表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を斬る母「白嶺」  作者: 雨-Ame-
23/106

第23話「残った熱」

美咲は帰宅してから、ずっとぼーっとしていた。

靴を揃える手も、顔を洗う動作も、どこか機械的だ。頭の中では、加藤さんの声と、薄いキャミソールの感触と、「ちゃんと見てるから」という言葉が、繰り返し再生されている。

(見られてる……)

布団に入っても、すぐには眠れなかった。

嬉しいのか、恥ずかしいのか、胸が熱いのか、自分でも整理がつかない。ただ、以前より明確に、加藤白嶺という人を「好き」だと思っていることだけは、わかった。

月曜日。

会社に着いた美咲は、いつもより早く白嶺の席の方を見てしまった。白嶺はすでに仕事を始めていて、画面に向かっている。美咲は「おはようございます」と声をかけ、白嶺が『おはよう』と短く返してくれただけで、また顔が熱くなった。

(だめだ。意識しすぎ)

自分に言い聞かせても、視線が自然と白嶺に寄ってしまう。玲奈がそれを横目で見て、小さく鼻を鳴らした気がした。美咲は慌てて自分の席に戻った。

白嶺は、特に何も言わなかった。

美咲の態度が少し変わっていることには気づいていたが、それを指摘する必要はないと判断した。週末の訪問は、すでに過去のことになっている。


退勤後、白嶺は彩華を迎えに行き、いつも通りの夜を過ごした。

離乳食を作り、入浴させ、寝かしつける。一連の動作が終わる頃には、外は暗くなっていた。

白嶺は窓の前に立ち、外を見た。

月は薄い。色の気配は、まだはっきりしない。だが、週末よりは近くなっている。黄か、緑か。名前を呼ぶには、もう少しだけ早い。

残虹の包みに手を伸ばし、重みを確かめてから、手を離す。

今はまだ、動かない。

白嶺は電気を消し、布団に入った。

美咲の赤い顔が、一瞬だけ脳裏をよぎった。悪くない訪問だった、とだけ思って、彼女は目を閉じた。

次の色が来るまで、まだ時間がある。

その時間を、白嶺は娘と一緒に、静かに使うことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ