第46話 ひーくんとゆっくりしたよ!
「はーー!温泉気持ちよかったーー!」
部屋に戻った瞬間、小春が大きく伸びをした。
「テンション上がりすぎて草」
「紫苑ちゃんのパジャマ可愛いね!」
「おっきくて着心地良さそう!」
「そっ?」
紫苑がちらりと小春を見る。
「てか、こはちー」
じろり。
「ジャージなの草」
「ええ!?寝やすいよ??楽だよ??」
「ウケる」
「たっだいまーー!」
「おお、こはたんおかえりーー」
「ひーくんもジャージだーー!」
「お揃いじゃん!!イェーイ」
ぱんっ
軽い音が響く。
「寝やすくて効率的」
蒼真が淡々と頷く。
「ドキドキ感なくて草」
⸻
「お布団どうやって敷く??」
「ここ」
紫苑はすでに布団を敷き始めていた。
「早くね!?」
「まだ消灯前だぞ??」
「寝る」
そのまま、布団へ。
「いや!本当に寝てるし!!」
「あははー!疲れてたのかなー??」
「明日のために寝るのは効率いい」
「効率思考すぎだろー」
「こういうのってさ、夜更かしするのがいいんじゃん!!」
「消灯後は寝る」
「そーちんもかよ!!」
「てか、布団敷くの早っ!?」
蒼真はきっちりと布団を整える。
「私は絵を描こうかなーー!」
「お寺の絵を描くぞーー!!」
「いや自由!!なんで俺がツッコミなの!?」
「効率いい」
「ええ!?そーちんがやってよ!!」
「前はツッコミ側だったじゃん!」
「別に意識してないけど」
「素でやってたの!?」
⸻
「ふんふんふーん♪」
静かに、鉛筆の音が響く。
蒼真は何も言わず、小春を見ていた。
ただ、じっと。
その視線に、
陽向は気づく。
(……なんで?)
胸に手を当てる。
ざわ、とした違和感。
小春を見る。
ドクン。
心臓の音がやけに大きく響いた。
「……あー」
その違和感は、
少しだけ形になった。
⸻
「寝る」
「いや!本当に消灯時間ぴったりに寝るじゃん!」
「……」
「って、もう寝てるんですけど!!」
蒼真と紫苑は、静かに眠りについた。
残されたのは、
小春と陽向。
⸻
「……」
陽向は、小春を見る。
髪を下ろした姿。
いつもより少し大人びて見える。
静かに絵を描くその姿。
(……なんだよ)
(いつもと違うじゃん)
気づけば、
手が伸びていた。
さらりと、髪に触れる。
「ひーくんどうしたのーー?」
びくっと体が跳ねる。
「あっ、わり。触っちまった」
手を離す。
「ええ??いーよー?」
「髪触られるの好きだし!!」
「それにひーくんに触られるの嫌じゃないよ!!」
「その言い方はしない方がいいぞ」
苦笑いしながら、もう一度髪に触れる。
今度は、丁寧に。
「……こはたん」
「なーにー?」
「……髪、結んでいい?」
「わあ!!うんうん!!やってやってー!」
ぱっと笑う。
陽向はそっと目を逸らす。
耳が赤い。
「……」
静かな時間。
髪を整える音。
鉛筆の音。
風の音。
(なんでこんなに……)
(ドキドキしてんだろ)
⸻
「ひーくんひーくん!!」
「ん?」
「見てみてー!ひーくん描いてみた!!」
差し出された絵。
寺と、陽向。
「……オレンジ色」
「うん!ひーくんの色!!」
「大好きな色!!」
「……っ!?」
ふっと、笑う。
「こはたんの絵、好きだよ」
「やったーー!!」
「嬉しいなー!」
「ひーくんに好きになってもらえちゃったー!!」
きゃー、と喜ぶ。
「これからもいっぱい描くね!!」
「また見てくれる??」
「……うん」
静かに頷く。
少しだけ、大人びた声。
「こはたんは変わらない」
「あはは!何それー!」
「私の絵進化してるよ!!」
(そのまま、ずっと)
「……うん」
⸻
少しの沈黙。
小春は伸びをする。
陽向は、そっと近づく。
ぽすっ
小春の膝に頭を乗せる。
「こはたん」
「なーに?」
「……側にいて」
「あはは!もういるよ!!」
「……ずっと」
「うん」
「ひーくんのこと1人にしないよ」
優しい声。
柔らかい声。
「……うん」
目を閉じる。
小春は、何も言わずに笑う。
「私はみんな大好きだよ」
その言葉が、
静かな部屋に優しく広がった。
貴重なお時間ありがとうございました!




