第16章:ボードショップ『ボーズ』(6)
・・・この店長さんは、
性格的・・・いや、
人間的に、とても「姑息」で、
せまい了見の、気の毒な人だったと、いまでも思う。
当時のぼくはたしかに太ってはいたけど、けっしてサーフィンができない人間ではなかった。
バランス感覚もしっかりしていたし、
「バネ」もそれなりにあった。
・・・そういえば、たびたび店長は言っていたな。
「あたらしい人に、この業界に入ってきてほしくない」と。
3度目に入店したときには、
ロン毛で人のよさそうな、店長と同い年くらいの店員の男性もいた。
そのときには、こんな会話がなされた。
店長:「なぁ、キミ。キミはさ・・・『ローカリズム』って知ってるかい・・・?」
ぼく:「え? なんですか、その『ローカリズム』って??」
店長:「めんどくせーなぁ・・・。じゃ、〇〇君。かわりに説明してさしあげな。」
ロン毛:「ええと、そぉっスねぇ・・・。つまりですね、地元のサーファーが、よそから来たサーファーを歓迎せずに、追い出そうとする動きのことを指すんですよ。」
ぼく:「なんで、追い出されちゃうんです・・・?」
ロン毛:「よそ者のサーファー連中の『マナー』が悪いからですよ。深夜にガンガン、カーステかけて砂浜に居座ってるし、花火やったあとも、片付けもしないで放置して帰るし。」
店長:「そうそう。ゴミは散らすわ、あちこちで『立ちしょん』するわ、大声でギャーギャー騒ぐわ。
昼間でも、堂々と『くわえタバコ』で海に向かっちゃう。
・・・誰がそいつらが投げ捨てた吸い殻を拾うんだってハナシだよ。
海でも、大挙して押しかけて、沖にずらーっと陣取っちまうし。
先輩である『地元サーファー(= ローカル)』を押しのけるようにしてさぁ・・・。
挙句の果てにはアレだよ、キミ。『立ちセックス』まで暗がりでやっちまう輩までいるんだぜ??」
ぼく:「そんなにひどいんですか!?」
店長:「ああ。そういうことがあると、行政も黙ってはいられないから、必然と『砂浜への全面立ち入り禁止措置』に踏み切らざるを得なくなる、ってわけさね。
マナーが悪い外部の無責任な連中のおかげで、波乗りできるビーチが減っていっちゃう・・・こういう構図なワケ。」
ロン毛:「それで、全国の地元サーファーが立ちあがって、漁協(= 漁業協同組合)や一般の皆さんと協力して、『ビーチクリーン運動』ってのをやってるんです。貴重なサーフスポットを守るために。」
ぼく:「『ビーチクリーン運動』・・・ですか?」
店長:「マナーの悪い海水浴客やロクデナシのサーファー連中がビーチに捨てていったゴミや空き缶や、『コンドーム』なんかをひとつひとつ拾って、清掃活動することだよ。」
ぼく:「だから『ローカリズム』なんですね・・・追い出したがるわけなんですね・・・?」




