想いとは
とても現実とは思えなかった。
からかうように微笑を浮かべ、そのただ中に佇むラデュサ。彼女が包む光は、何かの手品か、それこそ御伽噺の産物だ。
まるで無から有を生み出すかの様に、その時の彼女は神秘的ですらあった。
けれど、その驚きは一時的なものだ。
その光景は、はじめて見る気がしなかったのだ。サラがいつか見せた輝き。今、目の前に起きている事象は、直感的にあの時のそれと同一なのだと理解した。それが意味するところも分かってしまって、言葉にしたくなかったから、何でもないように装った。
「黄色か……」
「色がどうしたんだよ?」
「黄色だなぁって」
「何でお前が驚いてるんだよ…!」
「はじめて見る色だから」
と、何でもないことのように呟いて、その実とても嬉しそうな声音で彼女は続ける。―――そういえば、サラの色は青かったな。
「もう少し驚くかと思ったけど、意外に冷静なんだね」
「ああ……まあな」
「ふーん。つまんないなー」
「お前を楽しませるために、話を聞いてるんじゃないからな」
「ま、それもそうか。とにかく、これは感情の具現化。それは理解してくれた?」
「そう言われても、ただ光ってるだけじゃな……」
そうだね――それじゃあ。と、ラデュサは右手を正面に突き出しエンプトンとやらを前面に展開し始めた。そして脇からちょいちょいと手招きをしてくる。
近付いてこいということだろうが、あからさまに嫌な予感がする。とはいえ、断っても仕方がないので、大人しくラデュサの方へ一歩を踏み出す。つもりだったのだが。
「ぐほあ!」
あまりにも不意のことで情けない声が漏れてしまった。
端的に言うと吹き飛ばされた。3mほど。しかも俺に触れずに。感覚としてはボディーブローを食らった気分だ。全身に衝撃が走り、成すすべなく地に伏した。
「う~ん。予想以上のリアクション、ありがとう。どう?これでただ光ってるだけじゃないって分かってくれた?」
「ああ……分かったよ。出来ればやる前に一言ほしかったな」
大丈夫?と差し出されたを掴んで立ち上がる。けれど、恨み言の1つでも言わなければやっていられなかった。本当にこんなオカルトじみた力が存在するのかと問い詰めたくなる気分だった。
「理解してくれたようで良かったよ。そして、この力がどれほど強いものなのかも身をもって体験してくれたと思う」
「そうだな。こんな力を持った奴に暴れられたら勝てる気がしないよ」
「でしょー。凄いんだーこの力」
「で、結局何が言いたいんだよ」
「?」
「?。じゃない!エンプトンっていう未知の力があるのは分かったけど、それが俺の知りたいこととどんな関係があるっていうんだよ」
「あれ~。イリアってもしかして結構、鈍い?」
「にぶ……!くないとは、言えないかもしれない」
勢いよく出かかった鈍くない!という言葉は寸でのところで急ブレーキをかけた。なんでか、ユウナのかが頭に浮かんだ。空想ユウナは凄く哀れそうな顔をしていた。うん。とてもユウナに謝罪したくなってきた。
多分、凄く変な顔をしている俺を見て、あははー、やっぱりー、とケラケラ笑うラデュサ。本当に調子が狂うなぁ。もう。
「分かった。鈍くていいから、教えてくれよ」
「ははは……分かった……はは、よ」
「いつまで笑ってるんだよ!」
「だってめっちゃ変な顔……はははは」
何だって、俺は素性もよく知らない人にこんなに馬鹿にされないといけないんだろうか……そんなに鈍いのか、俺?
「はは……うん。流石に、落ち着いてきた」
「それは良かったよ」
「じゃあ、にぶーいイリアのために教えてあげる。こんな光、どこかで見たことないですか?」
明らかにからかっている口ぶりだが、今は無視だ。光の既視感でいえば、真っ先に思い浮かんだのはサラだ。サラが初めて戦場に出た時、サラの乗っていたサージが青く輝いていたような気がする。
「サラと……関係があるのか」
と、彼女と同じ顔をした少女に問う。状況からしても答えは明白だ。それでも、問わなければならない。
「ん。そうだね。あの子とも勿論関係ある。だけど、それ以上に大事なことを忘れているんじゃない?」
ピンときていない俺の様子を察して、ラデュサは損壊した機械の破片を使って、床に文字を刻みはじめた。
──EmPhoton




