第3話 はじめて放送したよ!
「じゃあ、水瀬さんよろしく」
放送室の先輩が、マイクの前を少しだけ空けてくれる。
「はい!!頑張ります!」
思ったより大きな声が出た。
(よし、大丈夫……!)
小さく息を吸う。
マイクの前に立つと、急に静かになった気がした。
少しだけ緊張する。
でも。
せっかくの初めての放送だ。
思い切りいこう。
「おはようございます!!」
放送室に自分の声が響いた。
少しだけびっくりするくらい大きかった。
「今日も一日頑張りましょう!!」
言い終えて、慌てて先輩の方を見る。
「先輩!どうですか!!」
「え、ええ。元気でいいと思う」
「やったー!!」
思わず小さくガッツポーズをする。
放送室を出た瞬間、緊張が一気にほどけた。
「ひえー、緊張したー」
すると、近くに見慣れた二人の姿があった。
「水瀬さん、おはようございます」
「……おはよ〜」
「あっ、透ちゃん!ひよりん!」
「水瀬さんの声、響いてましたよ」
「綺麗な声ですね」
「うん」
「……起きれた」
「ほんとー!?よかったー」
「おかげさまで、ひよりが起きてくれたので助かりました」
「すぅ」
「ひよりん寝ちゃったよ?」
「あー、ひより!?授業始まりますよー?」
ゆさゆさ。
「ぐぅ」
「ふふ、春は眠たくなるもんねー」
「私も朝弱いからわかるよー」
「水瀬さんはひよりよりは起きれてますよ」
「えへへ、そうかな?起きたら元気なんだけどねー!」
「ふふ」
「……ぅん」
「ひよりん!よかったー!起きれたの?」
「小春ちゃんの声、綺麗だから」
「ひゃー!嬉しい!ありがとう、ひよりん」
ぎゅー。
「うみゅ、苦しい〜」
「ふふ、仲良しさんですねー」
「おっはー!いいな!俺も混ぜて混ぜて!!」
ぎゅー。
「うぅ、鬱陶しい」
「うわー!?」
ひよりが、するりと腕の隙間から抜ける。
「寝る」
近くの壁に軽く寄りかかると、そのまま目を閉じた。
「すぅ」
「寝るの早えー!?」
「寝つきがいいんだね!!」
「寝つきがいいなんてレベル超えてる気がしますけどね」
「確かにー確かに!!」
「すぐ眠れるのいいなー」
「こはたん、あんま寝れない感じ?」
「あはは、絵を描くのに夢中になること多くて」
「まじ!?こはたんの絵見てみてー!」
「じゃあ、今度スケッチブック持ってくるね!」
「やったね!」
「えと、お二人はその、いつまで抱き合っているんでしょう?」
「?」
「ん?友達だしよくね?」
「あー!そういえば、言われるまで気づかなかったよ!」
「お二人の距離感どうなってるんです?」
「あははー、友達だよ!透ちゃんもハグするー?」
「いえ。僕は遠慮しておきます」
「なんだよー遠慮すんなよー」
ぎゅー。
「ちょ!?ち、近いです!!」
「喰らえ!ハグ攻撃ー」
「あはは!やっちゃえー」
「ふみゅ、何してるのー?」
「あっ!ひよりん」
にやっ、と小春が少しだけいたずらっぽく笑う。
「ひよりんもぎゅー」
ぎゅー。
「うぅ、何これ〜」
抵抗する様子もなく、そのまま包まれる。
「あっ、でも小春ちゃんあったかくて」
「眠く……くぅ」
「寝ちゃった!?」
「いや、何してるのよあんた達」
少し離れたところから、呆れた声が聞こえた。
気づけば、廊下の真ん中で小さな集団ができていた。
笑い声。
慌てた声。
呆れた声。
まだ始まったばかりなのに、
なんだかもう、前から知っているみたいな距離感で。
少しだけ、不思議な感じがした。
でも、
悪くない。
むしろ、ちょっと楽しいかも。
そう思った、こはちゃんだった。
貴重なお時間ありがとうございました!




