第33話 本物の笑顔
俺さ、ずっと全力だったんだよな。
嫌われんの、普通に怖いし。
一人になるのとか、マジで無理だし。
だから、
とにかく笑ってた。
とりあえず明るくしとけば、
嫌われないかなって。
……いや、我ながら単純かよって感じだけど。
でも、それしか思いつかなかった。
本当はさ、
こんな自分、
ダサいなって思ってた。
無理して笑って、
無理してテンション上げて、
無理して明るくして。
何やってんだろって。
でも、
こはたんは、
そんな俺見て普通に笑うんだよ。
「すごいね!」とか言ってさ。
……いやいや、
何がすごいんだよって思うじゃん。
本当の俺、
全然明るくねーし。
むしろ、普通に静かなタイプだし。
上手く笑えないし。
ノリもよくないし。
どっちかっていうと、
陰キャ寄りだと思う。
多分。
いや絶対。
⸻
中学の頃さ、
言われたことあるんだよ。
「陽向ってつまんない」
「暗いよね」
「ノリ悪」
「つまんねーからさ、あいつ外そーぜ」
……普通にキツくない?
笑えねーって。
まあ、その時の俺、
マジでつまんなかったんだと思う。
何話していいか分かんなかったし、
どうリアクションすればいいか分かんなかったし。
で、気づいたら
一人。
あー、
これダメなやつだなって。
だから決めた。
高校では明るくなるって。
とりあえず明るくしとけば、
何とかなるかなって。
雑だけど。
でも、
意外と何とかなった。
笑って、
ふざけて、
ツッコんで、
ボケて、
テンション上げて。
そしたら、
周りも笑ってくれた。
あーよかったって。
これで一人じゃないって。
ちょっと安心した。
……まあ、
ずっと演技してるみたいで
普通に疲れたけど。
⸻
で、こはたん。
あの子さ、
ズルいんだよ。
何がって、
全部。
明るさも、
優しさも、
距離感も。
ちょうどいいんだよな。
俺の明るさ見て
「すごーい!」
とか言ってくるし。
いや、
それ中身ほぼ作りもんだからな?
って思いながらさ。
でも、
あんなキラキラした目で言われたら
何も言えねーじゃん。
てかむしろ、
ちょっと嬉しいし。
……チョロいな俺。
褒められるたび、
ちょっと苦しくなった。
あー、
これ本当の俺じゃないのになって。
いつかバレたら、
どう思われるんだろって。
絶対ガッカリするだろ。
「なんだ作り物かよ」って。
そんなん言われたら
普通に立ち直れん。
だから、
バレたくなかった。
こはたんには、
特に。
⸻
「明日!!明日屋上で待ってるから!!」
あの時、
普通に焦った。
いやいやいや、
何で気づくの。
そんな分かりやすかった俺?
ポーカーフェイス下手すぎだろ。
……行くかどうか、
ちょっと迷った。
行かなきゃ、
このままでいられるかもしれないし。
でも、
行かなかったら
絶対後悔する気がした。
何となく。
ほんと何となく。
⸻
屋上。
もう放課後終わってる時間。
それでも、
こはたんは普通にいた。
俺見た瞬間さ、
めっちゃ嬉しそうに笑うんだよ。
何その笑顔。
反則だろ。
「ひーくん!!えへへ!やっぱり来てくれた!!」
……帰っててくれてもよかったのに。
そしたら、
知られずに済んだのに。
こんなダサい俺。
「……こはたん、帰らないの」
「ひーくんを待ってたんだよ」
何でそんな真っ直ぐ言えんの。
「俺を待ってどうするの?」
「ひーくんが苦しそうだから。助けたい」
いやいやいや、
何それ。
助けたいって。
そんな簡単に言う?
その真っ直ぐさ、
普通に怖いんだって。
「こはたんはいいよな」
気づいたら言ってた。
「本物の明るさあるじゃん」
「俺と違って」
顔上げる。
「俺、嘘ついてるし」
「明るいフリしてるだけだし」
「人と話すのも普通に怖いし」
「嫌われたくねーし」
「俺さ、中学で言われたんだよ」
「つまんねーって」
普通にショックだったし。
「だからさ」
「笑うしかなかったんだよ」
「明るくするしかなかったんだよ」
「じゃないとまた」
「一人になるし」
……ダサすぎだろ俺。
普通に泣いてるし。
「嘘ついてごめん」
「こんな俺見たら、嫌いになるだろ」
「ひーくん、大丈夫」
ぎゅって抱きしめられた。
距離近っ。
いや今ツッコむとこじゃないな。
「ひーくんはひーくんだよ!」
「優しいところ何も変わってないよ!!」
「ひーくんの明るいところも笑顔も全部本物!!」
……本物?
マジで?
「絶対に1人になんかしないから!!」
「誰がなんて言っても!!」
「私は絶対に」
「ひーくんのこと1人になんかさせない!!」
……強すぎだろこの子。
ヒーローかよ。
「雰囲気悪くならないように茶化してくれて」
「暗くならないようにボケて」
「みんなを明るくしてくれる」
「私が知ってる成瀬陽向君はそんな人」
「間違ってる?」
……反則だって。
そんな言い方。
首振るしかないじゃん。
俺さ、
嘘ついてたわけじゃなかったのかも。
ただ、
頑張ってただけだったのかも。
ばしっ
頬叩く。
痛っ。
よし、
起きた。
笑えた。
ちゃんと。
無理じゃなく。
ありがとう。
こはたん。
君に会えて、
マジでよかった。
作り物じゃなくて、
ちゃんと俺でいられる。
本物の成瀬陽向で、
いられる。
貴重なお時間ありがとうございました!




