第89話『発生源の主』
最深部の大空洞に足を踏み入れた瞬間、肌を刺すような重圧が五人を襲った。
洞窟の奥、赤く脈動する巨大な魔導結晶の前にそびえ立っていたのは、全身をマグマのような赤光で包んだ巨獣――『地竜ヴォルガノス』だった。
「ひぇぇぇ……っ! おっきいですぅ……! お山みたいですぅ……!」
リーネが思わず後退りするが、すかさず啓太が前に躍り出た。
「怯むな! 俺が弱点を割り出す! 『鑑定』!」
啓太の眼光が光り、青いステータス情報が一瞬で頭の中に展開される。
「分かった! 胸中央の核は頑丈な外殻で守られてるが、右脚の関節部分の鱗に古い亀裂が入ってる! まずはあそこの脚を崩して体勢を崩すぞ!」
「よしきた! 俺が奴の意識を引きつける!」
ダグラスが前線へ飛び出し、大盾を激しく打ち鳴らした。
『オオオオオオオオッ!!』
地鳴りのような咆哮とともに、地竜の太い尾が薙ぎ払われる。
ダグラスはその絶大な衝撃を盾で正面から受け止め、ガチリと足場を固定した。
「ぐっ……耐え切ってみせるぜ! ルナ、今だッ!」
「任せな! あたいの『豪腕』、叩き込んでやるッ!」
ダグラスの背を蹴って跳躍したルナが、啓太の【強運】を宿した必殺の一撃を、指摘された右脚の亀裂へと全開で叩きつけた。
ズドォォォォンッ!!
確定クリティカルの衝撃が亀裂を粉砕し、地竜が悲鳴を上げて大きく体勢を崩す。
「右脚が砕けた! 胸の核が剥き出しだ! 後衛、畳み込めッ!」
「任せて! 精霊の風よ、炎を巻き上げろ――!」
「いきますぅぅぅ! わたしちの合体技ですぅ!!」
シルフィの放った幾重もの風の矢に、リーネの威力を限界まで高めた超高熱の炎が絡み合う。
「『疾風炎撃』ッ!!!」
ドカアァァァァァンッッ!!!!
荒れ狂う炎と風の濁流が、露出した地竜の核を正面から飲み込んだ。
魔導結晶を巻き込んで巨大な爆炎が巻き起こり、やがて地竜の巨躯が音を立てて崩れ落ちていく。
「や、やった……!? 倒したのか!?」
「ああ、魔導結晶の脈動も止まった……! 発生源の討伐、成功だ!」
啓太の宣言に、その場に静破が訪れた後、一気に歓声が弾けた。
「やったぁぁぁ! 勝ったぞーッ!」
「ふぁぁぁ〜〜っ! 勝ちましたぁぁ〜〜っ!」
「ハハッ! あたいらの連携、マジで最強だったじゃねぇか!」
ダグラスとルナがハイタッチを交わし、シルフィとリーネが抱き合って大喜びしている。
「みんな、本当によくやってくれた。最高の作戦だったよ」
ほっと胸を撫でおろす啓太に、仲間たちが笑顔で駆け寄ってくる。
脱線しまくりの作戦会議から始まったこの攻略は、『クローバー』の絆を揺るぎないものへと変えていたのだった。




