第1話 委員長が決まったよ!
「はーい!みんな注目ー!!」
明るい声が教室に響いた。
さっきまでざわざわしていた空気が、ゆっくりと前へ向く。
「今日は、クラス委員と!みんなの委員会決めをしていくよー!」
入学式を終えたばかりの教室は、まだどこか落ち着かない空気が残っている。
制服も、机も、周りにいる人たちも、全部がまだ少しだけ新しい。
ふわっとした明るい茶色の髪が揺れて、元気な声が後ろから飛んできた。
「おお!何にしよう!!」
「こはたん!何する何する?」
背中越しに声をかけられて、小春は椅子を少し回す。
「ひーくん、まだ何委員があるかわかんないよー」
「あっ、確かにー!まこちゃん先生!続けてー」
「成瀬は元気がいいなー!先生好きだぞー」
先生はチョークを手に取り、黒板へ向き直る。
「じゃあ、黒板に書いていくから見とけよー!」
白い文字が、黒板の上に並んでいく。
体育委員、放送委員、文化委員、保健委員……
聞いたことのあるものから、あまり馴染みのないものまでいろいろある。
「委員会決めてく前に、クラス委員決めないとね」
「誰か立候補はいるかなー?」
しーん。
一瞬で教室が静まり返る。
さっきまでの賑やかさが嘘みたいだった。
誰も手を上げない。
「はいはい!まこちゃん先生!!」
元気よく手が上がる。
「おや?成瀬、立候補かな?」
「違うってー!」
椅子がガタッと鳴る。
「俺、こうがいいと思う!真面目そうだし!」
「……は?」
突然あだ名で呼ばれた男子が、ゆっくり顔を上げる。
どうやら陽向の中では、もう「こう」で決定しているらしい。
きっちり整えられた黒髪に、落ち着いた雰囲気。
いかにも真面目そうで、しっかりしていそうな印象の男子だった。
「見るからに真面目じゃん!絶対できるって!!」
「いや、勝手に決めるな」
「ツッコミもできるし!いけるって!」
「委員長にツッコミは関係ないだろ」
ぐいぐいと話が進んでいく。
「こはたん、こうでいいよね?向いてると思わない?」
(話したこともないけど、確かに真面目そう!!)
「うん!真面目そう!!」
「だよなだよなー」
おさげの髪を揺らしながら、玲奈が少し呆れたように笑う。
「あんたら、人のこと決めつけすぎよ」
「えー?あ!玲奈ちゃんがやるー?」
「先生!石田くんでいきましょう!」
「いや、待てなんで??」
「確かに」
「石田で良さそうだよな」
周りから賛同の声が上がる。
ぱち、ぱち、と拍手が広がった。
「じゃっ!石田!決定な!!」
「俺の意見は!?」
小さくため息をつく。
「……なんでこんな目に」
しぶしぶ前へ出る姿に、すでに苦労人の雰囲気が漂っていた。
背筋を伸ばして立つ姿は、やっぱり真面目そうに見える。
黒板の前に立ち、軽く咳払いをする。
「じゃあ、決めていくぞ」
チョークで黒板を軽く叩く。
とん、と乾いた音が響く。
「一個ずつ言っていくから、やりたいとこで手を上げろ」
「はいはーい!!やりたいやりたーい」
「俺もこれがいい」
「ええー!私も!!」
一気に教室が騒がしくなる。
「……駄目だ、効率悪い。」
小さく息を吐く。
「藤沢先生、くじで」
「え?」
「くじで」
「あっ、うん!作ってきまーす」
「ええ!?くじー??」
「その方が効率的、あと平等」
「確かに!石田君頭いいー!!」
「いや、頭いいとかより面倒くさいだけじゃないのあれ?」
「ええ?みんなのこと考えてくれてると思うなー」
「こはちゃんいい子」
少しして、先生が箱を抱えて戻ってくる。
「はいー、お待たせー」
「ありがとうございます」
「いいの、いいの!こんなのちょちょいのちょいよ!」
箱の中で紙が軽く揺れる音がする。
「じゃあ、くじ前の席から」
「水瀬さん、引いて」
「わあ!一番乗りー!」
箱の中に手を入れる。
紙の感触が指先に触れる。
少しだけ迷ってから、一枚つまんだ。
「んー!これっ!!」
「こはたん!なんだった!?」
すぐ後ろから声が飛んでくる。
「放送委員!?滑舌気をつけないとー!?」
「こはちゃんの声、毎日放送で聴けるとか最高ね」
「確かにー!こはたん可愛い声してんもんな!」
「おい、話してないで早く引け」
「あっ、ごめん!!こうー怒んないでー!!」
「はぁ」
深いため息が聞こえる。
(可哀想に、苦労人タイプね。)
「これっ!!」
紙を掲げて嬉しそうに笑う。
「ひーくんなんだったの?」
「ふふ、じゃーん!」
「体育委員!!」
「いやー、運がいいなー!!」
「やりたかったからラッキー」
「んっ、これかな」
紙を開く音。
「玲奈ちゃんはー?」
「体育委員」
「れいれい!一緒じゃん!よろしくー」
「うん、よろしく」
「いいなー!!」
教室のあちこちで、くじを開く音と小さな歓声が続いていた。
知らない名前ばかりだったクラスに、少しずつ色がついていく。
笑い声や、ため息や、楽しそうな声。
まだ少しだけ距離はあるけれど、
それでも確実に、同じ場所にいる感じがする。
なんだか、いいクラスかもしれない。
楽しい一年になるといいな。
そう思った、こはちゃんだった。
読んでいただきありがとうございます!
興味を持っていただけただけで嬉しいです。
お時間ありがとうございました!




