第39話 「なんだかんだ仲いい」
「あーー!腹減った!!とーやん、飯食お!!」
昼休みの教室に、陽向の声が響く。
「ふふ、陽向さん。授業中お腹鳴ってましたもんね」
「ありゃ、バレてた?はっずー!!」
頭をかきながら笑う。
「あっ」
「そーちん!!」
「なんだそのあだ名」
「いいじゃん!語呂いいし!」
「却下」
「えー!冷たい!」
「で、どうしたの?」
「飯食おーぜ!!」
「まあ、いいけど。教室で?」
「屋上とかどうですか?」
透が静かに提案する。
「今日は風も心地いいですよ」
「いいじゃん!!行こ行こ!!」
「ふふ、陽向さんは元気ですね」
「ただの馬鹿だろ」
「辛辣!!」
「ほんと、そーちん男だけだと普通に話すよなー」
「成瀬が話しやすいからじゃない?」
「そーちん!!いいやつすぎたろ!!好き!」
「きもい」
「とーやん!振られたーー!!」
「もう、何してるんですか」
笑いながら階段を上がる。
「あっ!こう!!」
「飯食べようぜー!!」
「いい加減その呼び方やめろ」
「ええ!?いいじゃんかよー?」
「なんだかんだ反応してくれてるじゃん??いいやつだなーまじで」
「うるさい黙れ」
「よーし!こうも一緒に行くってことでゴーゴー!!」
「おい!言ってないぞ!!止めろ!」
「無理だ、諦めろ」
「僕には陽向さんを止められないかと」
「なんで俺なんだよ!!」
「友達じゃん??仲良くしよーぜ??」
「はぁ……仕方ないな」
「ふふ、やっぱり優しいですよね」
「俗にいうツンデレというやつか」
「分析するな!」
「はいはい!レッツゴー!」
⸻
屋上。
風が静かに吹いている。
「あっれー??」
「れんれんいるじゃん!!」
「あ?」
「なんだ、お前らか」
「お前、普通に話せたんだな」
「は?当たり前だろーがよ」
「いや、水瀬がいる時と違いすぎだろ」
「小春は特別だからな」
「他に譲る気ねぇぜ!」
透の表情が一瞬だけ止まる。
「……水瀬さんは人ですから」
「誰といるかは、水瀬さんが決めることです」
「そんなの当たり前だろ!!」
「小春が自分から俺を求めることに意味があんだよ」
「まともな意見だ」
蒼真が小さく頷く。
「はい、意外でした」
「すみません、決めつけたようなことを言ってしまって」
「別にー?」
「馴れ合う気ないからいいぜ?」
「嫌っとけよ」
「……」
透は静かに笑った。
「あー、とりあえず飯食わねー??」
「そうだな」
それぞれ弁当を広げる。
「うっまー!!」
「とーやんの唐揚げうますぎ!!」
「ふふ、そうですか」
「ほい、俺のもやるぜ!」
「わあ!卵焼き!」
「ありがとうございます!」
「肉系先に食べちったごめんなー」
「いいですよ」
「僕は卵の方が好きですし」
「よかったー!!」
「いや、自分の弁当は自分で食えばいいだろ」
「食べたいものを交換するのは効率的じゃないか?」
「確かに」
「素直じゃん、委員長」
「委員長呼びやめろ、不良って呼ぶぞ」
「構わねーけどぉ??」
「喧嘩すんなよー!」
「仲良くしようぜ!」
「ほれ!れんれんも食え食え!」
「卵焼きだぞー」
「は?まあ、貰っといてやるよ」
「なんならあーんしてあげよっか」
「喧嘩売ってんのか??」
「喧嘩は良くないな!」
「こういうのはスポーツで決めるもんだ!」
「バスケしようぜー!!」
「お前、最初からそれが目的だろ」
「あちゃー、バレたかー!!」
「いいじゃん!やろうぜ!!」
「楽しいって!!」
「いいじゃねぇか!」
「俺に勝負を仕掛けたこと後悔させてやらァ!!」
「バトル漫画かよ」
「熱い友情だな、ライバルキャラに多い」
「漫画の分析してる場合じゃないですよ」
「よーし!決まりな!!」
「なんで俺らまでやるんだよ」
「つまんないじゃん!」
「みんなでやろうぜ!」
「ノリ悪いぞー委員長」
「勝ってから文句言うんだな!」
「くそっ……」
「いいだろう」
「勝ったら俺を巻き込めないようにしてやる」
「運動馬鹿に勝てるのか?」
「負け戦じゃねーか!!」
「自分でツッコミもできると」
「分析すんな!!」
「えーと」
「みなさん、ご飯食べ終わってからにしましょう?」
⸻
放課後。
体育館。
ボールの音が響く。
ダンッ
ダンッ
「やるなー!れんれん!!」
「お前もやるじゃねぇか!」
「負けないぜ!」
ガンッ
リングに叩き込まれるボール。
「うおお!!かっけぇ!!」
「てか、れんれん背高!!」
「何センチよ??」
「あ??192」
「すげぇ!!」
「まじかっこいい!!」
「サインくれよ!!」
「ははっ」
「なんのサインだよ」
「俺もれんれんくらいあればなー」
「十分だろ」
「目立つだけだぜ」
「それがいいんじゃん!」
「目立ってなんぼ!!」
「そーかいそーかい」
ぽん
「おい!!叩くなよ!」
「縮んだらどーすんだ!!」
「縮んでも面がいいからなんとかなんだろ」
「めっちゃ褒められてる!!」
「根はいいやつなんだよなあいつ」
「普通じゃないか?」
「榊原さんの感覚どうなってるんです??」
「おーい!!」
「とーやん!」
「こう!」
「そーちん!!」
「参加しろよー!」
「いや、どうやって参加するんだよ」
「見てる方が楽しい」
「この際ですし」
「写真でも撮っておきますね」
「なんなんだよ、帰りたい」
「鍵閉めで帰れないだろ」
「そこは変わるよとか言うとこだろ!?」
「え?嫌」
「くそっ!!」
「こう」
「そんなにツッコんでたら禿げるぞ??」
「お前らのせいだろ!!」
「なんでしょうこれは」
「さあ?」
「仲良し軍団?」
「ふふ」
「確かにそうかもしれませんね」
男子って、
くだらないことで笑って、
どうでもいいことで競い合って、
勝った負けたと騒いでいる。
意味なんて特にない。
でも、
そういう時間が、
案外、心地よかったりする。
それぞれ違う性格で、
それぞれ違う考えを持っているのに、
なぜか同じ場所に集まって、
同じ時間を過ごしている。
騒がしいのに、
どこか落ち着く空気。
少しだけ、
不思議な関係だった。
まだ、
特別な何かがあるわけじゃない。
でも、
これから先、
変わっていくものがある気がした。
そんなことを、
誰も口にはしないまま、
ボールの音だけが、
体育館に響いていた。
貴重なお時間ありがとうございました!




