第19話 音楽の授業に行ったよ!
「うわー!次は音楽の授業だよーー!!やったね榊原君!!楽しみだなー」
小春がくるっと振り向くと、隣の席の蒼真と目が合った。
「……」
一瞬だけ視線が合って、
小さく頷く。
「ん」
それだけなのに、なんだか少し嬉しい。
「移動教室ー!!よーし!いっくぞーー!!」
元気よく立ち上がる小春につられるように、蒼真も静かに席を立つ。
「だるー、音楽めんど」
後ろから気だるそうな声。
長い銀髪を揺らしながら、紫苑が立ち上がった。
「ええ!?歌えるし演奏もできるよ!!楽しいよ!!紫苑ちゃんも楽しもーー!!」
「ウケる、うぇーい」
「いや、チグハグテンションすぎ」
桃花が小さく突っ込む。
「桃花ちゃんの歌が聴けちゃうね!!前に歌を歌うって言ってたし!!聴きたい聴きたーい!!」
「ふ、ふん。し、仕方ないから聞かせてあげる!」
「やったー!!何のお歌を歌うのかなー」
「ふんふふーん」
「ばりテンション上がる」
「1ゲージも上がってないよ」
「移動するだけで、何でそんな騒ぐんだよ」
「石田君!!移動だよ!移動ー!!楽しいね!」
「いや、ただの移動なんだが」
「よーし!音楽室へレッツゴー!!」
ぴた。
「ところで、音楽室どこー??」
「知らないのかよ!?」
「だって!!まだ4月だよ!!覚えられないよー!!」
「お前、あれだけ動き回ってるのに」
「みんなで行けばよくね?」
「それだ!!紫苑ちゃん頭いい!!それなら迷子にならないね!!」
「やったー、褒められた」
棒読み。
「うう、何このメンバー」
「行かないの?」
蒼真が小さく声をかける。
「榊原君!行こう行こう!!冒険だよー!!」
「いや。移動教室」
「小春ちゃんにとっては大冒険だね」
「よっしゃー!!参戦参戦!!」
「ひーくん!!よーし!!行くぞー!!」
「遠足じゃないのよ」
「玲奈ちゃん!!冒険だよ!!音楽室への旅!!」
「こはちゃんがそういうならそうね!」
「いや、違うからね??」
「ウケる」
「なんだか、大所帯になってますね」
透が苦笑する。
その隣では、ひよりがふらふらしている。
「うみゅ、すぅ」
「透ちゃん!ひよりん!行くよー!!」
「ふふ、目指せ音楽室へ!ですね」
「そうそう!!ゴーゴー!!」
「すぅすぅ」
「えーと、ひより?起きてくださーい」
「毎度毎度よく寝れるわね」
「ふふ、ひよりは寝ることが大好きなんです」
「そいつが起きてるとこ、見たことないんだが」
「確かに」
「寝てる可愛いウケる」
「何なの?短歌??」
「紫苑ちゃんのお歌上手ー!!負けないよ!ふんふーんふーん♪」
「可愛すぎて草」
「それには同意するわ」
「いや、こはちゃんのことになるとポンコツなの何でなの?」
「お前ら、静かに歩けよ!!」
⸻
音楽室。
木の香りがほんのり漂う、少し静かな空間。
ピアノの黒い表面が光を反射している。
楽譜が並び、どこか特別な雰囲気があった。
先生が教室を見回す。
「今日は簡単に音を出してみましょう」
そして、視線が止まる。
「榊原くん、吹奏楽部でしたね。せっかくなので少し演奏をお願いできますか?」
教室がざわっとする。
蒼真は少しだけ間を置いてから、
静かに頷いた。
フルートを持つ姿は、いつもより少しだけ大人びて見えた。
透き通るような音が、教室に広がる。
やわらかくて、澄んでいて、
静かなのに、よく響く音。
自然と、みんなが聴き入っていた。
演奏が終わると、小さな歓声が上がる。
「榊原君!上手だねー!!前聞いた時も思ってたけどやっぱり綺麗な音!!水色!」
「何よそれ、こはちゃんらしいけど」
「ウケる、モテモテじゃん」
「まあ、あの容姿でフルート吹いたら沸くわよねー」
「何が沸くの??お湯??」
「この話のどこにお湯の要素あったのよ」
「ニブチン」
「ええ!?何それ!?あだ名ーー??」
「天然記念物」
「保護対象よ」
「り」
「せんせーい!!お歌も歌いたーい!!はいはい!!こはちゃん歌います!!」
「水瀬さん、積極的でいいですね。ではみなさん、ピアノに合わせて歌ってみましょう」
「はーい!!」
ピアノの音に合わせて、歌声が重なる。
思っていたよりも、みんなの声はよく響いた。
教室の空気が、少しだけ明るくなる。
「ううーん!!歌うの楽しい!ねー!桃花ちゃん」
「そうだね、歌うとスッキリする」
「白石さん上手いわね、驚いたわ」
「ももちー、歌歌うの好きって言ってたし本当だったな!!」
「や、やめてよ。うぅ」
「でもでも!私も歌えるよ!!玲奈ちゃん聴いて聴いて!!」
元気いっぱいに歌う小春。
「ふふ、元気いっぱいこはちゃん可愛い」
「それな」
「すぅ、ふみゅ」
「うー、可愛いじゃなくて上手いって言ってよーー!!」
「可愛いし上手い!こはたん最高!!」
「ひーくん!!ありがとうー!!!」
「ふふ、素敵な歌声でしたよ」
「透ちゃん!!みんな!!嬉しいなー!!」
「いや、授業中に騒ぐな!!」
笑い声が、静かな音楽室に広がった。
新しい席になって、
新しい人とも話すようになって、
少しずつ、毎日がにぎやかになってきた。
音楽って、
みんなでやると楽しいんだな。
これからも、こんな時間が増えたらいいな。
そう思った、
こはちゃんだった。
貴重なお時間ありがとうございました!




