第55話『深層の罠』
唐揚げで満腹になった一行は、軽い足取りで『竜の穴』の深層へ足を踏み入れた。
第十五層。空気が重くなり、洞窟の壁が青白く発光する魔導鉱石で覆われている。
「なんか綺麗だけど……空気が薄い気がする」
「深層特有の魔素濃度の影響だな。魔力酔いを防ぐために休憩を挟もう」
啓太が新色の飴を取り出した。
「ミント風味の魔力浄化キャンディだ。昨夜のうちに仕込んでおいた」
「準備良すぎだろ、店長……」
ルナが呆れ笑いで口に放り込んだ、その時。通路の奥から金属が擦れる音が響いた。
「――来るぞ」
暗闇から巨大な人型の影が現れる。全身を鉄の装甲で覆われた『ガーディアンナイト』。この階層を守る中ボス級の魔物だ。
「動きは鈍重だが、防御力は桁違いのはずだ」
「リーネは牽制、ルナはいつでも回復を。シルフィは側面から隙を作ってくれ」
「『フレイムランス』!」
炎の槍が装甲に直撃するが、表面を焦がすだけだ。
「くっ、硬いですぅ……!」
「狙うのは関節部だ」
啓太は懐に飛び込み、膝の継ぎ目に短剣を突き立てた。
「グオオオオオッ!」
巨体がぐらりと傾く。
「今だ、シルフィ!」
「『精霊乱れ矢』!」
矢が煌めきながら関節部を射抜く。膝が崩れ、片膝をついた。
「ルナ、力を!」
ダイスが宙を舞い、出目は5。
「十分だ! 『バトルヒール』!」
光が啓太を包み、身体能力が引き上げられる。
啓太は跳躍し、崩れた装甲の隙間へ短剣を深く突き刺した。
鈍い金属音とともに、巨体がゆっくり崩れ落ちていく。
「や、やった……!」
「にしても、店長の判断力半端ねぇな。関節狙いなんて、よく咄嗟に分かったな」
「昔読んだ攻略本の受け売りだよ。……お、これは」
装甲の内側から、淡く光る紫水晶のような結晶が転がり出てきた。
「『魔導核晶』ってやつだな! かなりの高値で売れるぜ!」
「これでポーションの材料も、当分は困らなそうだな」
啓太は結晶を拾い上げ、満足げに頷いた。
「休憩したら次の層へ向かおう。今日中に第二十層まで行けたら上出来だ」
「「「おーっ!」」」
深層の重い空気の中でも、四人の士気は少しも衰えていなかった。




