第28話 れんれんに会えたよ!
「紫苑ちゃん!お願いします!!」
勢いよく机に身を乗り出す。
「おけ」
静かに、水晶に手をかざす。
淡く、やわらかい光がふわりと広がった。
「ん、屋上」
「すごーい!!ありがとう!!今度何かお礼するからねーー!!」
ぱたぱたと走り去っていく後ろ姿。
「ふふ」
その様子を、紫苑はただ静かに見送っていた。
⸻
屋上前。
「ここだよね!よーし!!絶対一緒に二人三脚するぞー!!」
深呼吸をひとつ。
がちゃ。
扉を開ける。
風がふわりと吹き抜けた。
青い空。
静かな空間。
そして――
そこに、一人の男が立っていた。
金色のメッシュ。
外にはねた少し長めの髪。
首の後ろで軽く結ばれている。
どこか近寄りがたい雰囲気。
でも、
どこか、寂しそうにも見えた。
「あの!!鬼塚君かな!!?」
声をかけた瞬間。
くるっと振り向く。
びくっと肩が揺れた。
目を大きく見開く。
そして――
みるみるうちに、顔が赤くなっていく。
「ええ!?だ、大丈夫!?お顔が真っ赤だよーー!?」
ぴと。
額を軽く合わせる。
ますます赤くなる。
「うーん?熱じゃないかなぁ??大丈夫??」
「お前、名前は?」
ぼそりとした声。
「水瀬小春だよ!!鬼塚君よろしくねー!!」
「小春か、」
少しだけ考えるように呟く。
「いい名前だ!小春」
「ほんとーー!!嬉しいな!!私は鬼塚君呼びでいいかな??」
「好きに呼んでくれ」
「ほんと!!?いいのー??」
「ああ」
「じゃあ!れんれん!!」
一瞬、固まる。
そしてまた、顔が赤くなった。
「おう、好きに呼べよ」
「やったー!!じゃあ、れんれん!よろしくね!!」
「おう」
少しだけ表情が緩む。
「てか、何でここに?小春、授業は?」
「サボった!!」
「ぶはっ、何だよそれ」
初めて見せる、はっきりした笑顔。
「だって!れんれんと会えないからー!!一緒に体育祭でよ!!二人三脚一緒だよ!!」
一瞬だけ、沈黙。
少し考えて、
「……」
「出るのはまあ、いい。でも、条件がある」
「何かな何かな??」
「一緒にいろよ」
「ええ!?そんな事でいいの??勿論だよ!!れんれんと体育祭ー!ふんふんふーん!」
くるくる回りながら鼻歌。
「よし」
ぽん、と頭に手が置かれる。
「練習すんだろ?いつすんの?」
「れんれん!!今日!今日の放課後から!!一緒にしよー!!」
「おう」
また少しだけ笑った。
「えへへ!れんれんいい人!!大好きー!!」
ぎゅー
「は!?ちょ」
「……」
小春から見えない位置で、
小さくガッツポーズ。
⸻
放課後。
「いっち、に、いっち、に!!」
校庭の端。
息を合わせて歩く二人。
最初は少しぎこちなかった足並みも、
すぐに揃っていった。
「やったーー!!すごいよすごーい!!れんれん息ぴったり!!相性抜群だね!!」
「いいコンビネーションだな」
こつん、と軽く拳を合わせる。
「えへへー!嬉しいなー、もしかして一位取れちゃうんじゃない!?」
「もっと練習しとくか?」
「勿論!!やるなら優勝だよーー!!」
「ははっ、そーだな」
くしゃっと頭を撫でる。
「ひゃー!!」
楽しそうな声が響く。
「えーい!わしゃわしゃ返しー!!」
背伸びして、頑張って撫で返す。
少し屈む。
「わあ!!れんれんの髪さらさらー!」
「気に入ったかよ?」
「うん!大好き!!」
「おう、そのまま好きになれよ」
「うん!勿論!!れんれんのこと大好きだよー」
少しだけ、目を細める。
「先がながそーだな」
「んん??何の話ー??」
「何でもねーよ」
空は少しずつ、夕焼け色に染まり始めていた。
体育祭まで、あと少し。
新しい関係が、
静かに始まっていた。
そう思った、
こはちゃんだった。
貴重なお時間ありがとうございました!




