第51話 「それじゃ嫌なんです」
誰もいない、放課後の教室。
夕日が、静かに差し込む。
透は、ただ立っていた。
カメラを手に。
何も言わず、
窓の外を見つめている。
柔らかな風。
揺れる前髪。
銀色の髪が、
夕日に染まって、
赤く見えた。
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君のことが好きで。
どうしようもなくて。
僕は、ただ
近づきたくて。
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どれだけ距離を縮めても、
君は変わらない。
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僕の好意と、
君の好意。
その差は、
あまりにも大きくて。
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だんだんと、
不安になる。
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このままでいいのかな。
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もっと、
君の奥へ行きたい。
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誰のものにもならないで。
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僕を選んで。
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僕だけの、
水瀬さんになってよ。
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修学旅行。
君は、別の班だった。
でも、
分かってしまう。
見ていれば。
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近づいた距離。
増えた会話。
増えた視線。
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陽向さん。
榊原さん。
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ああ、
そうですか。
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あなたたちも、
同じなんですね。
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負けたくない。
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僕は、
負けませんよ。
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ねえ、
水瀬さん。
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僕のこと、
どう思っていますか?
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どうして、
変わってくれないんですか?
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こんなに、
好きなのに。
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愛しているのに。
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何も、
変わらない。
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あなたは、
いつも同じ。
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声も。
笑顔も。
態度も。
距離も。
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平等。
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……それじゃ、
嫌なんです。
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お願いです。
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選んでください。
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僕を。
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もっと、
僕を見てください。
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感じてください。
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聞いてください。
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触れてください。
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想ってください。
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「透ちゃーーん!」
現実に引き戻される。
「みてみて!じゃじゃーん!」
無邪気な声。
差し出されたのは、チケット。
「これは……?」
「美術館のチケット!!」
「透ちゃん!一緒に行かない??」
少しも迷わず、答える。
「はい。もちろんです」
「えへへ!やったーー!!」
くるくると回るように、
スキップしている。
変わらない。
何も変わらない。
その笑顔。
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「はい」
「あなたとなら、どこにでも行きますよ」
「あはは!嬉しいなー!!」
「どんどん誘っちゃおー!」
「楽しみだね透ちゃん!!」
「はい、楽しみです」
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僕なら、
どこにでもついていきます。
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君が望むこと、
全部叶えてあげる。
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他の誰にも、
させません。
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だから、
僕のところに来てください。
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……いいえ。
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僕しか、
見えないようにしてあげます。
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ゆっくりと、
距離を詰める。
そっと、
手を取る。
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「ふふ」
「繋ぎたくなりました」
「駄目ですか?」
「あはは!いーよいーよ!」
「おてて繋ごーー!」
ぎゅっと、
握り返される。
ぶんぶんと揺れる手。
楽しそうに笑う君。
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……今は、
それでいい。
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焦りません。
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逃がしません。
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どんどん、
好きにさせてあげますから。
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ゆっくりと、
確実に。
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僕だけを、
見るように。
貴重なお時間ありがとうございました!




