなーー!!」
「俺、よく見えるとこ知ってるぜ!いこーぜこはたん!」
「うん!!いこう!レッツゴー!!」
「おーー!!」
⸻
「ここだぞ!」
「公園??」
「おう、ちょっと花火は小さく見えちまうけど。」
「わあ!!お祭り会場を見下ろせるんだね!!」
「うん、花火全体が綺麗に見えるぜ」
「わあ!楽しみーー」
ぴょん、ぴょん。
はしゃぐ。
じっと、
見つめる。
何も言わずに、
座る。
隣に。
肩が触れる。
静か。
「ひーくん!一緒にお祭り来てくれてありがと!!」
「なんだよ、俺から誘ったんだし。」
「むしろありがとう、こはたん」
「あはは」
つられて、
笑う。
⸻
ドン。
夜に、咲く。
「わあ!!綺麗ー!!すごーい!!音が響くねー!」
「そうだな」
空を見上げる。
光が、降る。
(こはたんはきっと誰とでもこうやって花火を見る)
(俺が誘わなかったら、きっと違う誰かと)
遠くで、
また音が響く。
(みんなのこはたんだから)
(俺だけのこはたんじゃないから)
(好きだって言っても、違う意味で受け取られる)
(……でも、やっぱり)
「……好きだ」
ぽつり。
こぼれる。
「そっかそっか!!ひーくん花火好きなんだね!」
「おう!」
笑う。
(届くわけないよな)
(だってこはたんは)
(みんなが大好きなんだから)
⸻
夜空に、
花が咲く。
隣で、
無邪気に笑う声。
それだけで、
十分だと、
思ってしまう。
でも、
それだけじゃ、
足りないとも、
思ってしまう。
――夏の夜は、少しだけ苦い。
貴重なお時間ありがとうございました!




