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第27話 体育祭のくじを引いたよ!

「はーい!みんな注目!!」


教室に、よく通る声が響いた。


ざわざわしていた空気が、すっと静まる。


「もう5月だな!体育祭がやってくるぞー!」


その一言で、教室の空気が一気に明るくなった。


「はいはーい!!まこちゃん先生!!何するの!!種目は!?」


元気よく手を挙げる声。


「成瀬落ち着けー!出る種目は先生が書いていくからな!よく見とけよー!」


黒板にチョークの音が響く。


リレー、玉入れ、綱引き、障害物競走……


文字が増えていくたび、クラスのあちこちから歓声が上がった。


「おお!!リレーあんじゃん!!やりたいやりたーい」


「今回はくじだ!平等だろ!」


「まじかよー!!」


「うるさい!」


「あはは、元気でいいなー!よしっ」


先生は満足そうに頷くと、くじ箱を取り出した。


「水瀬から引いてくれ!」


「はいはーい!1番前の席のこはちゃんいきまーす!!」


くすっと笑いが広がる。


小春はわくわくした様子でくじに手を入れた。


「そりゃー!!」


ぴらり。


「二人三脚だーー!!誰となるんだろ??」


「こはちゃんと二人三脚できるなんて最高すぎるでしょ!!私がやるわ!!」


「いや、これくじだから」


「熱血ー」


順番にくじが引かれていくたび、教室のあちこちで歓声や落胆の声が上がる。


体育祭に向けて、クラス全体の空気が少しずつ盛り上がっていくのがわかった。


「んじゃっ!これでみんな決まったな!がんばろうなー!!」


「はーい」


返事が揃う。


どこか楽しそうで、少しだけ緊張も混じった声だった。



「あー、どうしようかなー??」


くじの紙を見つめながら、小春が首をかしげる。


「何が?」


「私のペアの相手だよー!鬼塚君、会ったことないよ!!どんな人ー??」


「知らない」


あっさりとした返事。


「榊原君も知らないんだね!!みんな知らないのかなー??」


「占うー?」


「ええ!?居場所わかるのー??」


どん、と机の上に水晶が置かれる。


「超能力じゃないそれ」


「……」


「どうかな?どうかな?」


「……いない」


「ええ??消えちゃったー!??事故!?」


「学校にいない」


「一体どこにいるんでしょうか?」


「……謎、すぅ」


「そうですね、って!寝ないでください!!」


「すぅ、すぅ」


「もう、見慣れてきたわ」


「起きてる方がレアだよね」


「何を騒いでるんだ」


「いっしー」


「おい、俺は石田だ。こうだの、いっしーだの変なあだ名をつけるな!」


「ええ??いいじゃんー!つれないなー」


「ふぇ!!どうしよう!会えなかったら本番まで練習もできないよお!!」


「全く、こはちゃんを困らせるなんてどんな奴なのかしら」


「誰も見た事ないですもんね」


「藤沢先生が言っていたが。学校には一応、来ているらしい」


「そうなの!?どこかにいるのかなー??」


「まあ、朝だけ来ていたりと割と自由に登校しているみたいだ。はぁ、不真面目な奴だ」


「でもでも!ちゃーんと毎日学校には来てるからいい人だよ!!絶対いい人!!」


「こはちゃんがいうならそれが正しいわね!」


「いや、どうして?小春ちゃんが絡むとそんなにポンコツになるの??」


「んー、朝に占うー?」


「よーし!!じゃあ!明日の朝!!お願い!!紫苑ちゃん!!」


「おけまる〜」


「でも、どんな人かもわからないのに会いに行っても平気なんでしょうか?」


「大丈夫だよ!透ちゃん!!いい人だよー」


「あは、心配にしかなりません」


呆れたように笑う。


「……」


何か言いかけて、やめる。


「それなら!一緒に探すぜー!こはたん捜索隊始動開始!!」


「うーん、ひーくん。」


少しだけ考えて、


小春はゆっくり顔を上げた。


「気持ちは嬉しいけど、きっとクラスに来れないのには訳があると思うの。」


教室の空気が、ほんの少しだけ静かになる。


「だから1人で行く!!その方が安心してもらえると思う!!嫌な思いさせたくないしね!!」


真っ直ぐな言葉だった。


「こはたん!!いい奴すぎんだろ!!」


「ひーくんもね!みんな!協力してくれてありがとうー!!私!絶対に鬼塚君にあってみせる!!」


「こはちゃん!!」


「ふふ、小春ちゃんらしいね」


「いや、何だこの展開。クラスメイト探すだけだろ」


「雰囲気クラッシャー、いっしー」


「は?」


「あー、落ち着いてください!!」


「ふぴ、すぁ」


「……変な奴ら」


少しだけ、笑った気がした。



場所は変わる。


人通りの少ない路地裏。


薄暗い影の中に、一人の男が立っていた。


金色のメッシュ。


外にはねた髪。


少し長めの髪を、首の後ろで結んでいる。


足元には、倒れた男たち。


静まり返った空気の中で、


ただ靴音だけが響いた。


コツ


コツ


振り返ることもなく、


彼はその場を後にする。


まるで、


何もなかったかのように。



体育祭まで、あと少し。


まだ知らない出会いが、


静かに近づいていた。


そうとは知らずに、


小春は今日も、


誰かを想っていた。


そう思った、


こはちゃんだった。

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