第60話 ひーくんとお出かけしたよ!
「ひーくん!!こっちこっち!!」
「こはたん!」
「えへへ!はいこれ」
差し出されるチケット。
「そーちんすげーよなー」
「フルートとか、吹き方すらわかんねー」
「ねー!」
「私も無理だよー!」
「でもでも!」
「すっごく綺麗な音だよ!!」
「楽しみだなーー」
「前に音楽室でやってたよな」
「確かに綺麗だった」
「うんうん!!」
無邪気に笑う。
――その顔を、
じっと見つめる。
「……」
ぐっと、
手を握る。
「おっし!」
「行こーぜ、こはたん」
「うん!行こう行こう!!」
ぎゅっと、
力がこもる。
(今、そばにいるのは)
(――俺だ)
⸻
静かなホール。
音が、
広がる。
蒼真の音。
柔らかく、
澄んでいて、
空気を満たしていく。
一瞬。
目が合う。
ふっと、
優しく笑う。
そのまま、
音に戻る。
⸻
「わぁ……!」
「そーちゃんの音!」
「やっぱり水色だね!」
「……」
陽向は何も言わない。
ただ、
小春を見る。
手は、
繋いだまま。
離さない。
⸻
演奏が終わる。
拍手。
余韻。
⸻
「そーちゃん!!」
「すごかったよーー!!」
「ありがと」
「やっぱり水色!!」
「綺麗な音だった!!」
「うん、聴いてくれてありがとう」
「そーちん!めっちゃ上手かったぜ!!」
「プロじゃん!」
「そんなことない」
「でもありがと」
「謙遜すんなよ!」
「マジで凄かったって!」
「拍手もデカかったし!」
「そうだよ!!」
「1番上手だった!!」
こくこくと頷く。
「楽しんでくれたならいい」
軽く手を振る。
去っていく背中。
――振り返る前、
一瞬だけ。
視線がぶつかる。
蒼真の目が、
ほんの少しだけ、
細くなる。
すぐに、
消える。
⸻
「……」
陽向は、
拳を握る。
⸻
「いやー楽しかった!」
「こはたん!誘ってくれてありがとなー!」
「ううん!」
「私の方こそありがとうー!!」
「来てくれて嬉しいよ!!」
「俺もこはたんに会えて嬉しいぜ!!」
「あはは!」
「休みだとなかなか会えないもんねー!」
「そーなんだよなー!」
「できることなら毎日でも会いに行くのに」
「それじゃあひーくん休めないよー」
「休めるってー」
「こはたんに会える方が元気出るし!」
「あはは!」
「私も元気になれるよー!!」
「一緒だね!!」
「うん、一緒」
少しだけ、
間を置いて。
「……ずっと一緒」
「うん!!」
「ずっーーと仲良しでいてね!!」
「だーいすき!」
ぎゅー
「うん、俺も……好き」
強く、
抱きしめ返す。
「あはは!力つよーい!!」
「……いや?」
「痛くないから平気だよ??」
「ひーくん、大丈夫だよー!」
「私はそばにいるからねー!」
ぽんぽん、と背中を叩く。
「……うん」
小さく、息を吐く。
「……1人にしないで」
消えそうな声。
でも、
ちゃんと届く。
「うん!!」
「もちろん!!」
「1人にはぜっーたいさせないから!!」
「……」
何も言わずに、
身を預ける。
ただ、
離れないように。
⸻
同じ場所にいても、
同じ気持ちじゃない。
でも、
同じ場所にいようとしている。
貴重なお時間ありがとうございました!




