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【経験値×100】を呪いと誤解され追放された荷物持ち、最初の一匹でLv1からLv5へ  作者: わわわ


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第11話 深淵の迷宮進出とLv30到達

 『初心者の迷宮』を完全踏破した翌朝、俺は相棒のクラリスと共に、迷宮都市バロールの中央広場に立っていた。

 朝日に照らされた広場の中央には、大地を丸ごと穿ったような巨大な大穴がぽっかりと口を開けている。

 全百階層を誇るこの街の本命ダンジョン――『深淵の迷宮』の入り口だ。


 大穴の周囲には、屈強な鎧を纏った戦士や鋭い眼光を放つ魔法使いなど、多くの手練れ冒険者たちが行き交っていた。

 大穴の底から吹き上がってくる風には、初心者の迷宮とは比べものにならないほど濃厚で冷たい魔力の気配が混ざり合っている。


 昨日の夕暮れ、街道からこの場所を見つめながら交わした約束を思い出す。

 もっと強くなって、もっと深い場所へ行こう――そう誓い合った俺たちは、一晩の休息を経て、疲労など微塵もない万全の状態でここへやってきた。


 クラリスが青と白の上質な魔導ローブを整え、先端に風の宝珠を嵌め込んだ細身の魔導杖を構えた。

 澄んだ碧眼をすがめ、大穴の奥へ意識を集中させる。


「ここが『深淵の迷宮』……初心者の迷宮とは空気の重さが違いますわね。【魔力感知】を展開します。通路の先、魔物の反応を捉えましたわ」


「ああ、ここからが本番だな。クラリス、行こう」


「ええ、参りましょう!」


 俺たちは頷き合い、大穴の縁から下へと続く幅広の石造り大階段へと足を踏み入れた。


 階段を降りきった先にある第一階層は、初心者の迷宮のような狭い土石の洞窟とは一目で異なっていた。

 天井は吹き抜けのように遥か高く、黒曜石のように黒く硬質な岩壁がどこまでも続く、広大な立体回廊が広がっている。

 足音を忍ばせながら進む俺の横で、クラリスが【魔力感知】で捉えた通路の構造や魔物の気配を素早く共有してくれた。



 黒光りする岩壁の回廊を進んでいると、前方から慌ただしい足音が聞こえてきた。

 現れたのは、四人組の冒険者パーティだった。

 銀色のカードを首から下げたDランクの冒険者たちだが、全員が革鎧を切り裂かれ、血を滲ませて肩を貸し合いながら地上へ引き返してくるところだった。


「おい、あんたたち……!」


 先頭を歩く手負いの剣士が、俺たちの姿を見て痛そうに顔を歪めながら声をかけてきた。


「奥の甲殻蜥蜴(アーマーリザード)には気をつけろ。皮膚が硬くて並の剣じゃ弾かれるぞ……! 俺たちも挟み撃ちにされて散々な目に遭った」


「忠告ありがとうございます。気をつけて進みます」


 俺が礼を述べて会釈すると、剣士たちは痛みに呻きながら大階段の方へと足早に去っていった。

 俺とクラリスは視線を交わし、さらに警戒を深めて奥へと進んだ。


 第二階層を抜け、第三階層へと足を踏み入れたときだった。

 クラリスがピタリと足を止め、魔導杖の切っ先を前方の闇へと向けた。


「エルンさん、来ますわ! 前方に牙狼が三頭、さらにその奥から大型の魔物です!」


 黒い岩肌の奥から、グルルと唸り声を上げて前座の牙狼が飛び出してきた。

 そしてその背後から、ズシリと重い足音を響かせて巨影が姿を現す。


 体長は二メートルを優に超えていた。

 青黒い鉱石質の頑丈な甲殻に全身を包んだ、巨大な重装魔物――Dランクの「甲殻蜥蜴(アーマーリザード)」だ。

 並の剣なら刃こぼれを起こす分厚い装甲をきしませ、凶悪な牙を剥いて突進してくる。


 一般のDランクパーティなら、前衛が盾で受け止め、複数人で包囲して時間をかけて削らなければならない強敵だ。

 だが、今の俺たちに慌てる様子はなかった。


「風よ、吹き荒れなさい――【風刃】!」


 クラリスが魔導杖を一閃させると、鋭利な風の刃が幾重にも連なって放たれた。

 前座の牙狼たちが悲鳴を上げて吹き飛ばされ、激しい突風の衝撃を受けた甲殻蜥蜴の巨体が横へと大きく体勢を崩す。

 クラリスは【魔力感知】を研ぎ澄まし、体勢を崩した魔物の急所を瞬時に見抜いた。


「エルンさん、首元ですわ! 甲殻の継ぎ目に隙間があります!」


「了解だ!」


 俺は足腰に魔力を巡らせ、【身体強化】と【瞬歩】を同時に発動した。


 ダンッ!


 黒い石畳を爆ぜるように蹴り抜くと、景色が一瞬で後ろへと吹き飛んだ。

 弾丸のような速度で空間を飛び越え、甲殻蜥蜴の懐へと一瞬で肉薄する。


 魔物が体勢を立て直そうと太い尾を薙ぎ払ってくるが、Lv25に達した俺の敏捷101の動きの前には、すべてが止まって見えていた。

 クラリスが指示した首元の継ぎ目――分厚い装甲の切れ目を捉える。

 並の冒険者なら継ぎ目ですら刃を通すのは困難な硬度だが、俺は腕力100の力を腰の鉄の剣へと一気に注ぎ込んだ。


 ズバァッ!!


 鋭い風切り音とともに、鉄の剣の白刃が甲殻蜥蜴の首元を寸分の狂いもなく一刀両断した。

 硬質な皮膚も太い頸椎も、研ぎ澄まされた刃が紙のように滑らかに断ち切っていく。


「ギャ……ッ!?」


 甲殻蜥蜴の断末魔は途中で途切れ、巨大な首が宙を舞い、青黒い巨躯が石畳の上へと激しく崩れ落ちた。

 交戦開始から、わずか数秒足らずの瞬殺だった。


 直後、倒れた甲殻蜥蜴の死骸から、青白い光の粒子が爆発するように噴き上がった。

 天賦スキル【経験値×100】が発動し、百倍に膨れ上がった霊質の激流が、視界を染め上げながら俺の胸元へと吸い込まれていく。


 クラリスは魔導杖を構えた姿勢のまま、固まっていた。

 碧眼を丸く見開き、転がった巨大な首と俺の姿を交互に見つめて、呆気にとられたように息を吐き出す。


「……上層の魔物がまるで相手になりませんわね……エルンさんの踏み込み、初心者の迷宮のときよりもさらに鋭くなっていますわ」


「クラリスが隙間を教えてくれたおかげだよ。よし、次だ」


 俺は鉄の剣の血糊を払い、手早く魔石を回収して立ち上がった。



 俺たちはさらに勢いに乗り、第四階層、そして第五階層へと進んでいった。

 その一帯は、巨大な縦穴の空間にいくつもの頑丈な石橋が立体的に交差する、壮大な大空間だった。


 現れる魔物はどれもDランクの上層魔物ばかりだったが、俺とクラリスの連携の前には赤子の手をひねるようなものだった。

 クラリスが【魔力感知】で位置を捉えて風と雷で体勢を崩し、そこへ俺が【瞬歩】で踏み込んで急所を一撃で両断する。


 サクサクとテンポよく魔物の群れを狩り尽くしていくたびに、天賦スキル【経験値×100】が連続して発動した。

 魔物の亡骸から立ち上る青白い霊質の奔流が、途切れることのない滝のように俺の胸元へと吸い込まれ続ける。


 わずか数時間の探索と乱獲の末、俺の胸の奥がかつてないほど熱く跳ね上がった。

 頭の中に澄んだ鐘の音が激しく鳴り響き、心地よい熱量が全身を駆け巡る。


――――――――――――――――

【レベルアップ】

エルン:Lv25 → Lv26 → Lv27 → Lv28 → Lv29 → Lv30

HP:106 → 126(+20)

MP:104 → 124(+20)

腕力:100 → 120(+20)

体力:100 → 120(+20)

敏捷:101 → 121(+20)

魔力:99 → 119(+20)

――――――――――――――――


(Lv30……! 全ステータスが120前後まで跳ね上がった……!)


 全身の筋肉、骨格、神経のすべてに新たな力がみなぎり、連戦の疲労など完全に消え去っていた。

 腕力120、体力120、敏捷121、魔力119。

 主要な身体能力だけでなく、すべての能力値が百二十近くに達し、俺は完全にCランク上位の領域へと到達していた。


「よし、Lv30に上がった。身体が信じられないくらい軽い……これならもっと深く潜れそうだ」


 俺が自分の掌を握り締めながら確かな手応えを口にすると、隣で素材を回収していたクラリスが、魔導杖を取り落としそうになりながら目を剥いた。


「……もうLv30ですの!? 普通の冒険者が血の滲むような鍛錬を重ねて何ヶ月、下手をすれば年単位かかる領域ですわよ!?」


「あ、ああ……調子よく倒せたからな」


「調子がよければ届くような領域ではありませんわ!」


 クラリスは頭を抱えて声を上ずらせながらも、すぐに呆れたように肩をすくめて微笑んだ。

 大量の上層魔石とドロップ素材を背負い袋へと手際よく収め、昼前の上層狩りとしては十分すぎる収穫だ。

 このままさらに下層へ進むか、一度地上へ戻って換金するかを石橋の上で相談しようとした、まさにそのときだった。


 ゴゴゴゴ……。


 不意に、足元の石橋と周囲の岩壁から、低く鈍い地鳴りが伝わってきた。


「……っ!?」


 ドクン……!


 迷宮の遥か深部から、巨大な心臓の鼓動を思わせる重苦しく冷たい波動が放たれた。

 不気味な魔力の脈動が波となって、迷宮の上層全体を一気に駆け抜けていく。


 迷宮内の空気の密度が一変した。

 肌をチクチクと刺すような冷たい悪寒と、息が詰まるような異様な重圧が空間を満たす。


 ギャァァッ!

 グルルルッ!


 直後、周囲の通路や縦穴の奥に潜んでいた魔物たちが、狂ったような怯え声を上げた。

 普段の縄張り意識など完全に失った様子で、蜘蛛の子を散らすように我先にと逃げ惑い、岩肌の隙間や縦穴の奥へと姿を消していく。


 明らかな異変だった。


 クラリスが青ざめた顔で魔導杖を強く握り締め、胸元を押さえて戦慄した。


「今のは……何ですの!? 迷宮の遥か深部から、異様な魔力の奔流が駆け抜けていきましたわ……!」


「…………」


 俺は即座に腰の鉄の剣の柄に手を添え、低く身構えた。

 上層を吹き抜ける異様な風と、怯えて逃げ去っていく魔物たちの気配を肌で捉える。


「……底の方で、何かが起きてるのか?」


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