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第81話「残響のあと」
全色の残響は、一日では引かなかった。
白嶺は布団の中で、天井を見ていた。立つとふらつく。感情の輪郭が、まだ曖昧だ。無月が湯を差し入れ、彩華の様子を短く報告する。白嶺は『ありがとう』とだけ返して、また目を閉じた。会社は、もう一日休むことにした。
無月は窓の外を測り続けていた。家の気配は、昨日より近い。試客のレベルではない。もっと重い、刀の気配が、街のどこかで動いている。
「……来ます。近いうちに」
『わかってる』
白嶺は自分の手を握った。残響が残っている。それでも、来られる前に、立てるようにならなければならなかった。
夜、白嶺は短時間だけ起き上がり、残虹の柄に触れた。刀は応える。だが、身体の方が遅れている。無月がそれを見て、何も言わずに傍に座った。
「無理は、しないでください。今夜は、私が起きています」
『……頼む』
白嶺は再び目を閉じた。
残響の渦の奥で、次の刃の感触が、すでに近づいていた。




