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「ってあれ?黒田さんと金剛さんは?」
到着した増援は八巻と日暮さんの二人。まさかさっきの戦闘で……と嫌な想像が浮かぶが八巻の表情を見る限り、そんなことはなさそうだ。すぐに表情に出すのはやめた方がいいとは思うけども。
「黒田さんたちなら、少し遅れてくるはずっす。早く合流できる自分たちが先に来た感じっす」
適合者である二人は私ほどでなくとも、身体的な強化を得ているので、疲れ的にも能力的にも早くこれたのだろう。
「あー、やられてしまったか。やられるにしてももう少し時間も稼げたろうに」
残念に思っているセリフを全く感情の動き無い顔で言ってのける。
「てめぇ、あんな小さい子までにもてあそびやがって。何様のつもりだ」
日暮さんも怒りをあらわにしている。
「何様とも思ったことはないが、彼女は私の姪で大事な大事な被検体だよ」
「ほんと、性根まで悪人で救いようのないクズね」
私にとっての身近な悪人は夏代子で、その時もかなりの苛立ちや怒りでいっぱいだったが、この男にはそれ以上のものを感じた。それこそ今までの疲れが吹き飛んでしまうほどの怒りは、近くの巨大な大男の人喰いに向かい、その頭を無残に散らした。
「まだ強くなるか。君はもはやバケモノだな」
追加で出てくる増援は衰えを知らないのか続々と出てくる。
「げ、あんなにいるんすか」
「弱音を言っている暇はないだろ」
うちの増援にもやる気を出してもらわないと困る。
怒りで火力は上がっている気はするが、体力の消耗も上がっている気がする。
「短期決戦で行きましょう。私があいつまでの最短の道のりを開きます。援護の方お願いします」
災厄の始まりに向かって、一気にかけていくしかもう突破口が見えなかった。
直線上の一人の攻撃をかわし、繰り出された腕をつかむ。そのまま、投げ飛ばし数体を巻き添えにさせる。
「食らいやがれ」
続けて、日暮さんがその数体に向かって火の玉と何かを投げつけると、人喰いにぶつかった瞬間に大きな爆発を起こす。油かなんかなのだろう。
「いっちょやるっすよ」
八巻も素早い動きで翻弄するような形で数体を相手取っている。
さらに追加で何体かを戦闘不能にさせたところで、ようやく諸悪の根源までの道が見えた。
足を踏ん張り、勢いよく地を蹴ることで多少の障害物も人喰いも、どかしながら進む。
「なっ」
流石に予想できなかったか、ラスボスも目を見開いた。
私の動きはそこで止まった。
「……驚異的な進化だ。ここまで人間が強くなるとはね。素直に称賛しよう。そして、この手を使いたくなかったこともここに白状しよう」
かろうじて機能する五感などから私だけでなく、日暮さんに八巻も動きが取れないようだ。
「ビデオでも言った通り、私は全ての人喰いに対してに命令権をもつ。例えば、君にその二人を殺せと命令すればその通りになるだろう。あぁ、そんなに睨まないでくれたまえ。こちとら、しがない研究者だぞ」
漏らしてしまったらどうする、と笑えない冗談もほどほどに話し続ける。
「被検体にそんなことはしないさ。あと抵抗も無駄だと言い含めておこう。外で女王気取りをしていたもののように意思でどうにかなるものでもない。これは絶対の能力だよ」
声にならないうめき声が余計に悔しさを強調しているようで余計に腹が立つ。こんなやつに使われるくらいなら…。
「死んだほうがまし?もちろん自死も出来ない。安心したまえ。君のその強さに免じて、ある程度の自由や要望は保証しよう。言いたいことはあるかね?」
口が自由になったのを感じるが舌をかみ切るなどの自殺につながる行為はとてもできそうにない。だからありったけの殺意と恨みを込めてこう言い放つのだ。
「死ね」
その瞬間に銃声が鳴り響いた。続けて、2,3発。
その場の誰もが驚き、出所と着弾先を探す。目の前の男の白衣が赤い液体でにじんでいることから誰が撃たれたかは一目瞭然だった。
「私たちの生活は返してもらうよ」
「きさまぁぁぁ」
さらに、鳴り響く銃声。その弾は脳天を貫き、誰の目で見ても一瞬で絶命する。それに加えて私たちの動きの束縛された感じも消えている。
「遅れてすまないね」
正直私がとどめを刺せなかったことが残念だったが、とにかくこの騒動がようやく終わるのだと思うと、意識を手放していた。
あと、軽いエピローグで終わります。




