第93話『黒い吉報と新たな指名』
屋台の活気が嘘のように引き、夕暮れの本部ギルドの二楼――要人用の応接室。
啓太たち五人を待ち受けていたのは、重厚な革椅子に腰掛けるギルド長その人だった。
「急に呼び出してすまないな、『クローバー』の諸君」
白髪交じりのヒゲを蓄えたギルド長は、机の上に一枚の黒い羊皮紙を滑らせた。
「これは……ギルド本部からの『極秘指名依頼』か?」
啓太が問うと、ギルド長は重々しく頷いた。
「王都の北方に広がる『黒鉄の連峰』。その地下深くに存在する未踏区域で、未知の強力な魔導反応が確認された。すでに派遣されたBランクパーティーが二組、連絡を絶っている」
「Bランクが……二組も!?」
シルフィが息を呑み、ダグラスの手が思わず大盾の柄へと伸びる。
「本来ならAランク以上に回す案件だが……今、王都の最高戦力は南方の魔物暴走の対応で出払っている。そこで、先の『竜の穴』の発生源を少人数で手際よく撃滅したお前たちに白羽の矢が立った」
部屋の中に緊張が走る。
ただのダンジョン攻略ではない。先行部隊が消息を絶った、死線が約束されたレスキュー&討伐任務だ。
「……断ることもできる。どうする、店長?」
ルナがメイスの柄を握り締め、啓太の横顔をじっと見つめた。
リーネも不安そうに啓太の服の裾をキュッと掴んでいる。
「断る理由がないさ」
啓太は一歩前へ出ると、指名依頼書を迷いなく手に取った。
「『看破』の鑑定で敵の正体と弱点を見極め、俺たちの連携で生存者を救出する。全員で無事に帰ってくるぞ」
「ふふ、ケイタがそう言うなら、あたしもどこまでも付き合うよ!」
「はいですぅ! わたしたちの連携があれば、どんな危険な場所でも平気ですぅ!」
「おう! 俺の盾とルナの撃破力、そして後衛の火力を叩き込んでやるぜ!」
仲間たちの目が、力強い闘志で輝きを取り戻す。
「感謝する。『クローバー』の無事を祈る」
ギルド長の激励を受け、五人は決意を新たに、王都最北の極寒と死が蠢く『黒鉄の連峰』へと足を踏み出すのだった――!




