第17話 みんなでお昼食べたよ!
「おっ昼!おっ昼!!ごーはん♪」
待ちに待ったお昼休み。
小春はスケッチブックを片付けると、ぱっと立ち上がった。
ポニーテールがぴょんと揺れて、星の髪飾りがきらりと光る。
「今日は何食べよっかな〜」
そんなことを言いながら教室を見渡すと、ちょうど見慣れた元気な姿が目に入った。
「あっ!!ひーくん!!」
「ん?おお、こはたん!!」
「ひーくんひーくん!ご飯たーべよ??」
(こいつ、ほんとに1番に誘ってきた)
陽向が少し嬉しそうに笑う。
「おう!!食べよーぜ!みんなを集めに行くぞ!こはたん!!」
「やったー!!さっすがひーくん!!」
るんるんるーん。
気づけば二人で鼻歌を歌いながら歩いていた。
ぴったりハモっている。
「……何で鼻歌でハモれるのよ」
呆れたように玲奈が呟く。
「あっ!!玲奈ちゃん!!ご飯食べよーー」
「れいれいみっけ!!」
「小学生なの??」
「うーん、後のみんなはーー」
きょろきょろと辺りを見回す小春。
「あっ!!榊原君だー!!」
だっと駆け出す。
廊下の窓際に、静かに立っていた蒼真がこちらを見る。
「水瀬」
「ねーねー!!一緒にご飯食べよー!!みんなで食べた方が楽しいよー!!」
「え?嫌」
即答だった。
「そんなーー!!一緒に食べたい!!あっ、でも嫌なら仕方ないよね」
「無理言ってごめんなさい」
ぺこりと頭を下げる。
「……」
蒼真が小さく息をつく。
ぐい、と小春の顔を上げさせる。
視線が一瞬合って、すぐ逸らされる。
「……食べる」
「ほんと!!ほんとにほんと!!?」
「ん」
「わーい!!やったー!!榊原君も一緒だーー」
くるくる回る。
それを見て、蒼真の肩が小さく揺れた。
「ふっ、変なやつ」
「笑った笑ったー!!」
「何してるのあれ?」
「仲間勧誘の儀式!!」
「は?」
「2人ともー!!榊原君も一緒に食べてくれるってー!!」
「良かったわね、こはちゃん」
「おーし!!仲間が増えたな!!次行くぞ次!!」
「おおーー!!!」
蒼真は何も言わず、小春を見ている。
(ふーん?なるほどねー)
玲奈がにやりと笑う。
(そういう感じ?面白いわね!!)
「あっ!!ひよりんと透ちゃん!!」
「あ、水瀬さん」
透の隣では、ひよりがうとうとしている。
ゆさゆさ。
「ぅん、??」
「小春ちゃん、こんにちは〜」
「2人とも!一緒にご飯にしよーー??」
「わあ、いいですね参加します」
「すぅ、ふみゅ」
「やったー!!2人ともありがとう!!行こう行こう!!」
「ひよりちゃん語、習得してるわね」
「うーん、俺にはまだまだわかんねぇ」
「こはちゃんにしかわかんないわよ」
「はは、確かに!こはたんらしい!!」
「……」
「あっ、榊原さん。こんにちは」
「どうも」
「水瀬さんとお友達になられたんですか?」
「断ったら、悲しそうだったから」
「ふふ、そうなんですね。」
「……」
「大丈夫ですよ、水瀬さんは」
「ふっ、そうだな」
「あれあれ??2人とも知り合い??仲良しさん??」
「中学が同じなんです」
蒼真がこくりと頷く。
「そうだったんだ!?いいなー!!まあ!私には玲奈ちゃんがいるから大丈夫!!」
ぎゅー。
「ふふ、こはちゃんったら」
なでなで。
「いーなー!俺、同じ中学のやついないから羨ましい!!」
「ええ??そうなの?ひーくんお友達いっぱいいるのに!?」
「同中いなくても充分でしょあんたは」
「あっ!!こう!!」
「は?何」
「石田君だー!!ご飯食べよー!」
「え?何で?お前らで食えばいいだろ」
「石田君とも食べたい!!」
「誰と食っても一緒だろ」
「全然違うよ!!ね!食べよー??」
(何でこんな目に!?)
(てか、何でこんな懐かれてんの!?)
「観念しろよー!こうなったこはたんは誰も止められないぜー??」
「諦めなさい」
「いや俺、勧誘される側だよね??」
「ふふ、水瀬さん包囲網ですね」
「何だそれは」
「すぅ、すぅ」
「は?俺の意思は?」
「ない!!」
「言い切るな!!」
「よーし!石田君も一緒だーー!」
「いや!一言も言ってない!!」
「あとは白石さんね」
「おーーい!!桃花ちゃーーん」
「ご飯食べよーー!!」
「いや、そんな叫んだところで」
「べ、別に待機してたわけじゃないからね!!」
「あはっ!待たせてごめんね!!いこいこー!!」
「どこにいたのよ!?」
「さあ??」
「わかってないのに受け入れるこはちゃん」
「みんなでご飯だ!らんららーん」
ウキウキと歩く。
気づけば、自然と全員が集まっていた。
最初は少し遠かった距離が、
いつの間にか当たり前のように近くなっている。
⸻
昼休み。
机をくっつけて、わいわいとお弁当を広げる。
「わあ!!玲奈ちゃんの美味しそう!!」
「ふふ、食べる?いいわよ」
「やったーー!!」
「こはたんは手作り??兄ちゃん??」
「ふふーん!今日はこはちゃん特製でーす」
「おお!!卵焼き成功してんじゃん!!」
「そうなの!!ひーくん食べて食べてー!!」
「はい!あーん」
「え!?あ、あーん?」
ぱく。
「おお!!上手い」
「ふふん!!上達成功!!」
「いや、距離感どうなってんのよ」
「ん?友達ー!!」
「距離近いよ、充分」
「桃花ちゃんも食べるー?あーん?」
「べ、別に食べたいなんてお、思ってないし!」
「食べたかったのね」
「ふふ」
「う、うぅ。」
「ももちー、照れ屋だからなー」
「可愛いもんねー」
「ちょ、や、やめて!!」
「揶揄いすぎたわ、ごめんね」
「あ、えと、ううん。大丈夫」
「すぅ、ん」
「ひよりんお腹すいたー?食べる??」
「何で当然のように膝枕してるわけ??」
「居心地良いみたい!!嬉しい!!」
「こはちゃんが嬉しいなら良いわね!」
「いや、おかしいから」
「榊原さん、手作りですか?」
「まあ、一応1人だし」
「あっ、そうでしたね。すみません」
「何で?謝んなくていいよ」
「そーちんの美味そうじゃん!!分けてよー」
「そーちん?」
「蒼真だろ?そーちん!」
「はぁ、ん」
「やったー!選んでいい感じー??」
「早く取れよ」
「意外と話すのね」
「……」
「榊原君!!私も私も食べたーい!!」
「どれ?」
「何が食べていいやつー??」
「どれでも」
「やったー!!じゃあ、タコさんウインナー」
ぱく。
「……ふっ」
「……」
透が、そっと蒼真を見る。
そして小春を見る。
(何でもやもやしてるんだろ?)
「騒がしい」
「ええ?さっき笑ってたくせに」
「笑ってない」
「いや、笑ってたよ」
「俺に何の恨みがあんだよーー!!」
笑い声が広がる。
少し前までは、こんな風に集まることなんてなかったのに。
気づけば、
みんなでご飯を食べるのが当たり前みたいになっていた。
楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。
こうやって笑い合える時間が、
なんだかすごく嬉しい。
みんなで食べるご飯って、
やっぱり美味しいな。
そう思った、
こはちゃんだった。
貴重なお時間ありがとうございました!




