宇宙に想う Ⅴ
船の到着。つまり作戦の終了を待つこと数刻。状況に変化はない。辺りは依然として闇が下り、敵機の存在は認められない。
何かが起きるのではないかという不安。何も起きなかった時の違和感。その二つを感じながら、ただひたすら数分後の未来を探っていた。
10機のアパレイユを使い潰してまで、果たそうとした目的が、敵にはあるはずだ。その正体が分かるまで僅かの油断だって許されない。
けれど、周囲は未だに沈黙を保ち続ける。不気味なほどに、無を示し続ける。
本当にこのまま何も起こらないかのように。全てが杞憂であるかのように。
「こちら、ミシェルです。聞こえますか」
コックピットにミシェルの声が送られる。ということは、船の通信可能圏内に入ったということだ。それは、つまり。
「これで、終わり……なのか」
「アーデルトさん?どうかされましたか?」
「いや、何でもないよ」
どうにも腑に落ちない心境を呑み込みながら、ミシェルとやり取りする。次いで、ミシェルはサラと状況の確認に入った。その裏でロアナが他の三人と情報を交換していたようだ。通信越しではあるが、察するに船の乗組員も動揺を隠しきれていない。本来なら先に船がポイントに到着して、地球からの支援部隊と合流した後に、戦闘中のこちらのバックアップに回る予定だったのだ。それが全員、無傷ともなれば当然だろう。船の誰かが「部隊の方には申し訳ないが、上り損になってしまうな 」と贅沢な悩みを口にしていた。
そんな話を聞きながら、自分の体から強張りが抜けていくのを感じる。どんな形であれ、作戦は成功したんだ。
そう安堵した刹那。
「急速に接近する熱源を感知。数6。これは、そんな……凄まじい速度です。およそ通常の1.5倍。接敵までおよそ500。各員、直ちに戦闘態勢へ移行して下さい」
「熱源照合・一機のみ該当。これは、パクス出発直後に接敵した機体です。展開から予測するに、指揮機体だと思われます」
けたたましいアラートとともに、ミシェルの緊迫した声が耳を揺らす。それに続くようにロアナから情報が付け加えられる。それは今まで以上に自分の心に火をつけるものだった。
パクスから出た直後の戦闘でも、同じようなことがあった。一度戦闘が終わった後、途轍もない強さを持ったアパレイユが現れて、それで……ユウナが俺を庇って。傷付いた。
あの時の機体が再び、俺の前に立ち塞がろうとしている。操縦桿を握る力が一層強まる。もうあんなことは繰り返さない。今度は俺が、守ってみせる。
「やっぱりこのままじゃ終わらないってわけだ。……お前ら、直に下から援軍が来る。やるべきことはさっきと同じだ。とにかく死ぬな。生き残れ。相手は5機だ。お互いの位置を把握出来る距離を保って戦え。いいな」
ノーランが全員に檄を飛ばす。了解と返しながら、各々が得意とする位置に展開していく。ブルーノ、サラは前衛に、俺とノーランは中衛、ユウナは後衛からのサポートといった陣形だ。
「間もなく、接敵します。ご武運を」
ミシェルからの通信も終わった。敵はもうレーダーが捉えている。
第二ラウンドの火蓋が切って落とされる。




