表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を斬る母「白嶺」  作者: 雨-Ame-
36/106

第36話「芽の匂い」

白嶺が緑の気配に気づいたのは、彩華の髪を乾かしているときだった。

タオルで頭を優しく押さえる。湯気と一緒に、いつもの乳児の甘い匂いが立つ。その下に、ごく薄い、土と若葉のような香りが混じっていた。白嶺の指が、一瞬止まる。

気のせいかと思う。

だが、胸の奥で、何かが小さく根を張るように反応していた。

赤の熱でも、橙の沈みでも、黄の甘さでもない。

もっと静かで、湿度を含んだ、芽が土を割るような感触だ。

白嶺はタオルを置き、彩華を抱いてリビングに戻った。娘はもう眠たそうに目を細めている。白嶺はいつものように布団に下ろし、傍に座った。

緑の匂いは、部屋の中に残っている。窓を開けても、完全には出ていかない。外から来ているのか、自分の内側が反応しているのか、区別がつかない。

『……次は、緑』

名前を、短くだけ呼んだ。

呼ばなくても、身体が先に理解していた。

白嶺は彩華の小さな手を、自分の指で包む。娘は何も知らない顔で、眠りの中に落ちていく。白嶺はその手を離さず、しばらく同じ姿勢でいた。

家の影は、まだ直接的な接触をしてこない。

色の方は、すでに動き始めている。

どちらが先に来るのかは、わからない。

わからないまま、白嶺は娘の寝息を聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ