第57話 「愛させてくれ」
水瀬小春。
俺の好きな女。
愛してる。
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だからこそ、
話さなきゃいけねぇ。
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俺のこと。
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……愛してほしいから。
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家族のこと。
言葉にするのも、
正直、嫌だ。
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でも、
小春なら。
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あいつなら、
変わんねぇ顔で、
聞いてくれる気がする。
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……勝手な期待だな。
馬鹿みてぇだ。
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守りてぇのは、
俺の方なのに。
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気づけば、
守られてる。
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ほんと、
不思議なやつだよ。
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「れんれん」
「小春」
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約束の日。
ちゃんと来てる。
……ほんと律儀だな。
そういうとこ、
好きなんだよ。
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「面白くねぇ話だ」
「それでもいいか?」
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小春は、
何も言わずに頷く。
いつもの顔。
にこっと、
笑う。
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……ああ、
やっぱ安心するわ。
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「俺は家族を捨ててんだ」
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「親が医者でよ」
「俺も医者になれって言われて育った」
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「期待に応えようとして」
「勉強ばっかりして」
「何も楽しくなくて」
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「気づいたら、勉強が怖くなってた」
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「一番怖かったのは」
「期待に応えられなかった時だ」
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「期待はずれ」
「いらない」
「産まなきゃよかった」
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「……そんな言葉ばっか飛んできやがる」
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ぐっと、
拳を握る。
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「理想押し付けて」
「自分らの自慢のために使って」
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「俺はモノじゃねぇ」
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「人だ」
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「……愛してほしかった」
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「人として見てほしかった」
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「ただ、家族でいたかった」
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「それだけだ」
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「でも、無理だった」
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「何にもなれなかった」
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「理想の子供にも」
「人にも」
「家族にも」
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「……愛されたかった」
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静かに息を吐く。
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「家、出た」
「全部捨てた」
「名前もな」
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「野垂れ死にかけて」
「ラーメン屋のおっちゃんに拾われた」
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「今こうしてるのは」
「あの人のおかげだ」
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「感謝しかねぇよ」
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少しだけ、
顔を上げる。
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「小春」
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「お前に会えてよかったって思ってる」
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「平等に見てくれる」
「人として扱ってくれる」
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「俺が欲しかったもん」
「全部くれた」
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「ありがとな」
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少しだけ、
笑う。
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「俺はさ」
「もう押し付けたくねぇんだ」
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「だから距離取ってた」
「関わらなきゃいいって」
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「でもよ」
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「お前に会って」
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「変わっちまった」
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救われた。
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愛を知った。
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こんなに、
誰かを
大事に思えるなんて。
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「守りたい」
「支えたい」
「そばにいたい」
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「……全部、お前だからだ」
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少し、黙る。
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「すまねぇ」
「何言ってるかわかんねぇよな」
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「れんれん」
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小春の声。
やわらかい。
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「もう守られてるよ」
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「支えてもらってる」
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「友達でいてくれる」
「そばにいてくれる」
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「それだけで」
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「たくさんもらってる」
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「だから」
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「ありがとう」
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「話してくれて」
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にこっと、
笑う。
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「……敵わねぇな」
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ぽつりと、こぼれる。
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ああ、
軽い。
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こんなに、
軽くなるもんかよ。
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受け入れられるって、
こういうことか。
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……やべぇな。
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どんどん、
欲しくなる。
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でも、
これ以上は
望まねぇ。
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「……頼む」
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心の中で、
呟く。
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そばにいられなくてもいい。
一番じゃなくてもいい。
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ただ、
お前が笑ってる未来を
見てぇ。
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そのために、
俺はいる。
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だから。
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「愛させてくれ」
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声には出さない。
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ただ、
そっと笑った。
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一生。
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愛してる。
貴重なお時間ありがとうございました!




