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76※閑話

この世界の成り立ちなど。ささっーと読んじゃってください。

ドラゴンは、神に等しき力を持つ地上で最も美しく気高い生き物だ。

遥か昔、地上界ではなく天上界で生まれた一匹のドラコンがいた。

彼のドラゴンは、類い稀なる美しさと知性を兼ね備えていたために全能神の命により神龍となった。

神龍は、人の姿をとる事が出来る術を得、とある世界の女神と婚姻を交わし、夫婦である1つの世界の神となった。

二人の間に生まれた子供は地上に居を構え、人と共存の道を辿ることになった。

数百年の時が過ぎ、ドラゴンは人から畏怖される存在となった。不可侵の領域である谷に独自の国家をつくり、時に人の力となり暮らすようになった。

そんなある日、谷の仲間以外の者に忠誠を誓うドラゴンが現れた。

彼のドラゴンは、主たる人に自らの弱味を話し、忠誠の証として尾の付け根に主の印を付けるようになった。

ドラゴンを従えた男は後にエストーニアと言う国の王となった。

王の誕生はドラゴンと人との架け橋となったが、巨大な力を得ようと何人もの勇者がドラゴンの谷に入るようになった。

エストーニアの王のように人に完全な信頼を寄せるドラゴンは居らず、尾の付け根の弱点を付いて無理矢理主になろうとする者まで現れた。

ドラゴンの谷の王とエストーニアの王は協力して、それらの物達を退けていった。

共に戦ううちに、ドラゴンの中にもエストーニア王のドラゴンのように人を敬い、信じる者が現れた。

この100年も前の戦い以後、ドラゴンマスターなる人間の存在が当たり前な世界となった。


しかし、数十年後、ドラゴンの信頼を得ることの出来ない為政者が己の国を強くしたいがためにドラゴンを兵器として使役しようと手を出した。


成龍で無くてもいいではないか、まだ赤子だとしてもドラゴンの力は偉大だ。もし卵から育てる事が出来たとしたら、雛の刷り込みのように自分に忠誠を誓うドラゴンが手に入るのではないかと。


時が経ち、ドラゴンの谷の中にも人間を半身とする者が現れるようになった。

ある時代のドラゴンの谷の王のもとに二人の王子が生まれた。

日頃から次期国王となる兄に劣等感を抱きながら、いつの日か出し抜こうと考えている弟がいた。

それは彼の中に人の血が兄よりも濃く流れていることに関係する。

ドラゴンに限らず、この世界の人やドラゴンは生涯ただ一人の相手と結ばれる。特に長命のドラゴンは、命尽きるまで同じ魂の相手を番とする。

ドラゴンの兄弟の父王は、神なるドラゴンの正統なる血をついだ谷の王。そして、母もドラゴンである。勿論兄弟の母は同じであったが、兄は、父王の半身である母の魂がまだ龍の中にあった時期に生まれたためドラゴンの強靭な体を。弟は、母が人の体を持ってうまれ変わった時に父王によって見いだされ添い遂げた時期に生まれたためドラゴンの姿よりも人型をとることが常であった。

半分はドラゴンの血が流れているため、人よりはかなり長寿で頑丈な肉体を持っていたが。弟は優秀な兄と常に比べられ、心に闇を抱えるようになってしまった。

弟には、母の思いも父の兄の言葉も届かなかった。

そして、事件が起こる。

それは兄が王となって2回目の春のこと。

ドラゴンの谷の王弟が人にドラゴンの産卵場所からその年に生まれた卵6つと共に盗んで谷から姿を消した。


ドラゴンは出生率が低い。

それゆえに卵の管理は厳重にされていたはずだった。

エストーニア王は、ドラゴン王家と共に卵の行方を追っていた矢先、突如エストーニアと谷を挟んだ隣国が幼いドラゴンを連れて宣戦布告してきた。

子供達は龍尾輪をされ、完全に支配されていた。

愛する子供達を人質にとられ身動きの取れない状況にエストーニア王が立ち上がり、世界は混沌とした戦乱の暗黒時代に突入した。

隣国に騙され捕らえられた王弟をたことを兄王とエストーニア国軍、隣国、そして虎視眈々とエストーニア国や谷を狙う諸国。世界は混乱の時代へと突入した。

絡まった混乱から人々と隷属下にあったドラゴンを救ったのが黒の魔法使いだった。



深い眠りから目を覚ます。

夢に見たのは、過去の自分。

本当の両親からの愛情を知らぬまま、物心ついたときには人の世で存在していた。

かろうじて貰った名前だけが自分を示し生きていく意味を教えてくれた。

ほんの子供だった俺を育てたのは、貧しい教会の牧師夫婦で、彼らは戦争で被災した子供達を守り育てていた。

俺も被災した子供だと思われていたのだろう。

貧しいが優しく愛情深い彼らは、俺が旅立つ時も心配してくれた。

帰ってくる場所だと言ってくれた。

その場所ももうない。

戦火に焼かれ牧師夫婦も保護されていた子供達も死んだ。

世界の混乱の犠牲者だ。

この世界に落とされた時の俺には、混乱を鎮める意味が分かっていなかった。けれど彼らの死を知って戦争のアホらしさを痛感し孤独を知った。

気付いたら黒の魔法遣いとか呼ばれて戦争を終わらせていた。

戦争を収めた後、俺を襲ったのは孤独だった。

誰しもが運命の糸で愛し合う相手にいつか巡り会う世界。

その運命を放棄して色欲や野心に身を投じる者もいるが俺は運命の半身を求めた。

あまりにも強大な力はいずれまた世界に混乱をもたらす。力を分け与える存在を俺は欲した。

他世界の神々の了承を得て時空を越えた旅先で俺は暁に出会った。

彼女ならばきっと俺を支え共に生きてくれる。

なのに…。

俺が半身を持つことに反対してきた勢力を甘く見た。

あんなか弱い存在に変化してしまうとは。

まぁ、お陰で暁に拾って貰えたのだけど。

自分の中に預けていた力が戻って来たことを感じ思わず口角があがる。

思ったより早かったな。

彼女の中に眠っていた力は植物に魔力を注ぎ込めるもの。何かの足しになればと渡したアロマオイルのケースから精霊が生まれるとは思わなかったな。新しい精霊を生み出すなんて、精霊神王が喜びそうだ。

優しくて、少々流されやすい彼女の性質に俺の能力が、加わって人たらしならぬ、ドラゴンたらしか。何匹の主になるつもりかな。愛情深く、義理人情に厚い彼女とこの世界との絆の構築はうまくいっている。

暁は決して彼らを見捨てて元の世界に戻ろうとは思わないだろう。

そろそろココにいるのも飽きたし、迎えに行こう。

何処にいるかな。

ああ、ドラゴンの谷に気配がするな。

「何処へ行くと言うのです。」

邪魔なのがきたな。

手始めに足枷を外す。

「力が戻ったのですか!」

無視だ。

「あの女が死んだのですね!」

勝手にそう思っていれば?

「ああ、黒の魔法遣い様!!」

こいつの前では、人型に戻るとヤバイ気がする。

俺を勝手に神格化している気がする。

さっさと行くか。

「貴方は、私のものだ!!」

ほら、危ない…。

俺がいない間を狙ってドラゴンに悪さをする奴等も出てきてるみたいだし、お仕置きが必要だな。

でも先ずは暁優先♪

あの豊かな胸に顔埋めたい。

…その前に殺されるかもだけど、暁になら殺されても本望だ。

おっと、いけない。

俺も充分狂ってる。


暁に出会えて俺は幸せだ。

あの世界に飛ぶ時にちょっかい出されてこんな貧弱な身体になるとは思わなかったけど。

俺の邪魔をする奴等は顔洗って待っとけや…。


「黒の魔法遣い様!!」

そうして、俺はごちゃごちゃ煩い男の屋敷から脱出した。



続く……。

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