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第46話『【強運】でイカサマ返り討ち』


「……は? イカサマ……!?」

 ルナは目を丸くし、自分の前髪をガシガシと掻きむしった。

「嘘だろ!? あたいのこの『勝負師の勘』がイカサマを見抜けなかったってのかよ!?」

「勘に頼りすぎて相手の手元を見てないからだろ。カードを配る時、ディーラーの親指が二枚目のカードを滑らせてる。典型的なすり替え(セカンドディール)だ」

 啓太が冷ややかに指摘すると、ルナは「くっそ~……ッ!」と悔しそうに歯噛みした。

「あたいのけつの毛まで毟り取っておいて、イカサマでハメてただと……!? 許さねぇ、あの悪徳ディーラーどもめ……ッ!」

「おいおい、騒ぐなよルナ。証拠もなく突っ込んでも『負け犬の言い分』で処理されて追い出されるだけだ」

 啓太は肩をすくめると、ポケットから銀貨三枚を取り出し、手のひらでチャリンと鳴らした。

「さっきも言ったろ。金は貸さないが――お前の負け分、俺が代わりに引っくり返してやるって」

「なっ……! たった銀貨三枚で、あたいの負けた金貨二枚分を取り戻すってのか!? 無理に決まってんだろ!?」

「元店長を舐めるなよ。……シルフィ、リーネ、ちょっと見ててくれ」

「うん! ケイタ、ギャフンと言わせてやって!」

「ケイタさんカッコいいですぅ〜! 応援してますぅ!」

 啓太はすれ違いざまにルナの肩をポントンと叩き、イカサマが横行するカードテーブルへと着席した。

「おいおい、にいちゃん。その薄い財布でこのテーブルに入ろうってのか?」

 ニヤニヤと下品な笑みを浮かべるディーラーの男。周りの大柄な冒険者たちも「カモが来たぜ」と言わんばかりにニヤついている。

「ああ、手持ちは銀貨三枚だ。……『全部賭け(オールイン)』で頼む」

「ハッ! 景気がいいねぇ! じゃあ配るぜ!」

 ディーラーの手が動き、手札が配られる。

当然、ディーラーは手元でカードをすり替え、啓太に最悪のカードを、自分に最強のカードを配ろうとした――その瞬間だった。

(発動しろよ……俺の『強運』)

 啓太が心の中で念じた瞬間、酒場の天井から小さな木くずがパラッと落ち、ディーラーの目に入った。

「うおっ! 光が……手元が……ッ!?」

 ディーラーが思わず手元を狂わせ、すり替え損ねたカードがテーブルの上に滑り出す。

「さあ、勝負だ」

 啓太が開いた手札は――テーブルで滅多に出ない超大役、『黄金の七(ゴールド・セブン)』。

『『『な、なんだとぉぉぉぉっ!?!?』』』

 酒場全体が揺れるほどのどよめきが巻き起こった。

「ば、バカな……ッ! 一発で最高役だと……!?」

「手元が狂って本物のカードを配っちゃったみたいだな。はい、配当の銀貨三十枚」

「くっ……! もう一回だ! もう一回勝負しろ!!」

 そこからは、まさに啓太の独壇場だった。

二開帳目――ディーラーが山札を混ぜようとした瞬間、客が肘をぶつけて山札が崩れ、啓太に最高のカードが流れる。

三開帳目――ディーラーのイカサマの仕掛け(隠しカード)がポロリとテーブルの上に落ち、イカサマが暴露されてディーラーが青ざめる。

「ひ、ひぇぇぇ……っ! 降参だ! 降参!!」

 わずか十分後。

啓太の前には、山のように積み上がった金貨と銀貨の束が輝いていた。

ルナが負けた金貨二枚どころか、その三倍以上の金貨八枚という大金だった。

「……う、嘘だろ……?」

 後ろで見守っていたルナは、開いた口が塞がらない様子で固まっていた。

自分の「あたいの勘」を遥かに超越した、理不尽なまでの【強運】と冷徹な観察眼。

「ほら、ルナ。お前の負け分の金貨二枚だ。持って行きな」

 啓太が金貨を放り投げると、ルナは慌ててそれを受け取り、プルプルと身体を震わせた。

「あ……あたいの負け分を取り戻しただけじゃなく、あのイカサマ野郎どもを完膚なきまでに叩きのめしちまった……! なんだよアンタ……神様か!? 幸運の神の生まれ変わりなのか!?」

「ただの元店長だよ」

 啓太がフッと苦笑いすると、ルナはすさまじい勢いで啓太の前にひざまずき、その手を両手でガシッと握りしめてきた!

「決めたよッ!! あたい、アンタに一生ついて行く!!」

「はい!?」

「あたいはヒーラーのルナ! 腕は王都一だって自負してんのに、ツキがなさすぎてどのパーティーからも追い出されてたんだ! でもアンタのその『異常なツキ』があれば、あたいの治癒魔法は百発百中、無敵になるッ! お願いだ、あたいをパーティーに入れてくれぇぇッ!」

「あたいあたいってうるさいよ! 急に押しかけないでよ!」

 シルフィが間に入って抗議するが、ルナの必死な目は本物だった。

(ギャンブル狂いではあるが……ヒーラーとしての腕が本物なら、明日の『D〜Cランク昇格試験』でこれ以上ない戦力になる)

「よし、分かった。明日からの『D〜Cランク昇格試験』、お試しで一緒に来るか?」

「本当かッ!? やったぁぁぁッ! あたいの幸運の女神……いや、幸運の男神様だぁぁッ!」

 こうして、ギャンブラーヒーラー・ルナを仮メンバーに迎えた『クローバー』。

破天荒な4人組となった彼らの、運命の大昇格試験が明日、幕を開ける――!

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