第92話『行列のできる屋台』
「よし、まずはギルド前の広場で試験販売といこう」
啓太の提案に、メンバー全員が即座に賛同した。
『竜の穴』発生源を討伐した名物パーティが屋台を出すとあって、設営の段階から周囲の冒険者や町の人々が興味津々に集まり始めていた。
準備したのは、簡易的な魔導加熱器を組み込んだ特製の透明ケースと大きな蒸籠だ。
ケースの中に並べられた真っ白でふっくらとした『特製肉まん』が、オレンジ色の魔導光に照らされて温かい湯気を上げている。
「へいらっしゃい! 『クローバー』特製のあつあつ肉まん、銀貨1枚だ! 寒さを吹き飛ばす至高の一品だぞ!」
ルナが持ち前の威勢の良さで声を張り上げると、集まっていた冒険者たちがどっと押し寄せた。
「おいおい、あの『クローバー』が食べ物売ってるぞ!」
「見てみろよ、あのホカホカの白いやつ……めちゃくちゃ美味そうな匂いがする!」
「はいですぅ! 順番に並んでくださいですぅ! 焼き立てあつあつですぅ〜!」
リーネが笑顔で列を整理し、ダグラスが持ち前の巨体で安全なオペレーションを確保する。
シルフィと啓太が手際よく竹紙に包んだ肉まんを買い手に手渡していく。
「う、うめぇぇぇっ!? なんだこの肉汁は!?」
「生地がふわっふわだ! 体の芯から温まるぞ!」
「おい、これダンジョンに持っていけるか!? 5個くれ!」
一口食べた冒険者たちの歓声が広場に響き渡り、噂を聞きつけた人々で長蛇の列が一瞬で形成された。
「店長! 配給が追いつかねぇぞ! 飛ぶように売れていく!」
「焦るなルナ。仕込みは十分だ。蒸し上がり時間を調整して、常に出来立てを提供しろ」
元コンビニ店長としての手腕を発揮し、啓太は売り切れを出すことなく完璧な商品管理と回転率で屋台を回していく。
わずか二時間足らずで、用意していた数百個の肉まんは綺麗に完売。
売上金が入った革袋は、ズッシリとした重みを主張していた。
「ふぁぁぁ……! 大大盛況でしたぁ〜〜っ!」
「すごいねケイタ! みんな笑顔で買ってくれたよ!」
疲れも見せず達成感に満ちた表情を浮かべる仲間たちを見渡し、啓太はふっと口元を緩めた。
「手軽で温かくて美味い。やっぱりコンビニ飯の力は異世界でも健在だな」
冒険者としてだけでなく、新たな「食のビジネス」でも王都に旋風を巻き起こした『クローバー』。彼らの賑やかな挑戦は、これからも留まることを知らなかった。




