第51話『初陣、四人で』
装備を新調した翌日。
啓太たちはグランドールの冒険者ギルドで、依頼掲示板とにらめっこしていた。
「これなんかどうだ? 『北の森、暴走したフォレストウルフの群れ討伐』。報酬は銀貨15枚、Cランク相当」
「群れ、かぁ……数が多いと、あたしの矢だけじゃ追いつかないかも」
シルフィが少し不安げに眉を寄せる。
「大丈夫ですぅ。数が多いなら、わたしの出番ですから!」
リーネが自信満々に胸を叩いた。
「それに今回は、あたいもいるからな! 誰か傷ついても、すぐ治してやるぜ!」
啓太はメンバーの顔を順番に見て、頷いた。
「よし、これにしよう。四人での本格的な連携は、これが初陣だな」
受付でルナが討伐依頼書にサインすると、職員が興味深そうに啓太たちを見た。
「『クローバー』さん、四人パーティになったんですね。頑張ってください」
午後、四人は北の森へと足を踏み入れた。
木々の隙間から差し込む光が、湿った土の匂いと混ざり合う。しばらく進むと、遠くから複数の唸り声が響いてきた。
「来たな……数、5、いや6匹か」
啓太が短剣を構える。灰色の毛並みをしたフォレストウルフの群れが、木々の間から次々と姿を現した。
「シルフィ、まず先制の矢を。リーネは一番後ろの個体を狙って足止めしてくれ。ルナは俺とシルフィの後方支援を」
「了解!」「はいですぅ!」「任せろ!」
三人が短く返事をすると同時に、シルフィの矢が唸りを上げて放たれた。
「――ヒュンッ!」
先頭のウルフの喉元を正確に射抜き、一匹が地に倒れる。
「よし! 続けて――」
残る五匹が一斉に牙を剥き、啓太たちへと殺到した。
「リーネ、頼む!」
「はいですぅ! 『フレイムサークル』!」
リーネの杖から放たれた炎が地面を這い、後方の二匹の足を焼いて動きを封じる。
啓太は前に出て、突進してきた一匹の攻撃を紙一重で躱すと、短剣を一閃させた。
「ぐるあっ!」
悲鳴を上げてウルフが怯む隙に、二撃目で仕留める。
「くっ……一匹、こっちに――!」
シルフィの脇をすり抜けた一匹が、ルナへと牙を剥いて跳びかかった。
「な――!?」
「ルナ!」
啓太が叫ぶと同時に、ルナは慌てて回復魔法用のダイスを取り出し、咄嗟に振った。
「くそ、こんな時に――!?」
サイコロがルナの手のひらの上で二回転し、ピタリと止まる。
――出目、6。
「な、なんだこの威力……!?」
防御的に唱えたはずの回復魔法が、予想外の光の奔流となってルナ自身を包み込んだ。眩い光に触れたウルフが怯んで飛びのく。
その隙に、啓太が横から飛び込んで止めを刺した。
「ふぅ……危なかったな、ルナ、大丈夫か?」
「あ、ああ……何とかな。……にしても、まさかこの土壇場でゾロ目が出るとはよ」
ルナが呆然と自分の掌のダイスを見つめる。啓太は苦笑いを浮かべた。
(俺の【強運】、味方のピンチにまで発動するのか……。まあ、助かったから良しとするか)
残る二匹は、リーネの追撃魔法とシルフィの矢によって、あっという間に片付けられた。
「ふぅー……終わったぁ……」
シルフィが弓を下ろし、大きく息を吐く。
「初陣、無事終了だな。みんな、お疲れ様」
啓太の言葉に、四人は互いの顔を見合わせて笑った。
「にしても、あたいの回復魔法、まさかあんな場面で炸裂するとはな。前のパーティじゃ、こんな綺麗に噛み合ったことなかったぜ」
「それがルナの強みだよ。ここぞって時に運を引き寄せる」
「ケイタさんの【強運】のおかげでもありますけどねぇ」
リーネがニヤリと笑う。啓太は肩をすくめた。
「まあ、理由はどうあれ、全員無事が一番だ。討伐部位を回収したら、街に戻ろう」
夕暮れ迫る森の中、四人はウルフの魔石を手早く回収すると、来た道を引き返していった。
初めての四人連携での討伐は、上々の結果で幕を閉じた。
『クローバー』はまた一歩、確かな絆を積み重ねていく。




