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第9話 透ちゃんと放課後お絵描きしたよ!

「あー!もう放課後ー??」


教室に残る夕方の光の中、小春はぐーっと背伸びをした。


オレンジ色の光が、机や床をやさしく照らしている。


新しいクラス。

新しい友達。


まだ数日しか経っていないのに、もうずっと前から一緒にいるような気がする。


「みんなと仲良くなれて嬉しいなー!目指せ友達100人!!」


そんなことを言いながら教室へ戻ると、まだ残っている人影があった。


「あれー??透ちゃん!!」


「あっ、水瀬さん」


振り向いた透が、ふわっと柔らかく笑う。


夕日の光を受けて、銀色の髪がやわらかく輝いた。


整った顔立ちは、静かな空気によく似合う。


机の上には、大きなカメラが置かれていた。


黒くてしっかりした形。


なんだか特別そうな雰囲気がある。


「何してるのー?もうすぐ下校時間だよ??」


「カメラを調節してました」


「わあ!!凄い凄い!!これって高いやつ!!」


思わず身を乗り出す。


「ふふ、お父さんが買ってくれたんです」


「素敵なお父さんだね!!透ちゃんみたいに優しいんだろうなー」


「僕、優しいですかね?」


「優しいよ!!私の絵も褒めてくれるしー!」


「透ちゃんのことだーいすき!!」


「え、えと。ありがとうございます」


「こちらこそ!!」


透が少しだけ困ったように笑った。


「あ、そうだ。これを」


そっと差し出されたのは、一枚の写真。


「わあ!!綺麗な桜!!」


淡い色の花びらが、やわらかな光の中で揺れている。


春の空気まで伝わってきそうな一枚だった。


「前に、僕が撮った写真で絵を描きたいとおっしゃっていたので撮ってみました」


「凄い凄い!!きれー!!任せて透ちゃん!!」


小春はすぐにスケッチブックを取り出した。


「え?今から描くんですか??」


「ビビッと来たから描く!!」


さらさら、と鉛筆が走り始める。


教室の中が、少しだけ静かになる。


夕日の光の中で、小春の横顔がやわらかく見えた。


(……綺麗)


透は、小春の横顔をそっと見つめていた。


「ここは、こうで」


さらさら。


(水瀬さん、本当に絵が好きなんだな)


「しゅっとやって、ここはばーんで」


「ふふ」


「ん?どうしたのー?」


「いえ、好きなことに真っ直ぐな人なんだなと思っていただけです」


「えへへ!それをいうなら透ちゃんもだよ!」


「僕も?」


「だって、私が描きたいって思いつきで言ったのに」


「本当にこうやって撮ってきてくれるんだもん!!」


「透ちゃんのそういうところ大好き!!」


「ひよりんの事もそうだけど、透ちゃんは本当に優しい!!」


「そう、ですかね」


透が、少し照れたように笑った。


「でも、喜んでもらえて嬉しいです」


「えへへ!よーし!完成させるぞー」


「はい、頑張ってください」


さらさら。


鉛筆の音だけが、静かに続く。


(ほんと、真っ直ぐな人)


(大好き……か)


「透ちゃん!!」


「は、はい!!」


「じゃじゃーん!!どう?どうかな??」


スケッチブックを嬉しそうに掲げる。


「わっ、凄い!あれ、僕まで描いてくれたんですか?」


「うん!!透ちゃんのこと大好きだし、素敵な写真用意してくれたから!!」


「あ、嫌だった?ごめんね?」


「いえ、そうじゃなくて」


「嬉しいなって、思って」


透は絵をじっと見つめた。


優しい線。


やわらかい色。


写真の空気まで再現されている。


「ほんと!?えへへ」


透は、少しだけ目を細めた。


「水瀬さんは凄いですね」


「何がー?」


「真っ直ぐで、皆さんから好かれていて」


「それは透ちゃんもだよ!」


「え?」


「だって!私もひよりんもひーくんも玲奈ちゃんも桃花ちゃんだってぜーったい!」


ぐいっと距離が近づく。


「透ちゃんの事大好きだよ!!」


「……っ」


透が少しだけ視線を逸らす。


夕日が横顔を照らす。


「その、ありがとうございます」


(眩しすぎて、なんだか不思議な気分)


「あれ?そういえばひよりんは?」


「ひよりならそこです」


透が指さした先。


「寝てる!!」


窓際の席で、気持ちよさそうに眠っている。


ふわふわした髪が頬にかかって、穏やかな寝顔だった。


「起こしても起きなくて、仕方なくカメラを調節してました」


「あはは、透ちゃんらしい!!」


「透ちゃんとひよりんってお友達の域超えてるよね!!家族みたい!」


「家族……」


透が少しだけ考える。


「ふっ、そうですね。僕たちは幼馴染ですけど、家族のようなものです」


「いいなー!透ちゃんみたいなお兄ちゃん!!」


「ふふ、水瀬さんが妹だったら毎日楽しそうですね」


「あはっ、素敵!!素敵な家族になれそう!!」


「そ、そうですね」


(僕らだったら兄弟じゃなくて……)


はっとして、小さく首を振る。


(いやいや、何考えてるんだろ)


「おーいひよりーん!!帰ろうよー」


「ぅん、小春……ちゃん??」


「透ちゃん帰れなくなってるよー?」


のそっ。


ひよりがゆっくり立ち上がる。


まだ少し眠そうだ。


「ん、ごめん」


「いいですよ、いつもの事ですから」


「歩くの、めんどくさい」


とてとて近づいてくる。


「透、おぶって?」


「いや、自分で歩いてください」


「や、すぅ」


「おぶらないと学校泊まるって言ってるよー??」


「それは困ります、はぁ」


よいしょ、とひよりを背負う。


慣れている動きだった。


「私も一緒に帰ろーっと!!」


「ふふ、はい。帰りましょう」


「すぅ、すぅ」


夕焼けの廊下を、三人で歩く。


オレンジ色の光が、ゆっくりと影を伸ばしていく。


なんだか少しだけ、ゆっくりな帰り道。


静かな時間も、


こういうのも、


悪くないかも。


そう思った、


こはちゃんだった。


貴重なお時間ありがとうございました!

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