第49話 みんなそれぞれだったよ!
「くぁ、ねっみー」
蓮が大きくあくびをする。
「寝たらいいんじゃないでしょうか?」
「お布団、敷きましょうか?」
「布団ぐらい自分で敷けるっての」
「意外と家庭的なんですね」
「意外は余計だっての」
「静かに毒刺すよなお前」
「そうでしょうか?」
――沈黙。
ぱち、ぱち。
見えない火花。
「何でケンカ前の空気なんだよお前らは!!」
石田のツッコミが炸裂する。
「すぅ、すぅ」
「寝るなら布団で寝ろ!!」
「女が無防備に寝るな!!」
「うぅ、うるさい……」
ひよりがごろりと転がる。
そのまま、透にしがみつく。
「すぅ……」
「……」
「お前らの距離感どーなってやがる?」
「それについては同意だ」
「どうも何も、幼馴染ですよ」
「幼馴染の距離じゃないだろ!!」
「お似合いだぜ??付き合えばいいじゃねぇか!」
「ひよりとはそういう関係ではありません」
「へぇ」
ぎろっ
再び視線がぶつかる。
「だから何で空気を悪くするんだよ!!」
石田が頭を抱える。
「喧嘩するぐらいなら話すな!!」
「そもそも一緒にいる俺の立場にもだな!!」
「委員長うるせー」
「よくそんなベラベラ話せるな?」
「お前らのせいだろ!!」
「嘘だろ……これを2日も……」
「うぇ」
「いえ、そこまで気分を害されます?」
「そこの不良とお前がギスギスするからだろ!!」
「仲良くしろとは言わんが普通にしてくれ!!」
「僕は普通ですよ?」
「僕じゃなくて鬼塚さんに言ってください」
「あ?俺もフツーだぜ?」
「委員長が敏感なんじゃね?」
「俺をいじめる時だけ連携するな!!」
「すぅ……すぅ」
「お前は起きろ!!」
「一ノ瀬に運ばれるな!!」
「ふみゅ……すぅ」
「起きろーー!!」
部屋には、
静かな戦争と、
無力な叫びが響いていた。
⸻
「……なんか、石田くんの叫び声が聞こえた気がするんだけど」
「ふふ、あのグループ雰囲気すごかったもんね」
「白石さんと一緒でよかったわ」
「胃が荒れずに済むし」
「あはは」
「のんびり過ごそうね」
「それにしても」
玲奈がぽつりと呟く。
「こはちゃんはモテモテよねー」
「わかりやすいのに、何で気づかないのかな?」
「私なら気づくレベルだよ」
「こはちゃんらしいけれどね」
「ふふ、そうだね」
少し間。
「でも、もし誰かを選ぶとするなら」
「誰になるのかな?」
「さあ」
「それはこはちゃんしかわからないわよ」
「ちなみに玲奈ちゃんは?」
ぐいっと距離が近づく。
「誰だと思ってるの??」
「白石さん、恋バナ好きね」
「……そうね」
少し考える。
「私は、榊原君との相性が良さそうに見えるわ」
「確かに確かに〜!」
「ずっと小春ちゃんのこと見てるもんね!!」
「前に本屋に一緒に行ったことがあるのよ」
「その時から怪しいと思っていたわ」
「ええ!?そうなの??」
「距離近かったし」
「さりげなく本を持ってたし」
「あれは脈アリね」
「おお!!それは絶対好きだね!!」
「白石さんは?」
「私は落塚君かな!」
「ええ??あの人?」
「すっごい一途なの見てわかるもの」
「小春ちゃん最優先してるし」
「長く続くなら落塚君かなーって」
「まあ、一理あるわね」
「てかあの2人、身長差えぐいわよ」
「ふふ、確かに」
「……まあ」
玲奈が小さく笑う。
「何だか面白いことになってるけど」
「こはちゃんは何も変わってないのよね」
「うーん、背中押してあげるべき??」
「私たちは静かに見守りましょ」
「決めるのはこはちゃんよ」
「そうだね」
少し柔らかい空気になる。
「ところで〜」
「高梨さんは?」
「好きな人いないの?」
「私?」
玲奈はさらっと答えた。
「彼氏いるわよ」
「ええ!!そ、そうなの!?」
「ええ、この学校じゃないけれどね」
「へぇ、いいなぁ」
「青春してる」
「白石さんは?」
「いないよ」
「いつか運命の人が現れるといいな」
うっとりと語る。
「ふふ、そうね」
「応援するわ」
⸻
それぞれの部屋で、
それぞれの夜が過ぎていく。
静かに。
少しずつ。
変わっていくものと、
変わらないものを残しながら。
貴重なお時間ありがとうございました!




