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第43話『火を使わない絶品時雨煮おにぎり!旅の合間の野営飯テロ』


 お世話になったフォレストピアの街に別れを告げ、啓太たちは王立都市グランドールを目指して平原を北上していた。

 見渡す限りの見渡す限りの青空と、どこまでも続く緑の街道。

 先日の『ドワーフの鎚亭』で新調した防具と武器が、朝日に映えて眩しく輝いている。

「ふぁぁ……いいお天気ですねぇ〜。ピクニックみたいで気持ちいいですぅ〜」

 リーネは背中の大きなリュックを揺らしながら、長くて綺麗な耳を満足そうにパタパタとさせていた。借金もなくなり、お腹もいっぱいの今の彼女からは、ギルドの床に突っ伏していた惨めな影など微塵も感じられない。

「油断しちゃダメだよ、リーネちゃん。この街道の先は魔物の生息域だし、王都へ近づくほど強い魔物が出るんだから」

「はいっ、シルフィさん! 敵が出てきたら、わたしの風魔法でドカンとお空の星にしてあげますぅ!」

「はは、心強いな。でも頼むから街道ごと吹き飛ばさないでくれよ?」

 啓太が苦笑いしながら釘を刺すと、リーネは「あはは……気をつけますぅ」と照れくさそうに頭をかいた。

 昼過ぎ。太陽が一番高く昇った頃、三人は街道沿いの小さな木立の陰で休憩をとることにした。

「よし、ここらで昼飯にしよう」

「「わーーーいっ!!」」

 ふたりの声が綺麗に重なる。

 旅の最大の楽しみ、それは間違いなく啓太の作る「ご飯」だった。

「ケイタ、今日は何を作ってくれるの? 旅の途中で火を起こして本格的な調理は難しいよね……?」

 シルフィが首を傾げると、啓太はニヤリと笑い、肩掛けバッグからいくつかの木箱と竹の葉に包まれた「何か」を取り出した。

「ふふん、甘いなシルフィ。元店長の俺が、旅の途中の『移動食』に手を抜くわけがないだろ」

「ふぇぁぁ!? 何ですかその魅力的な包みはぁ〜〜っ!?」

 目ざとく匂いを察知したリーネが、すでに涎を垂らしそうな顔で身を乗り出してきた。

「今回の特製野営飯、一品目は――『牛肉と香草の特製時雨煮おにぎり』だ!」

 竹の葉の包みを開けると、ツヤツヤと輝く白米の中に、甘辛く煮詰められた旨味たっぷりの肉がぎっしりと詰まった巨大なおにぎりが現れた。

「お、おにぎり……!? 東方の国で食べられているっていう、あの貴重なご飯ですかぁ!?」

「ああ。これなら火を使わずに手軽に食べられるし、腹持ちも抜群だ。しかも、隠し味に魔力を活性化させる香草を入れてある」

 啓太が手渡すと、二人は待ちきれない様子でガブリとかぶりついた。

「むぐっ……! んん〜〜〜〜〜っっっ!?」

 一口食べた瞬間、シルフィの目が見開かれた。

「おいしい……! 甘辛い肉の旨味がご飯全体にしみ込んでて、甘じょっぱいタレとご飯の相性がバツグンだよ……!」

「ふぁぁぁぁっ! ご飯の中からお肉が溢れ出てきますぅぅぅ! 噛めば噛むほどジュワッと旨味が広がって……手が止まりませんぅ〜〜っ!」

 モグモグと勢いよくおにぎりを平らげていくふたり。

 大人三人分はありそうな特大おにぎり3個が、あっという間にリーネの胃袋へと吸い込まれていった。

「そして、食後のデザート兼、持ち運び用の『魔力急速補給スティック』がこれだ」

 啓太が取り出したのは、薄い銀紙で密封された棒状の食べ物だった。

 ドライフルーツとナッツ、そして蜂蜜と高濃度の魔導ポーションの成分をギュッと凝縮して焼き固めた、前世の「カロリーメイト」や「プロテインバー」を模した特製行動食だ。

「サクッとしてて、果実の甘みとナッツの香ばしさが最高……! これ、すっごく軽いのに食べるとお腹の底からパワーが湧いてくるよ!」

「ほんとですぅ……! これ一本で、魔法一発分くらいの魔力がジワジワ戻ってきますぅ……! ケイタさん、これ凄すぎますぅ!」

「これなら戦闘中や移動中でも、一瞬で魔力とエネルギーを補給できるからな」

 満足そうにスティックを頬張る二人を見ながら、啓太は手応えを感じていた。

 リーネの最大の問題点だった「燃費の悪さ(戦闘中の魔力切れ)」は、この特製行動食によって完全に解決できる。

「ごちそうさでしたぁ〜〜っ! ふぅ、お腹いっぱいで幸せですぅ……」

 お腹をさすりながら草の上に寝転がるリーネ。

 シルフィも木の幹にもたれかかり、心地よさそうに風を感じている。

「よし、しっかり休憩も取れたし、出発しよう。このペースなら、明日の夕方には王立都市グランドールに着くはずだ」

「「はーい!」」

 元気いっぱいに立ち上がるふたり。

王立都市グランドール――王国で最も栄え、数多の強者や訳ありの冒険者たちが集う巨大都市。

そこには、まだ見ぬ強力なダンジョン、新たな出会い、そして『クローバー』を待ち受けるさらなる高み(D〜Cランク昇格試験)が待っている。

「行くぞ、二人とも!」

「「おうっ! / はいっ!」」

 絆を深めた『クローバー』の三人は、希望と高揚感を胸に、王都へと続く街道を力強く歩み出したのだった。

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