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ワタシは貴方とイキテイク  作者: 水瀬 葉月
Dark cloud hanging in the sky
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疑念と信頼

「というわけで、地球軍と独立派は統合され人類共通の敵と戦っているわけです」


 休暇も無事終わり、船は再び地球へ向かって走り出した。


 そんな中でも俺の日々は変わらない。今日も今日とて、ユウナ教官の厳しい指導が続く。俺は眠気を堪えて必死に聞いている振りをしていた。


 指導に文句をつけるわけではないが、正直眠い。面白みがない。まあ、軍規とかに面白みを求めるのが間違いなんてことは分かってる。ただ、最初は分からないことだらけだったから、この丁寧さに感謝していたけど、慣れてきたら逆効果でさえある。ユウナの授業は分かりやす過ぎて、逆に辛い。もう少し手を抜いてもらった方が、ありがたいとさえ思う。うーん。文句まみれである。


「そして、現在の人類継続軍へと至り………」


 あ、やべ。ホントに寝そうだ。あーー………ぁ。


「いって!」

 

 飛びかけていた意識を無理やり戻された。物理で。


「いたい?」


 因みにやったのはユウナじゃなくてサラだ。サラは俺のサボりを見張る……という、俺がいかに信頼されていないかが分かる仕事を任されている。俺がボーっとしたり、寝そうになっていると、ペンの尖ったところでチクッとされる。地味に痛い。そして毎回、痛い?って聞かれるのも地味に辛い。痛いって返すとすっげえ悲しそうな顔するんだもん……


「はあ、、今日何回目よ。いつまで、休暇気分でいるつもり?」


 ユウナもかなり呆れている様子。でも、今日ばかりは反論が出来ない。何といっても本日30回目だ。そろそろ刺され過ぎて血が出そう。


「そういうわけじゃないんだけどな」


 俺が集中力を欠いているのはいつものことだ。どうにもじっとしていられない。別に落ち着きがない、という話ではないのだが。


 そんなんでよくエンジニアになんてなれたわね、とユウナからは小言をいただいてしまう。考えるのは好きなんだけどなー。事務的なことはめっぽう苦手だ。


「ちょっと休憩する?」

「助かるわ」

「じゃあちょっとだけね」

「ふう」


 やっと一息。思いっきりベッドでゴロゴロする。すると何故か一緒にサラもゴロゴロする。このベッドそんなに広くないからサラにも入られるとゴロゴロどころか不動になってしまうんだけど……仕方ない。俺が譲ろう。


 立ち上がり、軽く伸び。あ、ポキッていった。

 あーそれにしても。


「余裕だな」

「なら講義増やそうか?」

「そういうことじゃなくて!」


 危ない危ない。勉強の忙しさならもう十分に間に合ってます。大丈夫です。


「地球に向かってるって割には、全体的に平和っていうか、落ち着いてるっていうか」

「そう?いつもより、ピリついてるけどね。今回はかなりイレギュラーだし。アパレイユに襲われるなんて滅多になかったんだから」

「なるほど」


 確かに、戦う可能性が薄いなら警戒する必要もないか。乗組員が少ないのも納得できる。


「じゃあ、普段は何してるんだ?」

「何って…なんだろ。それこそ今と変わんないかな。訓練とか、作業とか」

「ふーん」

「船の中で出来ることって限られてるしね。移動中なんてそんなもんよ。変に気を張ってても疲れるだけだもの」

「それもそうか」


 俺たちの仕事は有事の際に最高のパフォーマンスをすることだ。要は切り替えが大事ってことだな。


 家を出て以来戦い続きだった俺からすると、こうも何もない日が続くとかえって不気味に感じていたのだ。それを普通のことだと否定してもらえたのはありがたい。勉強に身が乗らなかったのも、こんなことしてる場合じゃないって心のどこかで思っていたから……かもしれないし。これからは集中して講義を聴けるようになる…………かもしれないし。


「はい。休憩お終い」

「もう?」

「もうって10分経ったわよ」


 休憩って10分しかないのかよ……いかん。こんなスパルタでは俺の精神が持ちそうにない。何か別の話題に持っていけないか?


「ところで、ユウナはさ」

「さて、私たちが敵対している相手のことは先ほど軽く説明しましたね」


 スルー!華麗なるスルー!いや、諦めてなるものか!!


「あーおなかが、へったなー」

「将を射んとする者はとも言いますし、もう少し詳しく理解していただこうと思います」

「あーーー!おなかがっ!」

「……イリア??」


 このトーンは、マジギレの予感。。。いや、でもな?こっちの言い分も聞いてくれたっていいじゃないか。


 雷が落ちるのを覚悟して、おふざけではなく、ちゃんと自分の主張を伝えることにした。「集中できるときとそうじゃないときの差が激しいから、自分のタイミングで進めたい」……要はやりたくないときはやりたくないということだ。お粗末なものである……後は鬼が出るか蛇が出るか……


「はあ、もういいわよ。強制的にやらせるのは無駄だって分かった。やり方変えるわ」

 

 あれ?要望、通った感じ?おお、言ってみるもんだな。ありがたや、ユウナ様。


 当の本人はというと、何やら表にまとめているみたいだ。 


「はい、これ」


 走り書きで記された内容は、膨大な資料の山だった。


 これは………もしかしなくても。


「地球に着くまでに覚えなきゃいけないこと。スケジュールは大雑把に決めといたけど、ペースはイリアに任せる。頑張って」

 

 ………率直に言って、えげつない。結局辛いことに変わりはないようだ。


 とにかく、ユウナに負担ばかり強いるのも悪いと思っていたのだ。迷惑をかけないためにも頑張ろう。


 と、一人意気込んでいると、ユウナがおもむろに立ち上がって言った。


「取り合えず、今日は違うことするわよ」

「違うことって?」

「いいから。サラちゃんもね」


 そそくさと部屋を出ていくユウナを見送る。

 

 一体、何が始まるんだ??



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