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人喰い  作者: 青い傘
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「夏代子ォ」


 すぐに駆け出し、夏代子を殺す。そんな思考はギリギリ踏みとどまる。情報も足りなければ、まだ敵とも決まったわけでもない。それに夏代子の周りには何人か人がいるようだ。


 何より、もう一度信じてみたい気もちがあったのだろう。


「夏代子。あれは嘘よね」


 あれだなんてわざわざ具体的に言わなくても伝わる出来事に夏代子は私の目も見ずに言いのけた。


「いやほんとのことだよ?しかし、未来も随分いい趣味しているよね。粗暴そうな男に、いかにも暴力団の男、年のいったおじさん、まぁまぁイケメンのおっさん。一番ましなのでも年下?」


 順番に男性陣を見ながら品定めをしていく夏代子。


「ま、気に入らなかったら捨てるだけだし、とりあえずは私のものにするとして、あなたはどうしよっかなぁ」


 ようやく私の方を見たが、何やら思考はこちらには無いようだった。


 力づくでも意識させてやろうと踏み出した足だったが予想外のところから停止がかかる。


「だめだ。夏代子ちゃんに手は出させないよ」


「そうですよ。夏代子さんは私たちの光なんですから」


 私を止めたのは、他でもない仲間であるはずの黒田さんや木戸さん。周りもうなずいている。


「な、何で?なんであんな女の味方をしようとするの?」


 頭が真っ白になる。二度目の信じていた人に裏切られた瞬間。


「あははははははは。やっぱり最ッ高。この能力で私はこの世界を好きに出来るの。私が世界の中心になることが出来る世界。はぁ~幸せ。もう未来にも恨みなんてないもん」


 狂ったような笑いと悦に入った声。


「分からなくてもいいじゃん。どうせ未来もすぐに何も考えられなくなるんだから」


 絶望で染め上げられる。


「効き目が少し女だと遅いのは難点だけど、すぐに私のことを好きになるでしょ。その前に絶望の顔を見ておきたいかも」


 そういって、後ろの方から一つの人影が近づく。


「ほら。美羽だよ?未来が救えなかった美羽。かわいそうにね。未来はさ、あれから生き残ってるんだから適合者なんだろうけど、美羽は違うんだよ」


 美羽だった。最後に見た美羽そのもの。救えなかったのは私も同じ。私のせい。


「噛まれた後とかを化粧で隠すのは大変だったけど、随分ときれいでしょ?それに弟君も」


 そういってもう一人私に見えるように出てくる。美羽の弟、環くん。


「環くんはね~。人喰いではないんだー。たまたまだけど見つけたからさ。私のものになったわけ。姉弟一緒に私のことを好きになってもらったの」


 そのままキスを環くんにする。それはまるで恋人同士がやるように自然に行われる。


「そろそろ、私のことを好きになった?お仲間さんは既に堕ちたよ」


 好きになるわけがない。そんなことがあるわけがない。私を親友を裏切り、今の仲間も奪い取った。そんな女を好きになるわけがない。


「私の能力って、どんな相手でも人喰いでも魅了するのはいいけど、同性に効きづらいっていうのは難点なんだよね」


 愚痴るようにしゃべる夏代子に私の胸は激しく鼓動する。締め付けられるようなこの思いは





 殺意だ。

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