現実の意味
「ルナ!!」
知れず、その名を呼んでいた。けれど、どうして妹の名前が口に出たのか、朧げな感覚しか残っていなかった。何か大切な、忘れてはいけないことのような気がするのに、掴もうとするほどに、遠く、その在り処は霞んでいく。
「っ………」
頭に手をやろうと腕を上げる。脇腹に鋭い痛みが走り、その動作は半ばで途絶えてしまう。
そこでようやく、自分の置かれていた状況を認識した。
体が重い。宇宙空間とは違う、確かな感覚。重力。
俺は、宇宙での戦いに負けて、地球に落ちてしまったのか。満足に大気圏突入準備も出来ていなかったはずだが、こうして生きている。運が良かった、とすればそれまでだ。けれど、そんな風に片付けていいものではない気がする。
とにかく、生きているのなら、行動しなくちゃならない。まずは今の状況を把握して、何をするべきを考えなければ。
「ダメか…動力がやられてるんじゃ話にならない」
ファコンの起動を試みるが、敢え無く失敗。流石に、こっちまで無事って言うのは都合が良すぎるよな。
だけど、ハッチは何とか開きそうだ。情報を得るためには取り合えず外に出てみるしか無さそうだ。何せ、本当の意味でここがどこなのかは分かっていないのだ。落ちてきたといってみたものの、俺の記憶は宇宙で女の機体に蹴り飛ばされたところで終わっている。勝手にそのまま落ちてきたと想像しているだけで、実際は違うかもしれない。途中で軍の誰かに回収されて、近くのリユーに移送されているかもしれないし、もしかしたらもう死んでいて実はあの世なんて……ことは、ないよな。いくらなんでも。
とまれ、自分の目で確認するに越したことはない。俺はロックを解除して、コックピットの外へと出た。
「……」
そこに広がる景色は想定内で、予想外だった。澄み渡る青空、どこまでも続いていくような緑溢れる大地。遠くには太陽に照らされて輝く海が広がる。――ああ、そうか。これが
「これが、地球、なんだ」
リユーで生まれ育った俺にとって、本物の大地を見るのは初めてだった。特別、地球に憧れていた訳じゃない。でも、何となくだけど、この景色をきっかけに戦争が起きてしまった理由が分かってしまった。リユーに住む俺たちは偽物で、こっちが本物。正しく、そうなのだろうと思えてしまう、そんな感覚。これが、人間の……生き物の故郷なんだな。
と、少しばかり感傷的になってしまったけど、ここが地球だってことは分かった。俺が無事だってことは他の皆も無事だってことで良いんだろうか……?
――イリアは、私が守る
いや、少なくとも、彼女だけは無事とは思えない。
サラ……あの後、どうなったんだ。
「随分見入ってるようだけど、もしかして、結構感じやすいタイプ?」
不意に背中越しに声を掛けられる。
独特な少し掠れた、けれど澄んだ声。
「サラ……」
そう口にしていた。振り返る前に。彼女の声だと思ったから。
「残念。僕はあの子じゃないよ」
けれど、そこにいたのは、いつかのローブの女性。自らを詩人と名乗った不思議な女性だった。




