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【番外編 その8】マルゲリータさん、あのとき何があったんですか?
「お慕い申しておりま……ん……」
なぜ最後まで言わせてくださらないのですか。
マルゲリータの証言
……あのとき、何があったのか、と聞かれることがあります。
けれど、わたくしに言葉はありません。
ただ、ひとつだけ確かなのは……
あの方が、約束を「叶えた」ということです。
あの方の手が頬に触れたとき、わたくしはようやく理解したのです。
「誓い」というものは、口で交わすものではなく、息で、温もりで、存在で交わすものなのだと。
わたくしは刃であり、影であり、護衛でありました。
けれど、その瞬間だけは、ただの女として……一人の人間として、そこにいました。
だから、あの言葉の続きを言う必要はなかったのです。
「お慕い申しておりま……」
その先は、唇の温度が語ってくださいました。
お嬢様は、わたくしの頬を包みながら、静かに、あの凛とした声でおっしゃいました。
「……マルゲリータ、あなたはもう護る必要はありません。今度は、わたくしがあなたを護ります」
それが、わたくしの結婚式でした。
祝詞も、証人もない。
ただ風と月だけが立会人でした。
お嬢様にお茶をサーブする。
お嬢様の身支度を整える。
お嬢様とツルツルパンツの布面積で(ガチで)ケンカする。
そんな平凡な日常が、わたくしの幸せでございます。




