別離、そして……
「さて、じゃあ行こうか」
施設から出てすぐに、出発を申し出られたところに、俺は待ったをかけた。
地球に落下してきた際に乗っていたサージの中に、忘れ物があるからと、取りに行く時間が欲しかったのだ。勿論、忘れ物などあるはずはないのだが、一つだけやっておきたいことがあった。
「さて、と、動いてくれよ……」
機体が動かないことは既に確認済みだが、緊急用にいくつか外付けの端末類がある。使えそうなものをいくつか拝借した上で、その中の一つ、小型無線機はここに残していく。というかこっちが本命。
「良かった。起動した」
これで誰かに通信を……ではなく、というか、どことも繋がらない。救難信号位は出せるだろうが、助けを求めたいわけじゃない。この無線機には録音機能が付いている。だから、万が一、見つかった時に、俺が先ほど聞いたことを残しておきたい……のだが、先ほど聞いた話が突拍子もなさ過ぎて、そのまま話したところで信じてもらえると思えない。
「おーい、イリア―早くしてよー」
ラデュサもすぐそこで待っている。時間は掛けられない。――だったら出来ることは一つだけだ。この身勝手な選択を、本気で怒って、そして本気で心配してくれる人がいる。彼女にさえ伝われば、それでいい。およそ三十秒ほどの短い記録。そこに全てを託すことにした。
「――――、――――。」
これでよし、と。無事に帰って来られたらなんて言われるだろうか。そんな、未来の淡い希望に思いを馳せ、その場を後にした。
次章へ続く




