↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/115

第45話『酒場のイカサマとすっからかんのヒーラー』


 本部ギルドで『D〜Cランク合同大昇格試験』のエントリーを済ませた啓太たちは、翌日に控えた試験の準備と情報収集を兼ねて、グランドールで最も活気のある酒場『金貨とダイス亭』を訪れていた。

「へぇ〜! すごい活気だね、ケイタ! フォレストピアの酒場より三倍くらい広いや!」

「ふぁぁぁ……! お肉と香草の香ばしい匂いが充満してますぅ〜〜っ!」

 シルフィとリーネが目を輝かせる。

店内は明日からの大昇格試験に挑む冒険者や、ダンジョン攻略を終えた猛者たちでごった返しており、酒杯を交わす音と歓声が響き渡っていた。

「よし、まずは腹ごしらえと……明日の試験の噂話でも集めるか」

 啓太が奥のテーブル席を確保しようとした――その時だった。

『――ちっくしょう! なんでまた『豚の目(最悪の出目)』なんだよッ!? このカード、絶対イカサマだろ!!』

 酒場の一角、カードギャンブルのテーブルから威勢のいい女性の叫び声が上がった。

 ドカンとテーブルが揺れる音とともに、周りのゴツい冒険者たちがゲラゲラと下品に笑い転げる。

「ハハハ! 言いがかりはやめてもらおうか、お嬢ちゃん! 負けたのはお前の『運』がねぇからだろ!」

「くっそ~……ッ! あと一回! あと一回やれば絶対ひっくり返せるのに……ッ!」

 悔しそうに地髪を掻きむしっているのは、動きやすそうな軽装の上に、薄汚れた治癒術士(ヒーラー)のローブを羽織った一人の若い女性だった。

勝負師らしい鋭い目つきと、どこかサバサバとした男勝りな雰囲気を纏っているが……その足元には、すっからかんになったコイン袋が転がっている。

「おいおい、あのヒーラー、また負けて一文無しになったのか?」

「腕は確かだって噂だが、重度のギャンブル狂いだからな……。どこもパーティーに入れてくれねぇんだよ」

 周りの客たちが呆れ顔でヒソヒソと囁き合っている。

「うぅ……ッ! あたいの『一発逆転の直感』が『次は勝てる』って囁いてるのに……! 種銭(タネせん)がねぇなんてあり得ないだろ……ッ!」

 額に青筋を立てて頭を抱えていた彼女は、ハッと顔を上げ、店内を血眼で見回した。

そして――テーブルを探して歩いていた啓太と、バッチリ目が合ってしまったのだ。

「……え?」

 啓太がデジャブのような嫌な予感を覚えた瞬間。

彼女はすさまじい素早さで距離を詰め、啓太の胸ぐら……ではなく、両手をガシッと力強く握りしめてきた!

「なぁアンタ! 見ない顔だな! 一生のお願いだ、大銀貨……いや、銀貨五枚でいい! あたいに貸してくれないか!?」

「……は?」

「図々しいよ急に!? なんなのアンタは!?」

 突然のことにシルフィがキーッと声を張り上げ、リーネも「ふぇぇぇ! カツアゲですかぁ!?」と驚いて耳をピーンと逆立てた。

「カツアゲじゃねぇよ! 借金……いや、投資だ! あたいはヒーラーの『ルナ』! 今ここで私に投資すれば、倍……いや、三倍にして返してやる! 頼む、私の勝負師としての魂が今、燃え上がってんだよッ!」

 ルナと名乗ったギャンブラーヒーラーは、ギラギラとした必死な目で啓太を見つめてくる。

(初対面でギャンブルの種銭を借りようとしてくるヒーラー……どこから突っ込めばいいんだ)

 元店長としての苦労人魂が痛むのを感じつつ、啓太はルナの手をすっと冷ややかに外した。

「断る。ギャンブルの負け分を初対面の奴に集かるやつに貸せる金はない」

「そこをなんとか! 私の直感は絶対なんだって! 次は絶対『大勝利』のカードが出るんだよ!」

「……ふーん。『大勝利』ねぇ」

 啓太はチラリと、ルナが負け越していたカードテーブルに目を向けた。

元店長としての鋭い観察眼と、生まれ持った【強運】が、そのテーブルの怪しい「仕掛け」を一瞬で見抜いていた。

「ルナと言ったな。……あのテーブル、ディーラーがカードを配る時に袖口で手札をすり替えてるぞ。イカサマだ」

「……は? イカサマ……!?」

 ルナが目を丸くしたその時、啓太はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「金は貸さないが――お前のその負け分、俺が代わりに引っくり返してやろうか?」

【強運】を持つ元店長と、運に見放されたギャンブラーヒーラー。

二人の破天荒な出会いが、大都市グランドールの夜を熱く滾らせようとしていた――!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。