11
ザザザッ。ザザッ。
ノイズのような音が市民会館のあちこちから聞こえてくる。私たちの懐からもだ。
「あ、あー、どうかな?聞こえているかい?」
声が手元のスマホや市民会館のテレビやラジオの方から聞こえる。
一番見やすいテレビの方へとその場の全員で行くと30代かその辺の白衣を着た男性が映っていた。しわ一つない白衣だったがところどころ薬剤をこぼしたのか灰色や赤色、水色などに見える部分もある。
「さて、早速だが本題に入ろう。私からのプレゼントの配布から1週間ほど経ったがよろこんでくれているかな」
この男が元凶なのがその瞬間に誰もが理解した。白衣を脱ぎながら続ける。
「そう一週間だ。そこまで経てば生活にも慣れてきただろう。それに、君たちがどう呼んでいるかは分からないが、私は適合者と呼んでいる者になれた諸君おめでとう。新たな進化を遂げることに成功したというわけだ」
今まで、カメラに向かって立って話していた彼は画面外から転がってきた椅子の背に脱いだ白衣をかけ、腰かけると椅子の転がってきた方へ苦笑いをしながら話を再開する。
「えぇと、どこまで話したかな。…そうそう適合者か。私の計算ではおおよそ数十万人に1人とかだったかな」
またどこからかコップを取り出し、口をつける。
「まぁ、特にいうことはないからこの辺にしておこうか。そうだな、恐らく疑問を感じている方々も多いだろうからこれだけ教えてあげるとするかな。この騒ぎを起こしたのは間違いなく私だ。そして、私自身の適合者としての能力が君たちが人喰いと呼ぶ者たちの主人。操っていると言ってもいいな。つまりは私を殺さない限りは止まらない」
ではさらばだ。と言いながら、手を画面に近づければ映像は途絶えた。
「本当に言いたいことだけ言って切られてしまったね」
市民会館の中がざわざわとしている中、黒田さんは渋い顔をしてそう言った。そして、手をたたきながら、こう切り出した。
「聞いてもらえるだろうか。ちょうど、高橋君たちも出て行って、謎の男の映像もあって混乱している人も多いと思う。だからこそ、方針を決めておこうと思う。もしも反対意見や出ていこうとする人がいるのであれば言ってほしい」
一息つくように咳ばらいをしながら続ける。
「正直なところ、水や電気の心配はそこまでないとは言え他の栄養の摂れる食料の調達もいつまでできるか分からないのが現状なわけです。先の映像によって元凶は分かった。そこでこちらから攻め込むことを考えています」
静かになった空気も流石にこの宣言に対してまたも騒がしくなる。しかし、よく見ると一般人の方が騒がしくしているだけで組員であろう強面の人たちは動揺すら見せていない。
「もちろん、これまで同様にここでの生活が出来るように全力は尽くすし、北中の方に避難したい人は傷一つなく連れていくことを約束しましょう」
警察や国に任せればいいじゃないかそんな声もところどころ聞こえる。
「言いたいことは分かるが、すでに1週間経っているのも関わらず、この状況ならば誰かがやらなければ自体は好転しないというのが長年の勘からも分かる。それに…」
最後の方の言葉は比較的近くにいた私でも微かにしか聞こえなかったので聞こえた人はほとんどいないのだろう。
「とはいえすぐに行くわけもなければ大人数で行くわけでもない。恐らくは食料調達の人数よりも少ない5、6人といったところだと思う。準備も明日から進めるから、今日は少し考えてみてほしい」
頭を下げながら、話し終えた黒田さん。
私も意外と色々あって疲れていたが、なんとなくではあるが自分がどうしたいかは既に決めていた。




