19
「まず今回の騒動の首謀者のことだけど、実のところ場所は分かってる」
「え、そうなんすか」
出発したミニバスで黒田さんが告げた言葉にと声を上げてまで驚いたのは八巻。
「まぁ、そうでしょうね。そうでもなければとてもじゃないですけどこちらから攻勢に出るのは難しいでしょうし」
冷静な声で返すのは木戸さん。
「うん。有希ちゃんが前回のあの短い放送である程度の場所を絞ってくれてね。まぁ、細かいことは詳しくないから結論から言うね。この地域のすぐ近くの大きな山、通称、恐岳。そこにいるんじゃないかっていう話」
恐岳。隣町ではあるけれど、本当にすぐそばにある山。あまり高い山ではないのだけれども東京の狭い土地の中で開拓の進んでいない広大な山。
理由は開発しようとしたが、次々と不幸なことに見舞われたり、行方不明者が絶えなかったりなどの良くある話からその名がついたとも言われているらしい。
それこそこの辺の子供なら悪いことしたら恐岳に連れていくよなんて脅し文句なんかもあった。
「んで、その広大な敷地を探し回れってのかよ?」
口が悪いのが日暮さん。
「最初の内はそうなるかもしれない。その辺は有希ちゃん任せにはなっちゃうかな。よろしくね」
と、手に持ったスマホに話しかけると返事が返ってくる。
「一番いいのはもう一度連絡が来ることなんですけどね。そしたら、もう少し絞れると思いますし。ただ、端っこにあるってこともあんまりないとは思いますけど。ただ、衛星からの映像見てみたんですけどそこまで大きな施設とかってなかったんで、地下とかに潜ってるかも」
「ということだそうなので、行ってみてから今後の方針を決めることになると思う。少し行き当たりばったりではあるけどやらないと分からないことも多い。そのためにリスクを負ってでもミニバスにしたんだからね」
車二台では入らないような荷物、果てにはバイクなんかもミニバスに積んである。意思の疎通を取りやすくする理由もあったらしいが、こっちが大きい理由らしい。
「黒田さん、そろそろ隣町につくんですけど何かおかしいです」
運転席の方、助手席から青砥さんがこちらに振り向いて声をかけてくる。
「そういや、車の割には人喰いが寄ってこないな」
日暮さんが核心を突く。
「確かにそうだね。いつもの車ですら来るのに、今回は低音でもないからいつもより来てもおかしくない」
ただその異変が何を意味しているのかが分からない。そんな状況のまま、私たちを載せたミニバスは隣町の境目を超えようとしていた。




