第57話『屋台開店準備』
『竜の穴』から地上へ戻った一行は、まずギルドの買取窓口へと向かった。
「おおっ、これは……! 『魔導核晶』とは、なかなかお目にかかれない代物ですよ!」
鑑定士が目を輝かせながら結晶を掲げる。査定額を聞いたシルフィが目を丸くした。
「金貨40枚……!? こんな綺麗な石一つで!?」
「ドラゴンの巣の周辺でしか採れない稀少品ですからね」
思わぬ臨時収入に浮かれる一行を横目に、ルナがニヤリと笑って啓太の袖を引っ張った。
「なあ店長。金も入ったことだし、そろそろ、あれ、やろうぜ。『異世界からあげ』の屋台だよ! 忘れたとは言わせねぇぞ!」
「ああ、確かに約束したな。ドラゴンにビビって忘れかけてたよ」
「屋台、本当にやるの?」
「装備を整えるにも、あの結晶みたいな幸運頼みだけじゃ心もとない。安定した資金源はあった方がいい。それに――元コンビニ店長として、久しぶりに『店』をやってみたい気持ちもある」
その言葉に、三人は顔を見合わせて笑った。
「よぉし決まりだ! さっそく場所探すぞ!」
翌日、四人はギルド指定の屋台エリアで、小さな空き区画を借りることにした。
「ここなら人通りも多いし、匂いも遠くまで届くね!」
「ふふふ……油の匂いを想像しただけで、お腹が鳴りそうですぅ」
「材料の仕入れは俺がやる。バードタケは深層でしか採れないから、当面は代用食材で試作しよう」
啓太は露店の食材屋を回り、鶏肉に似た味の魔獣肉と香辛料を買い集めた。屋台の簡易竈で油を熱し、下味をつけた肉を衣にくぐらせて揚げていく。
ジュワァァァッという音とともに、香ばしい匂いが辺りに広がった。
「うわ、なにこの匂い……お腹すいてきた」
通りがかった冒険者たちが、次々と足を止めて振り返る。
「試食、どうぞ」
啓太が差し出した唐揚げを一口食べた冒険者が、目を見開いた。
「う、うまっ……!? なんだこれ、酒場のどの店より美味いぞ!」
「本当か!? じゃあ俺にも一つ!」
あっという間に人だかりができ、ルナが慌てて木札を取り出した。
「よ、よし! これは大チャンスだ! 店長、明日から本格的に開店しようぜ!」
「わたしも味見係として全力サポートしますぅ!」
「あたしはお客さんの呼び込み担当かな!」
思いがけず盛り上がる仲間たちを見て、啓太は満足げに頷いた。
「よし、『クローバー』はダンジョン攻略パーティ兼、屋台経営――なんてのも悪くないな」
ドラゴンへのリベンジという大きな目標を胸に、四人の新しい挑戦が静かに幕を開けようとしていた。




