第13話 雨の日にみんなで帰ったよ!
「ええ!?今日って雨降るの??」
朝の教室で、小春が驚いた声をあげた。
「うん、降水確率90%」
玲奈がスマホを見ながら答える。
「ええ!!絶対降るやつ!!」
慌てた様子で立ち上がる。
「やばいどうしよ、傘持ってきたっけ……」
ぶつぶつ言いながら廊下へ向かうと、
見覚えのある黒髪の姿が目に入った。
「あっ!榊原君!!おっはよーー!!」
ぴたり、と足を止めて声をかける。
蒼真は一瞬だけ視線を向けて、
小さく会釈をした。
それだけ。
でも。
今日は少しだけ、目が合った気がした。
「ばいばーい」
手を振る小春。
「何あれ?挨拶ぐらい返せばいいのに」
玲奈が小さく眉を寄せる。
「ええ?会釈してくれたよー?挨拶じゃん?」
「こはちゃんがそれでいいならいいけど」
「今日は目も合わせてくれたよ!!榊原君はいい人!!」
「私なら挨拶できないわ、なんで挨拶してるの?」
「玲奈ちゃん、挨拶は礼儀だよ!大切ー!!」
「まあ、そうだけど。返してくれないとしたくなくなるじゃない」
「うーん、言葉じゃなくてもいいんだよ!」
「会釈してくれるだけでも!挨拶、受け取ってくれてるもん!!」
玲奈がふっと優しく笑った。
「ほんと、いい子なんだから」
⸻
ざー。
放課後。
窓の外は、朝の予報どおりしっかり雨が降っていた。
「ふぇー!!雨ー!!」
小春が窓に顔を近づける。
「なんだよこはたん、雨ぐらい降るだろ??」
「今日、傘持ってきてないのーー!!」
がくん、と膝から崩れ落ちた。
「え??水瀬さんどうしたんですか??」
「とーやん、こはたん傘忘れたんだって」
「あっ、それなら僕の傘入って帰りますか?」
「俺のでもいいぜ!!こはたんカモーン!」
「2人とも!!優しい!ありがと!体分裂して2人の傘に入る!!」
「無理に決まってるでしょ」
「玲奈ちゃん!!」
「ちなみに、私の傘に入るよね??」
「うーん、じゃあ!3人に分身する!!」
「なんでよ!?」
「透〜」
「ひより、どうしました?」
「おんぶ」
「えーと、雨だから流石に無理かと」
「むぅ、寝る」
「いやいや!寝ないでください!?」
「ひよりんは傘持ってきてるのー??」
「すぅ、すぅ」
「ふぇー!!私だけ持ってきてない!!」
「いや、天気予報で雨だって言ってたじゃん?」
「今日は寝坊して見てなかったのー!!」
「あちゃー、そりゃ忘れるわ」
そこへ。
「みんなで何してるの?」
「桃花ちゃん!!傘忘れたー!!」
「はぁ!?今日、雨だってみんな知ってるわよ」
「寝坊したんだもーん!!」
桃花が少しだけ困ったようにため息をつく。
「うーん、そういうとこ小春ちゃんらしいかも」
「それな!ももちー、わかってるー!」
「は、はぁ!?か、勘違いしないでよね!別に仲良くなんてないから!!」
「いや、仲良しじゃん」
「う、うぅ。わ、私、塾あるから!!ばいばい!!」
「桃花ちゃん!ばいばーい!!また明日ねー!!」
「うん!」
いつもより、少しだけ明るい声だった。
「白石さん、明るくなったわね」
「桃花ちゃん、緊張が解けてきたみたい!嬉しいな!!もっと仲良くなりたーい!」
「こはちゃんならできるわよ」
「玲奈ちゃん!!」
⸻
昇降口。
外は土砂降りだった。
「ざーざーだよー!!」
「おー!!土砂降りー!走ってくー?みんなで濡れれば怖くねーぜ!」
「馬鹿なの?風邪引くわよ!」
「ひより、起きてください。帰りますよー」
「ふみゅ、めんどくさい」
「あーあー、雨やだなー。絵にするならいいけど」
「デッサンしながら帰る??」
「それだ!!ひーくん賢い!!」
「スケッチブックがぐちゃぐちゃになるだけよ!!」
「あっ、そっか!濡れちゃうねー!!」
「何この馬鹿コンビ」
「ふふ、雨でも濡れない紙あれば素敵なんですけどね」
「透君天才だよ!!そんな紙があればいくらでもお絵描きできちゃうね!!」
「水瀬さん、あくまでもたとえですよ??」
玲奈が傘を広げる。
「帰りましょ、こはちゃん入る?」
「こはたんこはたん!俺の方が身長あるぜ!濡れないぜ!」
「あっ!確かにー!!」
「そういえば、あんた背高いわよね何センチ?」
「176センチ!!」
「うわぁ!!高ーい!!」
「こはたんは小さくて可愛いな!」
「うぅ、まだまだ!成長期はこれから!!」
「こはたん何センチなん?」
「152センチ!!」
「可愛い!理想の身長よね!」
「ええ、もっと高くなりたかったー!」
「ああ、じゃあ。今度おんぶでもしましょうか?肩車の方がいいですかね?」
「楽しそう!!肩車!あっ、でも私重たいかも!?痩せなきゃ!!」
「こはたん太ってないだろ?気にすんなよ」
「無理なダイエットはしない方がいいわよ」
「僕はこう見えて筋肉ありますから、気にしないでください。それにほら、ひよりをいつもおんぶしてますし」
「そのせいで筋肉ついてんじゃない」
「そう、かもしれません」
「ひよりん筋トレ!!楽しそう!!私もひよりん背負えばムキムキに!?」
「いや、こはちゃんがムキムキになってどうするのよ!」
雨の音の中でも、
いつも通りの会話。
なんだか少しだけ安心する。
特別なことがなくても、
こうしてみんなで帰る時間があるだけで、
十分楽しいのかもしれない。
雨はちょっと苦手だけど。
こういう帰り道なら、
たまには悪くないかも。
そう思った、
こはちゃんだった。
貴重なお時間ありがとうございました!




