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その日はいつもよりもすっきりと起きることが出来た。
旅立ちにはちょうどいい天気にいい目覚め。そんな私にとって気分を害する要因と言えば、目の前の男、八巻という私よりも年下のイヌみたいな人間である。適合者ではあるので人と言えるのかは私も含めて不明ではあるけれど。
「姉御。これしか食べないんですか?もっと食べないと元気でないっすよ。食べられるときに食べておかないとダメっす。…いつ食べられられないようになるかも分からないんすから」
最後の方で哀愁の漂うように言うが事件以来、食欲だけでなく、睡眠欲すら不思議とあまり湧かないのだから仕方がない。
それこそ人であることを捨てることもなければ、怪物になった気もないので今までと同じようには食べたり、寝たりはしてるのだけど。つまり何が言いたいかというと
「うるさい。元々そんな食べられないっての。あんたこそ私よりも若いし、体も別に大きくないんだから食べなさい」
言われなくても食べてますと言わんばかりの顔、パンを口に詰めながらの状態でいる。
「仲良くなってくれたみたいで良かった」
黒田さんが少しからかうように私たちのやり取りを見ながら喋れば、
「そうですね。八巻と同じような年齢がいませんでしたからね」
と、金剛さんも続ける。
昨日の自己紹介の後、姉御姉御と絡んできた八巻。最初は遠慮もあったので敬語で話すことが多かったのだけれど、年下であるということと本人の要望もあって大分砕けたような口調になることになった。
一番初めは少し弟感もあったけれども、既にうっとうしいとも思い始めている。兄弟なんてそういうものだよと美羽も言っていた気がする。
それに美羽の家族にも伝えないと行けないなと考えると少し憂鬱な気持ちにもなる。
「姉御、どうかしました?」
そんな感情を察したのか八巻が声をかけてくる。
「うるさい弟だなって」
急な姉感に驚いたのか目を少し見開きながらも屈託のない笑顔で笑う。
「いや~、ほめても何も出ないっすよ。そういえば、良く両親も認めてくれたっすね」
昨日も改めて両親に報告というか挨拶をすると、変わらず応援というか送り出してくれた。
「止めても無駄でしょうし」
「お母さん」
聞いていたのか立ち話をしていた後ろから声をかけられる。
「八巻くんもよろしくね。うちの娘を」
昨日は家族がいる中でもお構いなしに突撃されていたので面識もあるだけでなく、何なら息子のような扱いにも見える。
「もちろんす。守ってもらう側かもしんないすけど」
そんな感じの雑談をもう少し続けていると、黒田さんから声がかかる。
「それじゃあ、みんな準備できたらしいし、出発しようか。娘さんをお預かりいたします」
ペコリと私の両親にも会釈をして、外に出ていく。
「じゃあ、行ってきます」




