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過去私をパシリにしていた男が、エリート社長になって戻ってきたら、溺愛宣言して放してくれません  作者: cheeery


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エラそうな命令


週明けの月曜日。

週明けということもあってか、チェック物がかなり溜まっていた。


とはいえ、ひとつひとつの業務はいつも通りで、周囲の空気も少し落ち着いたように見えた。

そして黒瀬はというと……。


「これ、コーヒーちょっと薄い」


「はい????」


ちょっとご機嫌ナナメだ。


土曜日のことを根に持っているのか、プチイライラ中。

そういうところが子どもだっつってんのに。


とはいえ、お礼もしないのは……と思ったのかその日の夜に律儀に両親との会食に付き合ってくれてありがとうと送ってきた。


本当こういうところがちぐはぐでよく分からない。

そして定時をほんの少し過ぎた頃、黒瀬は言った。


「高梨、もう上がっていいぞ」

「いいんですか?」


「ああ、俺もボチボチ上がる」


あの黒瀬が……?


こんなに早く上がることは今まで一度もなかったような……。


「社員にな、心配されたんだよ。たまには休んでくださいってな。時々早く帰れる時は帰らないと逆にプレッシャーにもなるかと思って」


「そうだったんですね!」


黒瀬は仕事も出来るし集中力もあるので、時間があればなんでもこなしてしまうから、休んでくれると周りも安心だ。


「じゃあお言葉に甘えてお先に失礼します」


私は黒瀬に声をかけると、バッグを手に持ち会社を出た。


早く帰れたのはいいけれど……家に帰ってもテレビを見て過ごすくらいしかないんだよなぁ……。

なんて思っていた時だった。


「莉乃!」


聞き慣れた声に、思わず足が止まる。


視線を向けると、会社の正面玄関から少し離れた植え込みの陰に、圭介くんが立っていた。


──ドクン。


どうして彼がここに……。


「圭介くん……なにやってるの?」


また嫌味でも言いに来たんだろうか。


それとも美咲を迎えに来ただけ?


仕事終わりなのか圭介くんはスーツ姿だ。


「美咲ならもう先にあがったと思うけど……」


そう言って彼の横を通り過ぎようとした時。


「電話、全然出てくれないじゃん」

「えっ?」


「莉乃……メッセージだって既読にならないし、ブロックしてるだろ」

「当たり前でしょ。連絡取る必要もないじゃない」


「そんなこと言うなよ」


圭介くんはなにを言ってるの?


「もう圭介くんの家から荷物だって全部取ったでしょ?言いたいことがあるなら今言って」


「莉乃とちゃんと話そうと思って来たんだよ」


思わず背筋がざわつく。


「なに……」


「あのさ、婚約パーティの時の……あの社長とか言う男はやめた方がいいよ。莉乃きっと騙されてるんだって、いいように利用されて捨てられるだけだ。お金を持ってる男なんて信用しない方がいいよ」


「……圭介くんには、関係ない!」


なにを持ってそんなことを言ってくるの?


騙されてるだなんて……あなたなんかに言われたくない。

けれど、圭介の目は少しずつ鋭くなっていた。


「俺、心配してるんだ。ほら……莉乃はちょっと抜けてるところがあるだろう?だから付け入られるんじゃないかって不安で」


「ちょっ、やめて……」


圭介くんは私の手を掴んできた。


「放してよ!」


「心配なんだよ」


圭介くんの顔が近づいてくる。


気持ち、悪い……。

そう思ったその時。


「触るな」


その低い声に、空気がひやりと冷えた。


振り返ると、黒瀬がいた。


「なにをしている」


「……あんたには関係ない、だろ?」


「関係ない?俺は莉乃の彼氏だ。彼女を守る義務がある。部外者はキミの方ではないかな?」


黒瀬は声を荒げることなく、それでいて一切の隙を与えない口調で言った。


「こんな会社の前まできて、執拗につきまとうような行為は、場合によっては法的対応も視野に入る。それを理解しているか?」


すると、圭介くんの顔色が目に見えて変わった。


「な……なにを……大げさなことを……」


すると、圭介くんは言葉を失ったように立ち尽くし、しばらくしてから舌打ち混じりに踵を返した。

その背中が遠ざかるのを見届けたあと、私はようやく息を吐いた。


「……ありがとう。何度もごめん」


私、ここのところ黒瀬に助けてもらってばっかりな気がする。


黒瀬は私の横に立ったまま、去っていった圭介くんの後を見つめる。


「あいつは高梨に会いにきたのか?」


「うん……美咲は先に帰ったって伝えたんだけど……今日は私と話をしたいみたいで」


「なるほど、厄介なことになったな……」

「ごめんね……」


「お前が謝ることじゃない」


黒瀬はさらりと伝えてくれる。

でも社長という忙しい立場で彼を巻き込んでしまっているのが気が引けた。


「会社周りのパトロールを強化してもらうように言うよ。お前も、なにかある前にすぐ連絡してくれ。じゃあな」


そう言って立ち去ろうとする黒瀬。


もう、帰るんだ。

なんて思ってしまった自分に驚く。


だって黒瀬っていっつも余計なこと言ってくるから。

だから、なんとなく……寂しくなってしまったのかもしれない。


「あ、あの」


その背中を見て、私は思わず引き留めた。


「あのさ……」


立ち止まり、振り向く黒瀬。


「なんだ?」


「お礼……させて」


「お礼?」


「ずっと……してもらってばっかりでなにも返せてないから」


自分でもなにを言ってるんだろうと思った。

でも、なんとなく……黒瀬が来てくれるといつもほっとする自分がいるから。


「あ、まぁ……別に忙しかったらいいんだけど」


慌ててそう伝えると、黒瀬は考えるように黙りこむと言った。


「じゃあ……お前の料理が食べたい」

「えっ」


「作るって言ってたろ……食ってみたい」


それ……!?

ご飯ごちそうしろとかじゃなくて、そういうことなんだ……。


変なの……。


「いいけど……」


それから私たちと黒瀬はそのまま買い物をして黒瀬の家に向かうことになった。


料理を食べたいなんて言ってくるとは思わなったから驚いたけど、簡単な要求で良かった。




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